「この夏、人生史上最もうまいそうめん」――売上3倍のスーパーは、商品の売り方が違った

勝手に企業診断

地域のスーパーが生き残るのは簡単ではない。

大手スーパーと同じ商品を並べて、価格で勝負する。

資本力も仕入れ力も違う中で、この戦いを続けるのはかなり厳しい。

では、小さなスーパーはどう戦えばいいのか。

その一つの答えを見せているのが、新潟市のローカルスーパー「マスヤ」だ。

かつて長年赤字が続いていた店は、4代目の栗林礼奈さんによる改革で、売上を大きく伸ばした。報道では、店長就任後4年間で売上が3倍になったとされている。 (朝日新聞ビジネス)

何を変えたのか。

私はこの会社を分析していて、面白いと思った。

「安く売る店」から「欲しくなる理由をつくる店」へ変わったのである。

全国から「ちょっと変わった、おいしいもの」を集める

マスヤの特徴は、品揃えにある。

どこのスーパーでも買える商品だけではない。

全国から、店側が「これはおいしい」「これは売りたい」と思った商品を探してくる。

実際、マスヤは全国の良品を独自ルートで仕入れることを特徴としている。 (新潟県信用保証協会 |)

しかし、珍しい商品を置くだけでは売れない。

そこで面白いのが「伝え方」である。

手書きPOP、SNS、試食イベント、ライブ配信。

一般的なスーパーのチラシなら、

「○○円!」

と価格を大きく載せるところを、マスヤは売りたい商品を絞り、その商品の魅力を伝える。

つまり、

商品を仕入れているだけではない。
商品の「欲しくなる理由」まで編集して売っている。

ここが強い。

「誰から買うか」まで商品にしてしまう

さらに興味深いのが、人そのものを店の魅力にしていることだ。

商品知識を持ったスタッフが勧める。

仕入先が店頭で試食イベントをする。

SNSでは店の中の様子まで発信する。

商品だけではなく、

「この人が勧めるなら食べてみたい」

という関係を作る。

大手スーパーが価格や品揃えの「規模」で戦うなら、地域スーパーは人と商品の距離の近さで戦える。

マスヤがSNSを使ったファンづくりに力を入れてきたことも、この戦い方とつながっている。 (新潟県信用保証協会 |)

栗林社長自身も、今後の店づくりについて「地域コミュニティ×ファンコミュニティ」「食体験×出会い」を掲げている。 (新潟ニュース NST)

強みが、そのまま弱みにもなる

一方で、企業分析として見ると気になることもある。

この会社の強さのかなりの部分が、社長自身にあることだ。

商品の目利き。

仕入先との関係。

POP。

SNS。

企画。

そして、人を巻き込む力。

これは圧倒的な強みだが、会社がさらに成長すると、社長一人では回らなくなる。

だから次に必要なのは、

「社長のセンス」を「会社の能力」に変えること

ではないかと思う。

例えば、なぜその商品を仕入れたのか。

どんな顧客に売れると思ったのか。

どんなPOPを書いたのか。

実際に誰が買ったのか。

売上や粗利はどうだったのか。

こうした情報を残していけば、

商品選定 → 売り方 → 顧客反応 → 売上・利益

というマスヤ独自の「売れるパターン」が見えてくる。

AIを使うなら、こういうところだと思う。

社長の代わりに商品を選ばせるのではない。

社長がなぜそう判断したのかを蓄積し、次の人が学べるようにする。

次は「商品」ではなく「生活シーン」から考える

さらに先には、面白い可能性がある。

ECやライブコマースを使えば、

「誰が、何を買ったか」

だけでなく、

「なぜ買ったのか」
「いつ食べたのか」
「誰と食べたのか」
「どう食べたらおいしかったのか」

といった情報も集められる。

すると、

「40代女性にはこの商品」

ではなく、

「週末に家族で少し贅沢したい人には、この組み合わせ」

のような提案ができる。

商品起点から、顧客の生活シーン起点へ。

マスヤらしい商品選びと、顧客理解がつながれば、さらに面白い店になると思う。

小さなスーパーは、大手の真似をしなくていい

マスヤを見ていて感じるのは、小さな会社が大手と同じ土俵で戦う必要はないということだ。

価格では勝てない。

品揃えの数でも勝てない。

だから、

商品を選ぶ。
魅力を伝える。
人を好きになってもらう。
ファンになってもらう。

その積み重ねで、「ここで買いたい」を作る。

そして次の課題は、その強さを一人のカリスマに依存させないこと。

社長の魅力で成長した会社が、その魅力を組織の力に変えられるか。

マスヤの次の成長を見る上で、私はそこに注目したい。

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