KPIツリー作成のスキルアップ⑩|行動KPIが形骸化する瞬間

DX・IT

前回の「KPIツリー作成のスキルアップ⑨」では、
先行KPIから行動KPIをどう落とすか、という設計の話をしました。

今回はその続きです。
行動KPIが「作れたのに、なぜか使われなくなる」
多くの現場でよく見る失敗パターンを整理します。

行動KPIは「作るより、維持する方が難しい」

現場でよくある流れは、だいたいこうです。

  • 行動KPIは作れた
  • 最初は回った
  • でも、いつの間にか形だけ残った

小集団活動や改善活動が「儀式化」する瞬間です。
これは、現場のやる気や能力の問題ではありません。

構造的にズレ始める「瞬間」があります。

行動KPIがズレ始める「ある瞬間」

  • 月次報告が「件数一覧」だけになった瞬間
  • 先行KPIが未達でも「件数はやってます」で会議が終わった瞬間
  • 行動KPIの見直しが一度も議題に上がらなくなった瞬間

この時点で、行動KPIは危険信号です。
現場では次のどちらかが起きています。

① 行動KPIそのものが「目的化」している

状態

  • 件数は達成している
  • 報告もされている
  • しかし、先行KPIが動かない

典型例

  • 提案回数
  • 打合せ回数
  • 確認件数

なぜダメなのか

行動KPIは本来、
「判断を変えるための行動」であるはずです。

それがいつの間にか、
「やったかどうかをチェックする数字」に変質します。

この瞬間、行動KPIは
「先行KPIを動かす道具」ではなく、
「行動を増やすための管理表」になります。

見分け方

  • 「なぜこの行動をしているのか?」に答えられない
  • 先行KPIとの関係を誰も説明できない

問題の本質

  • 先行KPIが判断指標として使われていない
  • 先行KPIを見て行動を変える会議・判断が存在しない

対策:行動を「反応が見える形」に変える

例えば「提案回数」だけを置くと、
やったことは分かっても、効いたかは分かりません。

そこで、次のように組み替えます。

  • 提案回数 + 提案後に見積依頼を受けた回数

こうすると、
提案した結果、相手の反応が変わったかを見られます。

さらに踏み込むなら、

  • 「受注可能性が高い条件を満たす顧客に対して、
    本案を提示した提案回数」

運用ルールも重要です。

  • 先行KPIが2〜3サイクル動かなければ仮説棄却
  • 件数達成=評価ではなく、先行KPIへの影響を評価

行動KPIは長く使う前提の指標ではありません。
先行KPIが動かなければ、役目を終えただけです。

② 行動KPIが「詰められる指標」になっている

状態

  • 未達=怒られる
  • 達成=評価される

なぜダメか

この瞬間から、現場は仮説検証をやめ、
安全な行動しかしなくなります。

  • 仮説検証ができない
  • やりやすい行動だけ増える
  • 本質的な判断行動が隠れる

結果として、

  • 数字はきれい
  • 中身は空洞

という構図が生まれます。

やってはいけない運用

  • 未達 → なぜできていない?
  • 達成 → よくやった

正しい運用

  • 未達 → 何が起きた?
  • 達成 → 何が起きた?

聞くべきは結果ではなく、変化です。
先行KPI、顧客反応、判断前提、想定外。

件数一覧を眺める会議では、
行動KPIは必ず死にます。

まとめ|行動KPIは「疑われ続ける仮説」

行動KPIは、守るものでも評価のためのものでもありません。

先行KPIを動かすために、
常に疑われ、捨てられる前提の仮説
です。

  • 動かなければ捨てる
  • 合わなければ作り直す

KPIツリーが生きるかどうかは、設計より運用。
「疑い続けられているか」――ここが分岐点です。

コメント