今日は、KPIツリーの作り方そのものではなく、
「それを回せる組織・人の条件」を整理します。
正直、データドリブン経営がうまく回っていない会社の多くは、
KPIの設計以前に「運用できる前提条件」が揃っていません。
それなのに、
- KPIを作れば何とかなる
- ダッシュボードを入れれば動く
- 研修をすれば使えるようになる
と考えてしまう。
これが「絵に描いた餅」になる最大の原因だと感じています。
意思決定する人のマインドとリテラシーがすべてを決める
ここで言う「意思決定」とは、
分析結果を見て、次に何を変えるかを決めることです。
分析することでも、レポートを作ることでもありません。
「次の一手を決める」ことが本体です。
① 経営層に求められる条件
まず、ここが揃っていなければ始まりません。
経営者が理解しているべきこと
- 「経験や勘だけでは限界がある」と自覚している
- データ活用を「IT施策」ではなく「経営判断の補助輪」と理解している
重要なのは、データで「正解を出す」ことを期待していないことです。
経営課題が言語化されている(仮説でよい)
完璧である必要はありません。例えば、
- 儲かっていない顧客が多い気がする
- 現場が忙しい割に利益が残らない
KPIは、課題が曖昧な会社を救う魔法ではありません。
不完全な数字を許容できる
- 絶対値は怪しい
- でも、前年差・増減・傾向は分かる
精度70%でも、方向性の判断には使えます。
ここを許容できないと、KPIは一生「見送られた資料」になります。
現場推進者に「権限」と「後ろ盾」を与えられる
「任せる」と「丸投げ」は違います。
意思決定の責任を個人に押し付けない覚悟が必要です。
② 管理層に求められる条件
管理層の役割は、数字で人を管理することではありません。
KPIを「管理のため」ではなく「行動を変えるため」と理解している
- KPIは詰める道具ではない
- 次の打ち手を決めるための材料
これを誤ると、会議はすぐに吊し上げの場になります。
判断を「行動に翻訳して渡せる」
管理層の重要な役割はここです。
- A / B / C の選択肢を承認する
- 行動KPIを「これで行く」と確定させる
- 次回は、その結果だけをレビューする
判断を現場に丸投げしない。ここが境目です。
③ 現場推進者に求められる条件(最重要)
ここが一番シビアです。
不完全な数字でも、次の一手を決められる
- 完璧な分析を待たない
- 小さく試すことを恐れない
現場の反発を引き受ける覚悟と調整力
KPIは、必ず誰かの仕事を変えます。
その摩擦を受け止める役割が必要です。
KPIを「現場の作業単位」に落とせる
例えば、KPI:便単価改善 なら、
- 便単価が下位10%の車両を毎月抽出
- 対象車両は「価格交渉/集荷頻度見直し/車両サイズ変更」のどれかを必ず検討
ここまで落として初めてKPIは動きます。
ワンオペではない
- 経営層・管理層の後ろ盾がある
- 相談できる状態にある
- 時間が確保されている
これがないと、現場推進者は燃え尽きます。
④ 業務・組織の最低条件
- 数字を見る定例会議が存在している
- 行動の振り返り → 次の行動決定、が回っている
- 業務がある程度、仕組み化されている
これがない会社では、KPIは「見られるが、使われない」状態になりやすいです。
⑤ ①〜④が揃っていない会社で、どう始めるか
ここが一番誤解されやすいところです。
研修から始めない
リーダー教育やデータリテラシー研修を最初にやりがちですが、多くの場合うまくいきません。
最低限の理解は必要でも、スキルは後から身につきます。
先に必要なのは「小さな成功体験」です。
管理KPIを「1テーマ」に絞る
KPIを減らすのではなく、意思決定を1つに限定します。
先行KPIと行動KPIの間に「意思決定」を置く
ここが最大のポイント。
- データで先行KPIの事実を出す
- A / B / C で意思決定を固定する
- その場で行動KPIを仮決めする
- 次回、その結果だけを見る
重要なのは、③までをその場で決めること。
そして、④で必ず振り返ることです。
例:便単価が悪いケース
① 事実
X車両、Y車両の便単価が極端に低い
② 意思決定(A/B/C)
- A:価格改定交渉
- B:対応範囲限定
- C:現状維持
③ 行動KPI(A案の場合)
- 対象顧客:赤字車両5台に特定
- 交渉期限:◯月中に交渉実施
- 判断期限:◯ヶ月(ダメならBへ)
まとめ
KPIツリーは、作る技術ではなく、回す前提条件で9割が決まります。
- 完璧な数字を求めない
- 意思決定を固定する
- 行動を限定する
- 必ず振り返る
この「最小構成の1回転」を設計できるかどうか。
それが、KPIが「絵に描いた餅」になるか、経営を動かす道具になるかの分かれ目です。

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