「好きなことを仕事にしたい」
そう考える人は多い。
でも、実際に事業として成立させるのは難しい。
特に最初にぶつかるのが、
資金繰り
である。
今回は、その壁をどう乗り越えたのか。
そして、今後どのような課題に向き合う必要があるのか。
ある登山レンタル会社を題材に、分析してみた。
登山をもっと身近に
この会社は、登山用品のレンタル・ツアー会社。
2010年設立。
従業員80人。
現在は、売上20億円規模まで成長している。
富士登山者の4人に1人が、この会社のレンタルを利用している計算になる。
かなり大きい。
在庫8000以上。国内最大級
この会社の特徴は、在庫量である。
登山ザックだけでも、8000以上。
しかも、単に貸すだけではない。
- 登山靴の汚れ取り
- 臭い除去
- 洗浄
- 乾燥
独自のメンテナンス技術を持っている。
ここはかなり重要だ。
好きから始まった会社
社長自身が、世界7大陸最高峰を制覇。
しかも、世界最年少記録保持者。
つまり、根本にあるのは、
登山が好き
という感情である。
さらに、
「登山をもっと安全に、もっと身近にしたい」
という強い信念がある。
ここが会社の軸になっている。
ただ、最初はかなり危なかった
この会社は、最初から順調だったわけではない。
むしろ、かなり危険だった。
なぜか。
レンタル事業は、最初に大量のキャッシュが出ていくからだ。
レンタル事業の怖さ
レンタルは、在庫産業である。
つまり、
- 先に仕入れる
- お金が出ていく
- 回収は後になる
- 回転率が上がるまでは苦しい
この会社も、銀行から口座凍結を受けた経験がある。
かなりギリギリだった。
需要予測も外れる
さらに面白いのがここ。
社長は、
「300人くらい来れば良い」
と思っていた。
でも、実際は4000人来た。
これはこれで問題だった。
今度は、貸し出す服が足りない。
顧客に謝罪する事態になる。
つまり、
売れても苦しい。
これがレンタル事業の怖さだ。
ここでツアー事業を始める
この会社が面白いのはここから。
普通なら、
「レンタルをもっと増やそう」
となる。
でも、この会社は違った。
ツアー事業を始めた。
ツアーは利益率が低い。でも…
一見すると、ツアー事業は儲からない。
利益率は低い。
でも、強みがあった。
先にお金が入る。
ここが大きい。
レンタルとツアーが補完関係になる
整理するとこう。
レンタル
- 利益率は高い
- でも、先にお金が出る
ツアー
- 利益率は低い
- でも、先にお金が入る
つまり、お互いの弱点を補完している。
ここがかなり上手い。
好きなことを事業にする難しさ
好きなことを仕事にすると、つい理想を追いたくなる。
でも、会社はキャッシュが尽きたら終わる。
つまり、
理念だけでは続かない。
この会社は、理念を持ちながら、資金繰りの構造を組み替えた。
ここが強い。
社長は「客数」が大事と言う
この社長は、かなり特徴的だ。
普通なら、
「単価を上げよう」
となる。
でも社長は違う。
売上は、
単価 × 客数
で決まる。
その中で、社長は
客数の方が大事
と考えている。
つまり、登山人口を増やすことを重視している。
市場そのものを広げている
ここが重要だ。
単に自社の売上を取るのではない。
登山を始める人を増やす。
その結果、レンタル需要も増える。
つまり、
市場そのものを育てている。
これはかなり強い。
口コミで広がる
今では、年間5万人がツアーに申し込む。
しかも、営業ではなく口コミ。
つまり、
- 楽しかった
- 安全だった
- また行きたい
これが自然に広がっている。
ここに、社長の思想が乗っている。
面白いのは交通に目をつけたこと
登山事業は、
- 交通
- ガイド
- 山小屋
で構成される。
この中で、ガイドと山小屋は工夫しにくい。
でも、交通は工夫できる。
この会社は、そこに目をつけた。
バス会社を買収
なんと、バス会社を買収している。
これはかなり面白い。
つまり、
登山へ行く手段そのものを握りに行っている。
これは、単なるレンタル会社ではない。
登山体験全体を設計し始めている。
この会社の強み
この会社の強みはかなり明確だ。
- 国内最大級の在庫量
- 独自メンテナンス技術
- 社長自身の登山ノウハウ
- ツアーからレンタルへの導線
- 口コミで広がるブランド力
つまり、
登山初心者が安心して始められる
ここに強い。
ただし、かなり危険な構造もある
一方で、危険な部分もある。
かなり属人的であること。
人気ツアー。
メンテナンス技術。
登山ノウハウ。
これらが、特定の人に依存している。
つまり、
その人がいなくなると壊れる。
需要が増えすぎても危険
さらに、需要が増えすぎるリスクもある。
- ガイド不足
- メンテナンス負荷
- 配送負荷
- 在庫不足
つまり、供給制約が強い。
ここを崩すと、一気に品質が落ちる。
今後必要なのは再現性
だから、今後重要なのは、
再現性
だと思う。
例えば、
- ツアープロセスの可視化
- 若手育成
- メンテナンス工程の標準化
- 認定パートナー制度
こういうもの。
全部を内製は限界が来る
ここも重要だ。
全部を自社でやろうとすると、必ず限界が来る。
だから、
どこを自社で持ち、どこを外部化するか。
ここを整理する必要がある。
法人向けは理にかなっている
個人的に良いと思ったのは、法人向け展開。
特に、
- 接客業
- 医療
- 介護
- ストレスが高い職場
ここへの福利厚生型サービス。
これはかなり相性が良い。
個人と法人の両輪
個人だけだと、需要変動が激しい。
でも、法人ストックがあると安定する。
つまり、
個人で広げる。法人で安定させる。
この構造はかなり強い。
この会社が面白い理由
この会社が面白いのは、
好きから始まった事業なのに、ちゃんと構造を作っていること。
理念だけではなく、収支構造を組み替えている。
ここが強い。
最後に
好きなことを事業にすると、最初は苦しい。
理想だけでは回らない。
でも、この会社のように、
- 利益率の高い事業
- キャッシュが先に入る事業
- 導線になる事業
を組み合わせることで、会社は強くなる。
ただし、次の壁は必ず来る。
それが、
属人化
と、
供給制約
である。
ここをどう乗り越えるか。
そこが、次の成長フェーズなのだと思う。

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