東京に一店だけ残った屏風専門店。
最盛期30人。現在7人。
売上は4分の1まで落ちた。
和室は減る。職人は減る。材料は高騰。卸は値上げできない。
典型的な「忙しいが儲からない構造」である。
ここから、どうやって利益構造を変えるか。今回は、KPIツリーを中心に整理する。
① KGIは売上ではない
KGI:営業利益率
問題は売上減ではない。薄利構造だった。
だからゴールは売上ではなく、利益率である。
② 主要KPI(経営レバー)
- 平均受注単価
- 法人粗利率
- 海外高単価案件売上比率
- 職人一人当たり付加価値
ここで明確なのは、「量」ではなく「構造」を変える指標を置いていることだ。
③ 先行KPI(因果の芯)
- オリジナル屏風販売比率
- 法人サブスク契約率/継続率
- 海外セレブリピート率
- 熟練稼働率
- 工程標準化率
④ 決定因子(なぜ動かないのか)
先行KPIまで作っても、現場は止まることがある。
理由はシンプルで、「なぜその数値になるのか」がブラックボックスだからだ。
1. オリジナル屏風販売比率
なぜ上がらないのか?
- 認知度不足(知らない)
- 興味がない(必要と思われていない)
- 価格が高いと感じる
さらに分解すると、こうなる。
- 認知が上がらない → イベント設計が弱い
- 興味が湧かない → 提案ストーリーが型化されていない
- 価格が高い → 価格以上の価値を伝える構造がない
ここまで見て初めて、行動KPIが意味を持つ。
2. 法人サブスク契約率・継続率
止まる理由は?
- 認知不足
- 価格高い
- 必要性を感じていない
深掘ると、こうなる。
- 用途提案の型がない
- キーマン攻略法が共有されていない
つまり、営業努力の問題ではなく、提案構造の未設計である。
3. 海外セレブリピート率
忘れている。二回目の必要性がない。
つまり、
- 再起を促す仕組みがない
- 帰国後接点がない
- LTV設計がない
海外サイト強化は、ここを動かすための施策になる。
4. 熟練稼働率
若手が育たない。なぜか。
- 育成計画がない
- 採用設計がない
- 工程が言語化されていない
- 職人が「自分の仕事がなくなる」と思っている
これは能力問題ではない。インセンティブ設計の問題である。
5. 工程標準化率
標準化できない理由。
- 複雑すぎると思い込んでいる
- 時間がない
- 方法が分からない
つまり、標準化が進まないのは「忙しいから」ではない。
標準化をやる構造がないからだ。
⑤ 行動KPIが意味を持つ瞬間
例えば、
- 展示会受注率
- ストーリー発信数
- ワークショップ回数
これらは単独では意味がない。
決定因子に紐づいて初めて意味が出る。
- 認知不足なら → 展示会
- 興味不足なら → ストーリー設計
- 価格納得感不足なら → 用途提案の型
つまり、行動KPIは「決定因子に対する処方箋」である。
⑥ このKPIツリーの本質
このツリーのポイントは、売上拡大ではなく構造転換を設計していることだ。
- 薄利卸 → 高単価受注
- 単発 → サブスク
- 国内縮小 → 海外拡大
- 属人職人 → 標準化
そして今回追加したのが、心理・認知レイヤー(決定因子)である。
ここまで設計して初めて、KPIツリーは“動く”。
結論
伝統産業再生の本質は、技術ではない。発信でもない。
「構造 × 心理」の設計だ。
KPIツリーは数字の図ではない。
事業の因果と人の心理を接続する設計図である。
片岡屏風店は、その設計図を描き始めている。
ここからが、本当の勝負だ。

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