KPIツリー作成のスキルアップ⑦ 〜KPIが「絵に描いた餅」にならない組織の条件〜

DX・IT

今日は、KPIツリーの作り方そのものではなく、
「それを回せる組織・人の条件」を整理します。

正直、データドリブン経営がうまく回っていない会社の多くは、
KPIの設計以前に「運用できる前提条件」が揃っていません。

それなのに、

  • KPIを作れば何とかなる
  • ダッシュボードを入れれば動く
  • 研修をすれば使えるようになる

と考えてしまう。
これが「絵に描いた餅」になる最大の原因だと感じています。


意思決定する人のマインドとリテラシーがすべてを決める

ここで言う「意思決定」とは、
分析結果を見て、次に何を変えるかを決めることです。

分析することでも、レポートを作ることでもありません。
「次の一手を決める」ことが本体です。


① 経営層に求められる条件

まず、ここが揃っていなければ始まりません。

経営者が理解しているべきこと

  • 「経験や勘だけでは限界がある」と自覚している
  • データ活用を「IT施策」ではなく「経営判断の補助輪」と理解している

重要なのは、データで「正解を出す」ことを期待していないことです。

経営課題が言語化されている(仮説でよい)

完璧である必要はありません。例えば、

  • 儲かっていない顧客が多い気がする
  • 現場が忙しい割に利益が残らない

KPIは、課題が曖昧な会社を救う魔法ではありません。

不完全な数字を許容できる

  • 絶対値は怪しい
  • でも、前年差・増減・傾向は分かる

精度70%でも、方向性の判断には使えます。
ここを許容できないと、KPIは一生「見送られた資料」になります。

現場推進者に「権限」と「後ろ盾」を与えられる

「任せる」と「丸投げ」は違います。
意思決定の責任を個人に押し付けない覚悟が必要です。


② 管理層に求められる条件

管理層の役割は、数字で人を管理することではありません。

KPIを「管理のため」ではなく「行動を変えるため」と理解している

  • KPIは詰める道具ではない
  • 次の打ち手を決めるための材料

これを誤ると、会議はすぐに吊し上げの場になります。

判断を「行動に翻訳して渡せる」

管理層の重要な役割はここです。

  • A / B / C の選択肢を承認する
  • 行動KPIを「これで行く」と確定させる
  • 次回は、その結果だけをレビューする

判断を現場に丸投げしない。ここが境目です。


③ 現場推進者に求められる条件(最重要)

ここが一番シビアです。

不完全な数字でも、次の一手を決められる

  • 完璧な分析を待たない
  • 小さく試すことを恐れない

現場の反発を引き受ける覚悟と調整力

KPIは、必ず誰かの仕事を変えます。
その摩擦を受け止める役割が必要です。

KPIを「現場の作業単位」に落とせる

例えば、KPI:便単価改善 なら、

  • 便単価が下位10%の車両を毎月抽出
  • 対象車両は「価格交渉/集荷頻度見直し/車両サイズ変更」のどれかを必ず検討

ここまで落として初めてKPIは動きます。

ワンオペではない

  • 経営層・管理層の後ろ盾がある
  • 相談できる状態にある
  • 時間が確保されている

これがないと、現場推進者は燃え尽きます。


④ 業務・組織の最低条件

  • 数字を見る定例会議が存在している
  • 行動の振り返り → 次の行動決定、が回っている
  • 業務がある程度、仕組み化されている

これがない会社では、KPIは「見られるが、使われない」状態になりやすいです。


⑤ ①〜④が揃っていない会社で、どう始めるか

ここが一番誤解されやすいところです。

研修から始めない

リーダー教育やデータリテラシー研修を最初にやりがちですが、多くの場合うまくいきません。
最低限の理解は必要でも、スキルは後から身につきます。

先に必要なのは「小さな成功体験」です。

管理KPIを「1テーマ」に絞る

KPIを減らすのではなく、意思決定を1つに限定します。

先行KPIと行動KPIの間に「意思決定」を置く

ここが最大のポイント。

  1. データで先行KPIの事実を出す
  2. A / B / C で意思決定を固定する
  3. その場で行動KPIを仮決めする
  4. 次回、その結果だけを見る

重要なのは、③までをその場で決めること。
そして、④で必ず振り返ることです。

例:便単価が悪いケース

① 事実
X車両、Y車両の便単価が極端に低い

② 意思決定(A/B/C)

  • A:価格改定交渉
  • B:対応範囲限定
  • C:現状維持

③ 行動KPI(A案の場合)

  • 対象顧客:赤字車両5台に特定
  • 交渉期限:◯月中に交渉実施
  • 判断期限:◯ヶ月(ダメならBへ)

まとめ

KPIツリーは、作る技術ではなく、回す前提条件で9割が決まります。

  • 完璧な数字を求めない
  • 意思決定を固定する
  • 行動を限定する
  • 必ず振り返る

この「最小構成の1回転」を設計できるかどうか。
それが、KPIが「絵に描いた餅」になるか、経営を動かす道具になるかの分かれ目です。

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