企業の「魂」は見えるようになった。次に必要なのは、現実へつなぐ橋だった

勝手に企業診断

企業分析を続けていると、企業のことだけでなく、自分の思考の癖も見えてくる。

最近分析したのは、サムライトレーディングとジェラートマリノ。

扱っている商品はまったく違う。

一方は、卵の殻を再利用した環境配慮型の商品。

もう一方は、地域の農産物を活かしたジェラートである。

しかし、分析を進めると、共通点が見えてきた。

どちらも、単に商品を売っている会社ではない。

サムライトレーディングは、環境への想いに共感してもらう会社。

ジェラートマリノは、捨てられるはずだった素材を、新しい価値へ変える会社。

以前よりも、商品の奥にある「企業の本質」を捉えられるようになってきた気がする。

商品ではなく、企業の存在価値を見る

企業分析を始めた頃は、強みといえば、

「高い技術力がある」

「顧客が多い」

「独自商品を持っている」

といった整理が中心だった。

もちろん、それも間違いではない。

しかし、最近はもう一段深く考えるようになった。

なぜ、その技術が評価されるのか。

なぜ、その商品を顧客が選ぶのか。

その会社は、社会にどのような価値を提供しているのか。

例えば、「農家100社と連携している」こと自体が強みなのではない。

本当の強みは、

農家と一緒に新しい商品を生み出せる関係性と仕組み

にある。

数字ではなく、企業が持つ能力や資産を見る。

この視点は、自分の分析の軸として、かなり定着してきたと思う。

構造の変化を整理する型も見えてきた

もう一つ、自分の中で形になってきたのが「構造の変遷」である。

商品はどう変わったのか。

顧客はどう変わったのか。

販売チャネルはどう変わったのか。

取引先との関係はどう変わったのか。

そして、利益構造はどう変わったのか。

このビフォー・アフターを並べることで、企業が成長した理由が見えやすくなる。

例えば、

下請けから自社ブランドへ。

価格重視の顧客から、価値観に共感する顧客へ。

上下関係の取引から、共創するパートナー関係へ。

単なる会社紹介ではなく、

その企業が何を変えたことで、利益を出せるようになったのか

を説明できるようになってきた。

一方で、まだ飛びすぎる

ただ、課題もある。

私は企業の将来を考え始めると、つい話を広げすぎる。

海外展開。

プラットフォーム化。

プロデュース事業。

パートナーネットワーク。

どれも面白そうに見える。

しかし、従業員5人の会社に、いきなり大規模なプラットフォーム構想を提案しても、現実味はない。

今の事業から、次の事業へ。

その間には、本来いくつもの段階がある。

例えば、地域特産物のプロデュース事業を目指すなら、まずは特定の農産物で成功事例を作る。

次に、複数の農家との共同商品開発を型化する。

その実績をもとに、百貨店やホテルへの企画提案へ進む。

このような橋渡しが必要である。

将来像を描くだけでは戦略にならない。

そこへどうやってたどり着くかまで描いて、初めて戦略になる。

「顧客がいる」は強みではない

今回、改めて気づいたこともある。

「環境意識の高い顧客がいる」

「健康志向の市場が伸びている」

これは企業の強みではない。

市場に存在する機会である。

強みとは、その市場で選ばれ続ける理由だ。

例えば、

環境意識の高い企業が存在することではなく、

その企業の想いを商品として表現できる企画力。

農家が多いことではなく、

農家の素材を商品化し、販売までつなげられる関係性。

外部環境と自社能力を混同しない。

基本的なことだが、分析では意外と難しい。

需要を増やす前に、作れるのか

私は、売上をどう増やすかを先に考えがちだ。

しかし、小規模企業では、需要より供給が問題になることが多い。

注文が増えても、作れる人がいない。

熟練者しか対応できない。

生産パートナーが1社しかいない。

これではブランドが広がるほど、現場が苦しくなる。

だから、需要拡大と供給力強化はセットで考えなければならない。

工程の標準化。

熟練者工程の絞り込み。

生産パートナーの育成。

品質を守る契約や管理の仕組み。

成長戦略とは、売る方法を考えることだけではない。

増えた需要を受け止められる会社をつくることでもある。

データは資産ではなく、利益に変えてこそ意味がある

データについても、考え方が少し変わってきた。

連携農家数。

ファン数。

顧客データ。

これらは重要な資産である。

しかし、持っているだけでは利益を生まない。

連携農家が増えた結果、どれだけ商品化できたのか。

ファンの声から、どれだけ新商品が生まれたのか。

顧客データを使い、高単価商品の売上比率がどれだけ増えたのか。

資産を成果へ変換する構造まで描く必要がある。

KPIも同じだ。

資産、行動、構造、成果を混ぜずに整理する。

例えば、

連携農家数は資産。

共同開発件数は行動。

共同開発商品の売上比率は構造。

粗利額は成果。

この違いを意識すると、KPIツリーの因果関係も分かりやすくなる。

商品は、顧客の想いを伝えるメディアになる

今回の気付きで、特に・・・と感じたのが、

「商品はメディアである」

という視点だ。

環境に配慮した食器を導入する企業は、単に食器が欲しいわけではない。

「自分たちは環境を大切にしている」

というメッセージを、顧客や子どもたちへ伝えたい。

その時、商品は単なる物ではなく、企業の思想を社会へ伝える道具になる。

これは、モノ売りから企画提案型のビジネスへ進む上で、大きなヒントになる。

商品機能だけでなく、

「この商品を使うことで、顧客は何を社会へ伝えられるのか」

まで考える。

この視点は、今後の企業分析でも活かしていきたい。

まとめ

企業分析を重ねる中で、自分の強みは少しずつ見えてきた。

企業の歴史や商品から、その会社の本質的な価値を見つける。

構造の変化を整理し、利益構造と戦略をつなげる。

一方で、まだ足りないものもある。

戦略を広げすぎず、最も重要な勝ち筋へ絞ること。

現在地から将来像までの橋を、現実的な段階として描くこと。

需要だけでなく、供給側の限界を見ること。

そして、企業が持つ資産を、どう利益へ変えるかまで設計すること。

企業の「魂」は、少しずつ見えるようになってきた。

次に必要なのは、その魂を現実の事業へ変えるための、具体的な橋を架ける力なのだと思う。

コメント

にほんブログ村 経営ブログへ
にほんブログ村