地方の中山間地域に立地する企業は不利なのだろうか。
人口は少ない。
人材確保も難しい。
市場も遠い。
多くの企業がそう考えるかもしれない。
しかし、見方を変えれば、中山間地域だからこそ見える課題がある。
そして、その課題を解決できれば、全国市場で戦える商品になる可能性がある。
そのことを証明している会社がある。
岡山県の英田エンジニアリングである。
下請けから自社ブランドメーカーへ
英田エンジニアリングは1974年創業の産業機械メーカーである。
もともとは回転式金型を製造する会社だった。
しかし現在では、自社ブランド製品を数多く展開している。
代表的なのが駐車場のフラップ板である。
国内シェアは40%を超え、トップシェアを誇る。
下請けやOEMに依存せず、自社ブランドで市場を切り拓いてきた点が特徴だ。
地域課題が新商品を生む
英田エンジニアリングの最大の特徴は、
地域課題を商品開発の起点にしていること
である。
同社は中山間地域に立地している。
そのため、
「高齢者が車に乗れなくなると健康寿命が短くなる」
という地域特有の課題を熟知していた。
そこで開発したのが、
アクセルの踏み間違いを防ぐ安全装置だった。
地域の困りごとを解決するために開発した製品が、多くの支持を集めたのである。
地方にいるから不利なのではない。
地方だからこそ見える課題がある。
英田エンジニアリングは、それを強みに変えている。
リーマンショックが組織を変えた
現在の英田エンジニアリングを語る上で、リーマンショックは避けて通れない。
社長就任時、売上は3分の2、利益は3分の1まで落ち込んだ。
生き残るため、製造部門の責任者まで営業に出た。
リストラも行った。
しかし、結果として組織から縦割り意識がなくなり、部門間の壁が低くなった。
危機が、組織改革を進めたのである。
人が集まる地方企業
地方企業にとって、人材確保は大きな課題である。
しかし英田エンジニアリングには、全国から人材が集まる。
理由の一つが、従業員を大切にする経営姿勢だ。
社員食堂。
スポーツジム。
健康経営。
60歳以降も給与が下がらない制度。
定年のない会社を目指すという理念。
同社は、
「従業員の幸せを追求する」
ことを経営の中心に据えている。
その結果、若手人材も集まるようになった。
データは宝の山
同社はDXにも積極的だ。
例えば、駐車場フラップ板の利用履歴データ。
これは単なる運用データではない。
商店街や自治体にとっては、
- 渋滞対策
- 混雑予測
- 人流分析
に活用できる可能性がある。
さらに、クレームデータもAIで分析し、商品開発へつなげている。
つまり、
モノを売る会社から、データを活用する会社へ進化しつつある
のである。
英田エンジニアリングの勝ち筋
私は、英田エンジニアリングの勝ち筋は次の式で表せると考えている。
地域課題起点の商品開発
×
企画・試作段階からの参画
×
自社ブランド
×
データ活用
×
従業員満足
特に、
「地域課題を起点に新市場を作る力」
こそが、この会社最大の強みではないだろうか。
今後の成長戦略を考える
短期的には、製品別採算性を可視化し、高収益製品への集中を進めるべきだろう。
また、IoTによる稼働データを活用し、予防保全型のメンテナンスサービスを構築できれば、ストック収益化も期待できる。
中期的には、中山間地域特有の課題を起点とした新商品開発をさらに進めたい。
例えば、
- 車椅子関連
- 介護機器
- 高齢者移動支援
などは有望市場だろう。
長期的には、
英田エンジニアリングは単なる機械メーカーではなく、
地域課題解決プラットフォーム
へ進化する可能性がある。
地域の困りごとを集約し、大学、自治体、企業と連携しながら、新たな製品やサービスを生み出す。
そんな姿が見えてくる。
まとめ
英田エンジニアリングの事例から学べることは多い。
その中でも最も重要なのは、
「地域の弱みを、競争優位に変える」
という視点ではないだろうか。
地方にあることは弱みではない。
地域課題を深く理解していることこそ、最大の強みになり得るのである。

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