最近、少し迷っている。
毎朝、企業分析をしたり、KPIを考えたり、経営について勉強したりしている。
でも、ふと思う。
「これ、AIでもできるのでは?」
企業の情報を入れれば、強みを整理してくれる。
課題も出してくれる。
成長戦略も考えてくれる。
KPIツリーだって作ってくれる。
しかも、自分より圧倒的に速い。
そうなると、
「人間が時間をかけて勉強する意味は、どこにあるんだろう」
という疑問が出てくる。
最近、自分なりに考えている。
AIは「正しそうな答え」を出すのが、とても上手い
例えば、運送会社についてAIに聞けば、
「積載率を上げましょう」
「配送ルートを最適化しましょう」
「荷待ち時間を削減しましょう」
といった答えはすぐに出てくる。
どれも間違いではない。
でも実際のお客様を前にすると、話はそんなに簡単ではない。
そもそも積載率を測るデータがない。
荷主別の拘束時間が取れない。
システム改修にお金をかけられない。
現場にデータ入力を増やす余裕もない。
改善を進める人もいない。
そんなことはいくらでもある。
だから必要なのは、
「理論上の正解」ではなく、「この会社で実際にできる答え」
だと思う。
お客様との会話には、資料に書いていない情報がある
お客様と話していると、
資料には書いていない重要な情報が出てくる。
社長が、ある数字だけ何度も気にする。
ある話題になると急に質問が増える。
「それは現場では難しいな」と担当者が言う。
逆に、こちらがそれほど重要だと思っていなかった話に、
「それ、面白いね」
と反応する。
こうした反応から、
「この会社が本当に困っているのは何なのか」
を見つける。
これはコンサルティングではかなり重要だと思う。
言われたことを整理するだけではない。
相手がまだ明確に言葉にできていない重要なことを見つける。
AI時代には、むしろこの力の価値が上がるのではないか。
「あるデータ」で考える力も必要になる
現実の企業には、分析に都合のいいデータが揃っているとは限らない。
欲しいデータがない。
営業日報は自由記述。
顧客コードが統一されていない。
必要な項目が欠けている。
そんな状態のほうが普通かもしれない。
そこで、
「データがないので分析できません」
では仕事にならない。
今あるデータを見ながら、
「このデータなら、ここまでは分かる」
「これは別のデータで代替できる」
「まず3カ月だけ現場で記録してみよう」
と考える。
つまり、
理想的なデータ分析ではなく、現実から逆算した分析設計
が必要になる。
会社の「できる・できない」を読む
もう一つ重要だと思うのが、実行可能性だ。
社員30人の会社に、
「専門のデータ分析チームを作りましょう」
と言っても現実的ではない。
現場が忙しい会社に、20個のKPIを毎週入力してもらう仕組みを作っても続かない。
だから、
社員数。
組織体制。
現場の忙しさ。
ITスキル。
予算。
社長の考え方。
こうした条件を見ながら、
「この会社なら、どこまでできるか」
を判断する必要がある。
良い提案とは、最も高度な提案ではない。
その会社が実行できて、結果につながる提案
なのだと思う。
だから、結局「個別事情を読む力」なのかもしれない
ここまで考えると、自分が磨くべき力が少し見えてくる。
お客様との対話から重要な論点を拾う。
実際に保存されているデータから、できる分析を考える。
組織や人数から、実行できる範囲を判断する。
業界や会社の事情を理解する。
そして、それらを組み合わせて、
「この会社なら、こうする」
という答えを作る。
総じて言えば、
個別事情を理解し、現実解に変換する力
なのだと思う。
では、知識を勉強する必要はなくなるのか
ここで一つ疑問が出る。
個別事情が重要なら、必要になったときに全部AIへ聞けばいいのではないか。
でも、それも違うと思っている。
お客様との会話で、
「これは重要だ」
と気づくためには、そもそも知識が必要だからだ。
運送業の利益構造を知らなければ、荷待ち時間の話が出ても、その重要性に気づけない。
LTVを知らなければ、既存顧客との関係の話を聞いても、戦略につながらない。
財務を知らなければ、数字の異常にも気づけない。
つまり知識は、
答えを覚えるためではなく、「何が重要なのか」に気づくために必要になる。
AI時代ほど、ここは重要なのかもしれない。
AIの答えを疑うにも、知識がいる
AIは、とても自然な文章で間違える。
もっと厄介なのは、
「理屈としては正しいけれど、現場では使えない答え」
を出すことだ。
そのとき、
「何か変だ」
と気づけるか。
因果が飛んでいないか。
必要なデータは本当に取れるのか。
その会社の人数で運用できるのか。
投資に見合うのか。
顧客は本当にお金を払うのか。
これを判断するには、人間側にも基礎知識と経験がいる。
AIを使えば、人間に知識がいらなくなるのではない。
むしろ、
AIの答えを評価するための知識が必要になる。
これから磨くべきなのは「問い・判断・実行」かもしれない
では、AI時代に人間は何を磨けばいいのか。
今のところ、私は三つだと思っている。
問いをつくる力。
お客様との会話やデータから、「本当に解くべき問題は何か」を見つける。
判断する力。
AIの提案も含めて複数の選択肢から、「この会社ならこれだ」と決める。
実行につなげる力。
組織、人、予算、データの制約を踏まえ、実際に動かせる形まで落とす。
AIは、この三つすべてを支援してくれる。
しかし最後は、現実の会社と向き合わなければならない。
AIに勝つ必要はない
考えてみれば、
「AIに負けないために何を学ぶか」
という問い自体が、少し違うのかもしれない。
企業分析のスピードでAIと競っても勝てない。
知識量で競っても勝てない。
文章を書く速さでも勝てない。
そこを競う必要はない。
AIには大量の情報を整理してもらう。
仮説を出してもらう。
分析してもらう。
KPIの候補も考えてもらう。
そのうえで人間は、
お客様と話し、
現場を見て、
違和感を拾い、
AIの答えを疑い、
「この会社では、何をやるべきか」を決める。
だから、毎日やっている企業分析の勉強も、無駄ではないと思い始めている。
ただし、目的は変わる。
AIより多くの答えを知るためではない。
AIが出してきた答えの中から、
「これは使える」
「これは違う」
「この会社には無理だ」
「ここが本当の問題だ」
と判断できる人になるためだ。
AI時代に必要なのは、AIに勝つ人ではない。
AIを使いながら、現実を見て、最後の判断をできる人。
これから自分が磨くべきなのは、そんな力なのだと思う。

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