葬儀会社は、一般的に「人が亡くなってから」が、お客様との最初の接点になる。
つまり、一度きりの接点になりやすく、価格競争にも陥りやすい業界である。
しかし、この常識を覆した会社がある。
「亡くなってから」ではなく、「生きているうちから」お客様と関係を築くという逆転の発想だ。
終活セミナーや会員制度を通じて、生前から継続的な接点を持つことで、お客様との信頼関係を深め、LTV(顧客生涯価値)の向上と、他社が簡単には真似できない競争優位を築いている。
今回は、その戦略で成長を続けるライフワークスの事例を紹介する。
「葬儀会社」ではなく、「人生に寄り添う会社」へ
ライフワークスは、キリスト教専門の葬儀会社である。
創業当初は営業に苦戦し、1日に15~20件訪問しても、1年間で受注はわずか10件ほど。後発企業であるため信頼を得ることは簡単ではなく、葬儀の現場でも多くの失敗を経験した。
その中で社長は、一つの本質に気付く。
「葬儀を売るのではなく、生き方を支えることが使命ではないか。」
この考え方を軸に、終活セミナーを開始した。
テーマは「どう死ぬか」ではなく、「死を見つめ、どう生きるか。」
この発想が多くの共感を呼び、現在では約1,000人がセミナーに参加し、その半数が会員登録。会員数は6,700人を超えるまでになった。
成長の本質は「接点の前倒し」
私が最も優れていると感じたのは、お客様との接点を大きく変えたことだ。
従来の葬儀会社は、
- 人が亡くなる
- 葬儀を依頼される
- 葬儀を行う
という一度きりの関係だった。
一方、ライフワークスは、
- 終活セミナー
- 会員登録
- 定期的な情報発信
- 人生相談
- 葬儀
- 遺族との継続的な関係
という長い関係性を築いている。
これは単なる営業方法の違いではない。
ビジネスモデルそのものを変えたと言える。
強みは「想い」を仕組みにしたこと
ライフワークスの強みは、単にセミナーを開催していることではない。
- 生き方を考えるセミナー
- 会員制度
- SNSによる情報発信
- 故人らしさを反映したオリジナル葬儀
これらが一つの流れとして仕組み化されている点にある。
さらに、「ライフエンディングアドバイザー」の育成にも力を入れ、心から遺族に寄り添う文化を組織全体で築いている。
私なら次の一手をこう考える
一方で、課題も見えてくる。
現在の強みは、社長自身の考え方やセミナー運営力に依存する部分が大きい。
また、一人ひとりに寄り添うオーダーメイド型の葬儀は価値が高い反面、生産性には限界がある。
私なら、次のような段階で進める。
短期は、会員・サービスごとの採算性を分析し、高収益領域へ経営資源を集中する。同時に、会員の価値観や人生観、希望をデータとして蓄積する。
中期は、そのデータと過去の葬儀実績を組み合わせ、「価値観別」「人生観別」といった設計パターンを整理する。オリジナル性は残しながら、セミオーダー化によって生産性を高める。
長期は、生前支援のノウハウを企業向けにも展開する。例えば、シニア社員向けのセカンドキャリアセミナーや人生設計支援など、福利厚生サービスとして提供できれば、新たな安定収益にもつながる可能性がある。
成長企業に共通すること
ライフワークスを分析していて改めて感じた。
成長している会社は、「今ある市場」で競争していない。
ライフワークスも、葬儀そのもので勝負したのではない。
「人はどう生きるか」というテーマに市場を広げた。
だから価格競争から抜け出し、お客様との長い関係を築くことができたのである。
商品を変えることも大切だ。
しかし、それ以上に重要なのは、「お客様との接点」を変えることなのかもしれない。

コメント