企業分析を繰り返して見えてきた、「強みが成長を止める」という逆説

勝手に企業診断

企業分析を続けていると、少しずつ企業を見る目が変わってくる。

以前の私は、

「この会社の強みは何だろう?」

という視点で企業を見ていた。

技術力が高い。
顧客対応力がある。
職人技がある。
個別の要望に応えられる。

こうしたものを見つければ、「なるほど、これが強みか」と考えていた。

しかし最近は、その先を見るようになってきた。

その強みは、会社が成長したときにも強みであり続けるのだろうか。

ここが結構重要なのではないかと思っている。


「何でもできます」は、本当に強みなのか

例えば、顧客の細かな要望に応えられる製造会社があったとする。

「こんな仕様にできますか?」

「できます」

「ここを変更できますか?」

「対応します」

「もう少し特殊な形にできませんか?」

「やってみましょう」

顧客からすれば、とてもありがたい会社である。

当然、評判も良くなる。

注文も増える。

ところが、ここから問題が始まる。

注文が増えるほど個別設計が増える。

見積もりも増える。

仕様確認も増える。

設計変更も増える。

手戻りも増える。

やがて優秀な設計者の仕事が山積みになる。

つまり、

「個別対応できる」という強みが、受注増によって「成長できない原因」に変わる。

これは面白い構造だと思う。

強みを伸ばせば会社が成長するとは限らない。

むしろ、強みがボトルネックへ変わる瞬間がある。

最近の企業分析では、この視点をかなり意識するようになった。


高単価なら儲かる、でもなかった

もう一つ、自分の分析で修正したいと思っているのが「高単価」という言葉である。

以前は、

「高単価商品を増やす」

「高単価用途へシフトする」

といった戦略をよく考えていた。

しかし、これも危ない。

例えば100万円で受注できる仕事があったとする。

一見すると魅力的である。

しかし、その裏側で、

個別設計に大量の時間がかかる。
何度も仕様変更が発生する。
試作を繰り返す。
ベテランが長時間拘束される。

となれば、100万円でも実は大して儲かっていないかもしれない。

逆に50万円でも、過去の設計を再利用でき、ほとんど手戻りなく作れるのであれば、こちらのほうが利益を残せる可能性がある。

見るべきなのは単価ではない。

「いくらで売れたか」ではなく、「最終的にいくら残ったか」。

だから今後は、

高単価領域 → 高粗利・高収益領域

へ、自分の思考を変えていきたい。

当たり前のようだが、個別受注型企業を考えるほど、この違いは大きい。


個別対応を捨てるのではなく、「型」にする

では、個別対応がボトルネックになるなら、標準品だけ売ればよいのか。

おそらく、そうではない。

細かな要望に対応できるから選ばれている会社が、完全標準化してしまえば、自ら強みを捨てることになる。

そこで重要になるのが、最近かなり興味を持っている**「セミオーダー化」**である。

全部をゼロから設計するのでもない。

全部を標準化するのでもない。

共通部分は標準化し、顧客ごとに価値が出る部分だけを個別対応する。

例えば、私は次の4つに分けて考えると分かりやすいと思っている。

仕組み何をするか
施工・案件事例DB顧客の悩み、提案内容、設計、工数、採算、結果を蓄積
提案テンプレート悩みごとの過去の成功パターンを再利用
設計テンプレート共通設計を再利用し、顧客固有部分だけ変更
見積テンプレート基本価格+オプションで積算

例えば設計なら、

「基本設計80%+個別設計20%」

というイメージである。

毎回100%を考え直さない。

過去にうまくいったものは、会社の資産として再利用する。

これなら個別対応力を残しながら、生産性を高められる可能性がある。

そして重要なのは、単なる「標準化」ではない。

顧客対応で得た経験を、次の案件でも使える会社の知識へ変えること。

これこそ個別受注企業におけるDXの一つの形なのかもしれない。


LTVも「また買ってもらう」だけではない

もう一つ、自分の中で考え方が変わってきたのがLTV(顧客生涯価値)である。

以前は、

会員化する。
定期サービスを提供する。
イベントを開催する。

といった発想に寄りがちだった。

しかし、そもそも住宅や大型設備は毎月買うものではない。

だったら、その商品の購入サイクルに合わせてLTVを考えなければならない。

例えば設備メーカーなら、

納入 → 保守 → 部品交換 → 能力増強 → ライン増設 → 新工場 → 設備更新

という流れが考えられる。

住宅リノベーションなら、

リノベーション → 家具 → 部分改修 → 家族構成の変化 → 再設計 → 住み替え

という接点があるかもしれない。

つまり、

「もう一度買ってください」ではなく、顧客の次の変化を先回りする。

このほうがLTVの考え方として自然である。

業種によって、LTVの形は違う。

ここを無理に同じ型へ押し込まないことも重要だと感じている。


長期戦略は、遠くへ飛べばよいわけではない

企業分析をしていると、長期戦略を考えるのが一番難しい。

海外へ進出する。

プラットフォームになる。

新規事業へ参入する。

壮大な話を書けば、それらしく見える。

私も、この罠に何度もハマった。

しかし最近は、長期戦略ほど、

「今持っている強みを、どこまで地続きで伸ばせるか」

を考えたほうがよいと思っている。

例えば、

「女性社長向けに展開する」

といきなりターゲットを決めるのではなく、

「女性顧客から支持されてきた空間づくりの知見を、法人空間へ応用できないか」

と考える。

「海外の学校給食市場へ進出する」

ではなく、

「大量調理×省人化という現在の強みが、どの市場なら評価されるのか」

から考える。

そして、海外へ行くなら、既存顧客の海外拠点など、すでに信頼関係のあるところから入れないかを検討する。

未来を大きく描くことと、話を飛躍させることは違う。

これは最近、かなり意識しているポイントである。


企業分析で見る場所が少し変わってきた

毎日のように企業分析を続けている。

まだまだ分からないことは多い。

それでも、以前とは少し見る場所が変わってきた気がする。

「この会社の強みは何か」

だけではなく、

その強みは、受注が2倍になっても機能するのか。

高単価ではなく、本当に利益が残っているのか。

個別対応で得た経験は、会社の資産として再利用されているのか。

顧客との関係は、販売後のライフサイクルまで設計されているのか。

将来戦略は、現在の強みから地続きになっているのか。

そんな問いを加えるようになった。


強みを見つけるだけでは、企業診断は終わらない

優れた企業には、必ずと言っていいほど強みがある。

しかし、会社が成長すれば、強みの使われ方も変わる。

5人だからできた個別対応が、50人では回らないかもしれない。

社長だからできた営業を、100人の会社で社長一人が続けることはできない。

熟練者一人の技術で品質を守れても、注文が10倍になれば供給できない。

だから企業の成長を考えるなら、

「強みは何か」だけでは足りない。

その強みを、

「どうすれば、会社が大きくなっても再現できる仕組みに変えられるか」

まで考える必要がある。

最近の企業分析を通じて、私はここに面白さを感じ始めている。

強みを見つける。

強みの裏側にあるボトルネックを見つける。

そして、強みを壊さず仕組みに変える。

企業分析とは、もしかするとこの繰り返しなのかもしれない。

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