大手企業からの下請けとして仕事を受ける。
発注側との力関係は弱く、価格交渉も難しい。忙しく働いても利益は残らず、提案もなかなか受け入れてもらえない。
こうした「忙しいのに儲からない」という構図は、多くの中小企業が抱える共通の課題である。
では、この状況を変えるにはどうすればよいのだろうか。
方法はいくつかある。
- 差別化できる自社商品を開発し、直販へシフトしてブランドを構築する
- 単なる商品提供ではなく、企画・提案など上流工程やストックビジネスへ踏み込む
- 他社との連携により、自社だけでは提供できない価値を生み出す
今回紹介するジェラートマリノは、この中でも「差別化できる自社商品を開発し、直販へシフトすることでブランド化を実現した企業」である。
下請けメーカーから脱却し、地域の素材を活かした独自ブランドを確立した同社は、どのように利益構造を変革していったのだろうか。
下請けでは、努力が利益につながらない
ジェラートマリノは、もともと大手メーカー向けの下請け製造が中心だった。
朝から晩まで働いても利益は残らない。
価格交渉もできない。
品質に問題があれば、一方的に責任を負わされる。
「仕事がなくなってもいいんだぞ。」
そんな言葉を投げかけられることもあったという。
技術があっても、自分で価値を決められない。
これが下請け企業の苦しさである。
転機はコロナだった
転機は、新型コロナウイルスの流行だった。
大手企業からの受注は止まった。
一方で、取引先の農家も出荷先を失い、収穫したイチゴを廃棄しなければならない状況になっていた。
そこで社長は、自社の冷凍庫を無償で開放する。
保管したイチゴを使ってジェラートを開発し、販売したところ、大きな反響を呼んだ。
ここから、「素材を活かしたジェラート」という新しい価値が生まれる。
社長は、この会社の強みをこう表現している。
「ロスを価値に変えること。」
まさに、この言葉がジェラートマリノの本質だと思う。
利益構造はどう変わったのか
ジェラートマリノの変化を整理すると、次のようになる。
販売チャネル
大手メーカー向け下請け
↓
工場直売・農家との協業
顧客
大手企業
↓
農家・ブランド志向の顧客
商品
一般的なジェラート
↓
素材を活かした、できたてジェラート
関係性
上下関係
↓
Win-Winのパートナーシップ
価格で選ばれる会社から、価値で選ばれる会社へ。
利益構造そのものが変わったのである。
強みは「ジェラート」ではない
ジェラートマリノの強みは、ジェラートそのものではない。
100社を超える農家とのネットワーク。
素材を最大限に引き出す下処理技術。
そして、毎週工場へ足を運ぶほどのファン。
これらが組み合わさることで、他社には真似しにくい競争優位が生まれている。
つまり売っているのは、アイスではない。
地域の素材と生産者の想いを味わう体験なのである。
今後の成長戦略を考える
短期的には、商品別・チャネル別の採算性を分析し、高収益商品へ経営資源を集中することが重要だ。
一方で、素材を活かす工程には熟練技術が必要であり、人手不足が成長のボトルネックになっている。
工程の標準化や動画・マニュアル化を進め、品質を維持しながら供給力を高めることも欠かせない。
また、ファンとの接点を増やし、新商品のアイデア募集や限定イベントなどを通じてコミュニティを育てることも、ブランド価値の向上につながる。
中期的には、「素材を活かしたジェラート」というブランドをさらに磨きたい。
全国の農家との連携を広げながら、ECや定期便を活用してファンとの継続的な関係を築く。
販売データや顧客の声を商品開発へ活かすことで、ブランドはさらに強くなるだろう。
長期的には、個人向けで培ったブランド力を活かし、高級ホテルやレストランなど、価値を理解してくれる法人市場へ展開することも考えられる。
価格ではなく、「地域の素材を活かすブランド」として選ばれる存在になることが、持続的な成長につながるはずだ。
まとめ
ジェラートマリノの事例から学べることは、
「下請けから抜け出すには、自分だけの価値を持つことが必要だ」
ということだ。
同じジェラートを作っていても、価格競争に巻き込まれる会社もあれば、ファンが毎週通う会社もある。
その違いは、商品ではなく、提供する価値にある。
「ロスを価値に変える。」
この考え方は、食品業界だけではない。
多くの中小企業が、自社の強みを見つめ直すヒントになるのではないだろうか。
「下請けから脱却するとは、商品を変えることではない。自分たちが価格を決められる『提供価値』を持つことなのである」(それが難しいんだけど。ポイントは強みを明確にすることかなと思う)

コメント