前回の「KPIツリー作成のスキルアップ⑨」では、
先行KPIから行動KPIをどう落とすか、という設計の話をしました。
今回はその続きです。
行動KPIが「作れたのに、なぜか使われなくなる」
多くの現場でよく見る失敗パターンを整理します。
行動KPIは「作るより、維持する方が難しい」
現場でよくある流れは、だいたいこうです。
- 行動KPIは作れた
- 最初は回った
- でも、いつの間にか形だけ残った
小集団活動や改善活動が「儀式化」する瞬間です。
これは、現場のやる気や能力の問題ではありません。
構造的にズレ始める「瞬間」があります。
行動KPIがズレ始める「ある瞬間」
- 月次報告が「件数一覧」だけになった瞬間
- 先行KPIが未達でも「件数はやってます」で会議が終わった瞬間
- 行動KPIの見直しが一度も議題に上がらなくなった瞬間
この時点で、行動KPIは危険信号です。
現場では次のどちらかが起きています。
① 行動KPIそのものが「目的化」している
状態
- 件数は達成している
- 報告もされている
- しかし、先行KPIが動かない
典型例
- 提案回数
- 打合せ回数
- 確認件数
なぜダメなのか
行動KPIは本来、
「判断を変えるための行動」であるはずです。
それがいつの間にか、
「やったかどうかをチェックする数字」に変質します。
この瞬間、行動KPIは
「先行KPIを動かす道具」ではなく、
「行動を増やすための管理表」になります。
見分け方
- 「なぜこの行動をしているのか?」に答えられない
- 先行KPIとの関係を誰も説明できない
問題の本質
- 先行KPIが判断指標として使われていない
- 先行KPIを見て行動を変える会議・判断が存在しない
対策:行動を「反応が見える形」に変える
例えば「提案回数」だけを置くと、
やったことは分かっても、効いたかは分かりません。
そこで、次のように組み替えます。
- 提案回数 + 提案後に見積依頼を受けた回数
こうすると、
提案した結果、相手の反応が変わったかを見られます。
さらに踏み込むなら、
- 「受注可能性が高い条件を満たす顧客に対して、
本案を提示した提案回数」
運用ルールも重要です。
- 先行KPIが2〜3サイクル動かなければ仮説棄却
- 件数達成=評価ではなく、先行KPIへの影響を評価
行動KPIは長く使う前提の指標ではありません。
先行KPIが動かなければ、役目を終えただけです。
② 行動KPIが「詰められる指標」になっている
状態
- 未達=怒られる
- 達成=評価される
なぜダメか
この瞬間から、現場は仮説検証をやめ、
安全な行動しかしなくなります。
- 仮説検証ができない
- やりやすい行動だけ増える
- 本質的な判断行動が隠れる
結果として、
- 数字はきれい
- 中身は空洞
という構図が生まれます。
やってはいけない運用
- 未達 → なぜできていない?
- 達成 → よくやった
正しい運用
- 未達 → 何が起きた?
- 達成 → 何が起きた?
聞くべきは結果ではなく、変化です。
先行KPI、顧客反応、判断前提、想定外。
件数一覧を眺める会議では、
行動KPIは必ず死にます。
まとめ|行動KPIは「疑われ続ける仮説」
行動KPIは、守るものでも評価のためのものでもありません。
先行KPIを動かすために、
常に疑われ、捨てられる前提の仮説 です。
- 動かなければ捨てる
- 合わなければ作り直す
KPIツリーが生きるかどうかは、設計より運用。
「疑い続けられているか」――ここが分岐点です。


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