企業分析を続けていると、少しずつ見る場所が変わってくる。
最初の頃は、
「この会社の技術は何がすごいのか」
「どの商品が売れているのか」
というところから分析していた。
しかし最近は、
「なぜ、その会社は選ばれ続けるのか」
「なぜ、新しい商品を生み出し続けられるのか」
という、もう一段深いところを見るようになってきた。
最近分析した丸栄タオルや吉田屋の事例でも、その変化を強く感じた。
商品の強さより、顧客が感じる価値を見る
丸栄タオルであれば、強みは単に高級綿や製造技術ではない。
お客様が感じているのは、
「肌触り」
「癒し」
「高級感」
「幸せを感じる時間」
といった情緒的な価値である。
吉田屋も同じだ。
梅干しを売っているように見えるが、実際には、
おやつ。
ドリンク。
デザート。
ワークショップ。
といった新しい用途や体験を売っている。
以前なら、
「高品質な商品を作れる会社」
と整理していたかもしれない。
今は、
「その商品を通じて、顧客にどのような感情や体験を提供している会社なのか」
まで考えるようになった。
ここは、自分の分析の強みになってきたと思う。
「構造の変遷」は、かなり自分の型になってきた
もう一つ、自分の中で定着してきたのが「構造の変遷」である。
例えば、
下請けから直販へ。
汎用品から自社ブランドへ。
機能価値から情緒価値へ。
卸中心から顧客との直接接点へ。
こうしたビフォー・アフターを整理すると、その企業がどこで利益構造を変えたのかが見えやすい。
企業の歴史を時系列で並べるだけではない。
「何を変えたから、儲かる構造へ移れたのか」
を切り出す。
この見方は、自分の企業分析の中核になってきた。
ただし、「ブランド」をまだ軽く見ていた
一方で、最近のフィードバックで気づかされたことがある。
それは、
ブランドそのものを、独立した経営資産として十分に評価できていなかった
ということだ。
私はこれまで、
高級素材。
独自技術。
職人技。
顧客との接点。
といった具体的な強みを重視してきた。
もちろん、それらは重要である。
しかし、それらが積み重なった結果、
「この会社だから買う」
「高くても、このブランドを選ぶ」
という状態が生まれる。
そこまで行けば、ブランドは単なる結果ではない。
次の商品を売りやすくする。
新しい市場へ入りやすくする。
価格を維持しやすくする。
ファンを増やす。
つまり、ブランドそのものが次の成長を生む資産になる。
例えば、
素材+技術 → ブランド → ファン → 新しい用途へ横展開
という流れで考える方が、企業の強さをより正確に表現できる。
今後は、ブランドを「商品を売った結果」としてではなく、経営資産として見る必要があると思っている。
本当の強みは「商品開発力」では足りない
もう一つ、言葉の解像度も上げる必要がある。
よく、
「商品開発力が強い」
と書いてしまう。
しかし、商品開発力という言葉は広すぎる。
例えば吉田屋であれば、本当の強みは、
「商品開発力」
ではなく、
「顧客の生活や時代の変化から新しい梅の用途を発見し、それを商品や体験として継続的に形にできる組織能力」
なのだと思う。
丸栄タオルなら、
「高品質商品を作る力」
ではなく、
「顧客が感じた心地よさを拾い上げ、それを別の商品や利用場面へ展開できる能力」
と表現した方がよい。
つまり、問うべきなのは、
「何が強いか」
だけではない。
「なぜ、その強さを何度も再現できるのか」
である。
ここまで掘り下げると、企業の本当の競争力が見えてくる。
ブランドも数字で見る必要がある
ブランドは無形であり、感覚的に語られやすい。
「ブランド力があります」
「ファンがいます」
これだけでは、経営管理には使いにくい。
だから、ブランドもできるだけ数字で捉える必要がある。
例えば、
指名購入率。
ブランド名での検索数。
推奨意向。
リピート率。
新商品発売時の既存顧客購入率。
価格改定後の離反率。
こうした指標を見ることで、
「ブランドが本当に強くなっているのか」
を確認できる。
私はこれまで、粗利率やLTV、売上比率などのKPIを重視してきた。
そこに、ブランド資産を測る指標も加えたい。
用途を増やすと、現場は複雑になる
もう一つ、今後はより注意したいことがある。
私は用途別の商品展開をよく提案する。
これは差別化には非常に有効だと思っている。
ただし、用途が増えれば商品数も増える。
商品数が増えれば、
在庫が増える。
段取り替えが増える。
製造工程が複雑になる。
教育も難しくなる。
販促も分散する。
つまり、
売上を増やすための多品種化が、逆に利益を圧迫する可能性がある。
ここまで考えなければならない。
例えば、商品数が増えた時には、
SKU別の粗利。
段取り替え時間。
少量生産によるコスト。
製造工数。
不良率。
などを見る必要がある。
売れる商品を増やすだけでは足りない。
複雑性が生み出すコストまで見て初めて、本当の利益改善になる。
これは、かなり重要な視点だと感じている。
供給制約も「人手不足」だけではない
以前は、供給制約というと、
人が足りない。
職人が足りない。
設備能力が足りない。
という見方が中心だった。
しかし、実際のボトルネックはもっと多様である。
例えば、
熟練者しか品質判断できない。
段取り替えが多すぎる。
商品数が増えすぎて管理できない。
新商品の企画担当が社長一人しかいない。
販路を広げる営業力がない。
ブランドを守る品質管理が追いつかない。
これらもすべて供給制約である。
つまり、
「今、この会社の成長速度を最も遅くしているものは何か」
を探す必要がある。
この問いを、もっと厳しく使っていきたい。
長期戦略も、「どこで売るか」から卒業したい
長期戦略についても、課題がある。
私はつい、
海外展開。
法人展開。
プラットフォーム化。
といった言葉を使ってしまう。
しかし、「どこで売るか」を変えただけでは、長期戦略としては弱い。
例えば吉田屋なら、
「海外で梅を売る」
ではなく、
「世界の食文化に合わせて、新しい梅の用途を企画する会社」
という姿の方が、現在の強みの延長線上にある。
丸栄タオルなら、
「高級ホテルにタオルを売る」
だけではなく、
「心地よい時間を繊維製品で設計するブランド」
へ進む。
売り先を広げるだけではなく、
自社が提供する価値そのものを一段抽象化する。
今後の長期戦略では、この視点を持ちたい。
KPIにも「用途発見」を入れたい
もう一つ、今後強化したいのが、顧客の声をKPIへ落とすことである。
私は、
「答えは顧客が持っている」
という考え方をかなり重視している。
では、それをどう管理するのか。
例えば、
用途別レビュー取得率。
顧客の声から抽出した用途アイデア数。
アイデアから試作品へ進んだ件数。
試作品から商品化した比率。
顧客の声をもとに改善した回数。
こうした指標を追えば、
「顧客の声を聞いています」
という精神論ではなくなる。
顧客接点が、本当に商品開発につながっているかを確認できる。
これは、自分のKPI設計に今後追加したいラインである。
次の壁は「企業の魂」を仕組みで説明すること
企業分析を続けてきて、以前よりも、
企業の情緒的価値。
存在意義。
利益構造の転換点。
は、かなり見えるようになってきた。
しかし次に必要なのは、
その企業の魂が、なぜ継続的に利益を生み続けられるのかを、仕組みとして説明すること
なのだと思う。
ブランド。
組織能力。
顧客データ。
標準化。
供給制約。
多品種化による複雑性。
そこまで含めて初めて、戦略は現実の経営計画になる。
まとめ
今の自分の強みは、
企業の「物語」を見つけること。
そして、その物語を「利益構造」として整理することだと思う。
ただ、その先にまだ壁がある。
商品の強みだけでなく、ブランド資産を見る。
「商品開発力」ではなく、再現可能な組織能力として言語化する。
売上拡大だけでなく、複雑性によるコスト増も見る。
人手だけでなく、本当の供給制約を探す。
顧客の声を、用途発見のKPIへ変える。
長期戦略を販路拡大で終わらせず、「どんな価値をプロデュースする会社になるか」まで考える。
企業の魂は、以前より見えるようになった。
次に必要なのは、
その魂を、ブランドと仕組みと数字で説明できる力
なのだと思う。
そこまで行けば、自分の企業分析も、もう一段上へ進める気がしている。

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