環境関連の商品は、本当にビジネスになるのだろうか。
私は以前、そのように考えていた。
環境に優しいことは大切だ。しかし、企業にとって利益が出なければ事業は続かない。「環境配慮」という言葉だけでは差別化は難しく、価格競争に巻き込まれるのではないかと思っていた。
一方で近年は、SDGsへの関心の高まりとともに、自社の思想や信念をブランドとして発信し、それに共感した顧客から選ばれる企業が増えている。特に欧米では、その傾向が日本以上に強い。
そんな中、独自技術を武器に、環境への想いを商品という形で届け、成長を続けている企業がある。
それが、サムライトレーディングである。
売れなかった1年間
サムライトレーディングは、卵の殻を再利用した新素材を開発する環境ベンチャーだ。
紙製品「カミシエル」。
食器「シェルミン」。
廃棄される卵の殻を価値ある製品へ生まれ変わらせている。
しかし、創業当初は順風満帆ではなかった。
売上ゼロの期間が約1年間続く。
「SDGsでコストダウンできるの?」
そんな反応ばかりだったという。
それでも社長は諦めなかった。
「日本も、いつか必ずSDGsが評価される時代になる。」
そう信じ続けた。
技術だけではなく、思想を売る会社
卵の殻は樹脂と違い、結合しにくく、強度を出すことが難しい。
この課題を独自技術で克服したことで、商品化に成功した。
さらに2022年には、シェルミンがグッドデザイン賞を受賞。
バイオマスマーク55も取得し、高い環境性能が評価されている。
しかし、この会社の強みは技術だけではない。
共感するパートナー。
環境意識の高い顧客。
そして、
「環境に優しいから選ぶ」のではなく、「正しいと思うものを選ぶ」という価値観。
これがブランドの核になっている。
利益構造はどう変わったのか
サムライトレーディングの変化を整理すると、次のようになる。
商品
一般的なプラスチック製品
↓
卵の殻を活用した独自素材の商品
顧客
価格重視の顧客
↓
環境への想いに共感する顧客
生産
従来素材
↓
環境配慮型素材
価格ではなく、価値で選ばれる構造へ転換したのである。
ブランドとは「共感」を集めること
この会社が売っているのは、食器でも紙でもない。
「未来の環境を守りたい」という想いである。
テーマパークや水族館が採用する理由もそこにある。
子どもたちに、
「海をきれいに守ることは大切なんだ。」
そんなメッセージを伝えたい。
その価値観に共感して商品が選ばれている。
ブランドとは、ロゴでもデザインでもない。
誰に、どんな想いを届けるか。
その積み重ねなのだと思う。
今後の成長戦略を考える
短期的には、生産体制を強化することが重要だ。
現在は生産パートナーが限られており、需要が増えた時の供給力に課題がある。
同時に、購入理由を分析し、
「なぜ、この商品を選んだのか。」
をデータとして蓄積したい。
ブランドは企業が作るものではない。
顧客が感じる価値から生まれるものだからだ。
中期的には、その購入理由の中で最も共感を集めるメッセージに絞り込み、ブランドを育てていく。
「きれいな海を100年後まで残したい。」
そんな想いを軸に、イベントやコミュニティを通じて共感の輪を広げる。
さらに海外展開を見据え、環境性能のさらなる向上にも取り組んでいく。
長期的には、日本で育てたブランドを海外へ展開する。
ただし、いきなり販路を広げるのではなく、代理店との連携やテスト販売から始めることが現実的だろう。
環境への意識が高い地域や企業に絞り、ブランドとの親和性を確認しながら市場を広げていくことが重要である。
まとめ
サムライトレーディングの事例から学べることは、
「環境に優しい」だけではブランドにはならない。
ということである。
技術がある。
商品がある。
それだけでは十分ではない。
その商品に込めた想いを伝え、共感してくれる人を増やしていく。
その積み重ねが、価格競争から抜け出し、ブランドを育てる力になる。
中小企業にとって本当に重要なのは、
商品を売ることではなく、
「何のために存在する会社なのか」を伝え続けること。
サムライトレーディングは、そのことを教えてくれる好例である。

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