ただの葛餅では百貨店に並ばない|山信食産に学ぶ和菓子のブランド化戦略

勝手に企業診断

葛餅。

正直、昔ながらの和菓子というイメージだと思う。

お寺の参道。
黒蜜。
きな粉。
年配向け。

そんな印象を持つ人も多いだろう。

でも、ある小さな会社が、その葛餅を“百貨店ブランド”へ変えた。

山信食産。

従業員15人。

決して大企業ではない。


葛餅は、実は「飢饉の食べ物」だった

この会社の面白いところは、まず歴史だ。

葛餅のルーツ。

もともとは、お坊さんの食事の副産物だった。

小麦デンプン。

普通は、のりに使われていた。

でも、江戸の飢饉で、それが食べ物として振る舞われるようになる。

これが、葛餅の源流。

だから、今でも寺の参道で売られている。

つまり、単なる和菓子ではなく、

“歴史”を食べている。


この会社、発酵に2年かける

普通は1年。

でも、山信食産は2年。

なぜか。

乳酸菌の酵素分解で、食感が変わるからだ。

細かくなる。

歯切れが良くなる。

ここが特徴。


「赤ちゃんのほっぺ」で品質判断

ここも面白い。

最終品質は、指で確認する。

しかも基準は、

「赤ちゃんのほっぺ」

職人の世界だ。


でも、この会社が変えたのは「食感」だけではない

本当にすごいのは、そこではない。

この会社は、物流を変えた。


真空包装で「10日持つ」

これが大きかった。

和菓子は、基本的に日持ちしない。

つまり、近距離商売になりやすい。

でも、真空包装で10日持つようになった。

結果、業務用販路が広がる。

売上は、

2,000万円 → 2億円

まで伸びた。

これはかなり大きい。


ただし、それでも苦しかった

リーマンショック。

売上3分の1減。

かなり厳しい。

しかも、卸依存。

つまり、自分で顧客を持っていない。

ここに危機感を持つ。


「自分で営業する」と決めた

ここからが面白い。

社長は動く。

足を使う。

駅前で営業。

かなり泥臭い。


ハート型の葛餅

この発想が良い。

葛餅は、普通は四角。

でも、ハート型にした。

しかも、母の日用途。

つまり、

“食べ物”から、“感情商品”に変えた。


百貨店の壁は高かった

でも、当然簡単ではない。

元百貨店勤務の人から、かなり厳しいことを言われる。

「これで百貨店は無理」

しかも、

「エベレストに登るより難しい」

と言われる。

かなり辛い。


「トラヤの偏差値75」

この話も面白い。

百貨店に並ぶには、パッケージの格が必要。

今の山信食産は偏差値40。

最低55は必要。

つまり、商品だけではダメ。

世界観が必要。


パッケージを全部変える

しかも、あと2ヶ月。

普通なら無理だ。

でも、複数デザイナーと試行錯誤する。

そして、ようやく完成。

この執念がすごい。


3年後、百貨店に並ぶ

ここがすごい。

最初に否定された相手から、最終的に紹介を受ける。

そして、百貨店催事へ。

これをきっかけに、他の百貨店からも声がかかる。


この会社の本当の強み

一見すると、

  • 葛餅の食感
  • 発酵技術
  • 真空包装

が強みに見える。

もちろん、それもある。

でも、本質はそこだけではない。

本当に強いのは、

古い和菓子を、現代用途に翻訳したこと。


和菓子を「感情商品」に変えた

これが重要。

昔の葛餅は、

  • 参道
  • 年配客
  • 日常菓子

という印象が強い。

でも、今は違う。

  • 母の日
  • ギフト
  • 百貨店
  • ストーリー

つまり、

用途を変えた。


「歴史」が価値になる

しかも、葛餅はストーリーが強い。

  • 江戸
  • 発酵
  • 職人技

これは、インバウンドとも相性が良い。

特に最近は、

「背景のある食」

が強い。


ただし、課題は重い

もちろん問題もある。

  • 社長依存
  • 職人依存
  • BtoC依存

かなり不安定だ。


だから重要なのは「分業」

この会社の考え方で、かなり現実的だと思うのがここだ。

無理に全部マニュアル化しない。

職人でしかできない工程は残す。

でも、切り離せる工程は分業化する。

ここはかなり現実解だと思う。


介護市場は意外と筋が良い

中期戦略も面白い。

葛餅は、歯切れが良い。

つまり、高齢者と相性が良い。

しかも、歴史ストーリーがある。

単なる介護食ではなく、

「楽しみ」

になる可能性がある。


インバウンドとの相性も良い

外国人観光客とも相性が良い。

理由はシンプル。

  • 江戸文化
  • 寺文化
  • 発酵
  • 職人技

全部、日本らしさだからだ。


この会社から学べること

山信食産の面白さはここだ。

葛餅を変えたわけではない。

意味を変えた。

昔ながらの和菓子。

そこから、

感情価値のあるギフト商品

へ変えた。


最後に

中小企業が生き残るには、新商品を作るだけでは足りない。

重要なのは、

古い商品に、新しい用途を与えられるか

だと思う。

山信食産は、葛餅を捨てなかった。

でも、昔のまま売ったわけでもない。

用途を変えた。

だから、百貨店に並ぶようになった。

これが、中小企業のブランド化なのだと思う。

コメント

にほんブログ村 経営ブログへ
にほんブログ村