企業分析を続けていると、少しずつ自分なりの「型」ができてくる。
企業がどう変わってきたのか。
何が強みなのか。
どこに成長制約があるのか。
今後、何を伸ばし、それをどんなKPIで管理するのか。
以前より、かなり早く考えられるようになった。
最近分析したカホク運送とリブランでも、それなりに筋の通った成長ストーリーを描けたと思う。
ただ、振り返ると一段足りなかった。
それが、
「で、具体的にどうやって儲けるの?」
という問いだった。
「上流から参画する」は、売上ではない
リブランの長期戦略として、
「遮音技術を生かし、設計事務所やリフォーム会社と組んで住宅づくりの上流から参画する」
と考えた。
一見、それらしい。
でも、
「上流から参画する」はビジネスモデルではない。
何を提供するのか。
誰がお金を払うのか。
何に対して対価をもらうのか。
例えば、
企画支援なら「企画料」。
設計ノウハウなら「設計支援料」。
技術提供なら「ライセンス料」。
ここまで考えて初めて、
強み→提供価値→顧客→対価
がつながる。
これまで私は「こんな事業に展開できそうだ」までは考えていた。
しかし、
「どこでお金が発生するのか」
の解像度が甘かった。
KPIは「数字」より「→」を疑う
もう一つ弱かったのが、KPIの因果関係だ。
例えば、
設計パターン活用率 → 一人当たり付加価値向上
一見つながっているように見える。
でも、本当は、
設計パターン活用率 → 設計工数削減 → 同じ人数で対応できる案件数増加 → 一人当たり付加価値向上
という変化がある。
途中を飛ばしてしまうと、数字が悪化したときに何を改善すればいいのか分からない。
最近は、KPIそのものより、
「→」を見ることが重要なのではないか
と思っている。
「本当にこの数字が動けば、次の数字も動くのか?」
ここを疑う。
KPIツリーの精度は、指標の数ではなく、この因果の精度で決まるのかもしれない。
LTVも「長く住んでもらう」だけではなかった
リブランの分析では、LTVについても気づきがあった。
賃貸住宅なら「契約期間を長くする」と考えたくなる。
でも顧客にはライフステージがある。
進学、就職、結婚、家族の増加。
必要な住宅は変わっていく。
だから見るべきなのは、一つの部屋に何年住んだかだけではない。
別の自社物件へ住み替える。
住宅購入でも相談してくれる。
知人を紹介してくれる。
つまり、
「一つの商品との関係」ではなく、「会社との関係がどれだけ続いたか」
を見る。
これが、本来のLTVに近いのだと思う。
「事実」と「仮説」を混ぜない
カホク運送の分析では、
「ムリ・ムラ・ムダの多い薄利構造から、効率的に利益を生む厚利構造へ」
と整理した。
ただ、これは少し言い切りすぎだった。
ムリ・ムラ・ムダが減った。
売上が伸びた。
利益を社員へ還元している。
ここまでは事実として確認できても、「厚利構造になった」とまでは言い切れない。
企業分析では、ストーリーをきれいにつなげたくなる。
だからこそ、
事実 → そこから読み取れること → 自分の仮説
を分ける必要がある。
きれいなストーリーほど、一度疑ったほうがいい。
「一般的な課題」を置かない
課題設定にも同じことが言える。
リブランでは、音楽家というニッチ市場に絞っているため、
「市場が小さいことが課題」
と考えた。
しかし、キャンセル待ちが出るほど需要があるなら、本当にそこが現在の課題なのか。
供給能力かもしれない。
物件開発のスピードかもしれない。
既存顧客の深耕かもしれない。
「ニッチだから市場規模が課題」ではなく、「この会社の成長を今、何が止めているのか」を見る。
一般論ではなく、その会社固有のボトルネックを探す必要がある。
次から「3つの問い」を追加する
今回の振り返りから、今後の企業分析では三つの問いを追加したい。
① どこでお金が発生するのか?
誰に、何を提供し、何の対価をもらうのか。
② KPIの「→」は本当につながっているか?
途中に工数削減、顧客行動などの中間レバーが抜けていないか。
③ 本当に、それが今の経営課題なのか?
業界一般ではなく、その会社の成長を止めているものは何か。
この三つだけでも、企業分析の解像度はかなり変わると思う。
「戦略を描く」から「経営を動かす」へ
企業分析を始めた頃は、
「この会社の強みは何か?」
を考えるだけでも難しかった。
今は、
「その強みを、どう収益に変えるのか?」
まで考えるようになった。
KPIも、
「何を測るか?」
から、
「なぜ、その数字が動けば利益が変わるのか?」
へ問いが変わってきた。
同じところを繰り返しているようでも、問いは少しずつ深くなっている。
戦略を描くだけでは足りない。
誰が、何にお金を払い、どの行動が変わり、どう利益につながるのか。
そこまで一本の線で描けるようになる。
「きれいな戦略を描く」から、「実際に経営を動かせる戦略を描く」へ。
今の自分に必要なのは、そこなのだと思う。

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