ここまで、いくつもの企業事例をもとに、生成AIに戦略案を採点してもらってきた。
そのたびに思う。
厳しい。
だが、だいたい当たっている。
そして今回、19社分のやり取りを通して、ようやく見えてきたことがある。
自分の戦略案が弱くなるときは、毎回ちがうミスをしているようでいて、実はほぼ同じところで外している。
つまり、問題は個別の知識ではない。戦略の組み立て方そのものにある。
今日は、その共通原因を5つに整理してみる。
1.「きれいな言葉」でまとめると、戦略は弱くなる
一番多かったのは、これだ。
言葉が一般的すぎる。
たとえば、
- 地域ニーズにマッチ
- 健康支援
- 高品質
- 体験価値
- 標準化
どれも間違っていない。だが、弱い。
なぜなら、それでは「なぜこの会社が選ばれるのか」が見えないからだ。
戦略で必要なのは、正しさではない。選ばれる理由だ。
健康支援なら、何か。
- 腸活か
- 低糖質か
- 高齢者食か
標準化なら、何か。
- コース構成比率の固定か
- 接客手順の統一か
- 段取りの動画化か
ここまで具体化しないと、戦略は一気に「誰でも言える話」になる。
さらに最近よく思うのは、多くの場合「強み」と思っていたものが、実は強みそのものではないことだ。
たとえば、
- 歴史がある
- 商品ラインナップが多い
- 高品質である
これらは、強みから生まれた結果であることが多い。
本当に見るべきは、その裏側にある模倣困難な構造だ。
- 立地
- 特許
- 独自の技術ネットワーク
- 供給体制
- 用途設計力
- 社長の発信力
このあたりまで掘って初めて、戦略の芯が出てくる。
2.「何を売るか」は考えるが、「どう儲けるか」が弱い
これもかなり大きい。
商品やサービスの話は書ける。だが、「その結果、どうやって利益が残るのか」が甘い。
ここを外すと、
- 売れているのに儲からない
- 忙しいのに残らない
という、よくある状態になる。
つまり、商品発想はあるが、構造発想が弱い。
単価や取引条件だけでは足りない。
利益は、点と線だけでなく、面で見ないといけない。
- 帰り便の有無
- 拠点配置
- 在庫回転
- ロット適合
- 供給体制
- 固定費回収の仕組み
こういう「構造」が利益を決める。
たとえば、
- 運送なら、ルート再設計
- 製造なら、材料在庫による即日対応
- 機械や設備なら、消耗品交換や定期保守
つまり、本体売り切りではなく、継続的に利益が出る構造を作れるかどうかだ。
そしてもうひとつ大事なのは、戦略とは「広く売ること」ではなく「選ぶこと」だということ。
- どの顧客を取るのか
- どの案件をやるのか
- どの仕事を捨てるのか
この「選ぶ意思」が入らないと、戦略はただの願望になる。
3.順番を飛ばすと、戦略はそれっぽく見えて崩れる
これもかなり自分のクセだ。
土台ができていないのに、次の話を書いてしまう。
たとえば、
- 標準化ができていないのにサブスク
- 利益構造が見えていないのに海外展開
- 供給が安定していないのにブランド輸出
こういう飛び方をすると、戦略は一気に危うくなる。
本来はこうだ。
標準化
↓
可視化
↓
利益構造の確立
↓
定期化・サブスク化
↓
展開
この順番が大事だ。
もちろん、例外はある。すでに市場があるなら、先に取りにいく判断もある。
だが、その場合でも「次の一手の前提条件が整っているか」は必ず見ないといけない。
特にサブスクは危ない。
- 定期交換需要があるのか
- 修理やケアの仕組みがあるのか
- 品質と供給が安定しているのか
- データが蓄積するのか
これがないまま始めると、継続収益ではなく継続トラブルになる。
さらに、ターゲットも広げすぎないこと。
- 3業界同時展開
- 最初から全国展開
こういう話は、だいたい弱い。
まずは1業界で勝つ。一点突破して、そこで勝ち筋を作る。この順番が必要だ。
4.KPIを作っても、「動かす数字」を外していることがある
これもかなり重要だ。
私はときどき、結果指標をそのままレバーだと思ってしまう。
たとえば、
- 売上構成比
- 海外売上比率
- 自社ブランド売上比率
- プロセス定着
これらは大事だ。だが、現場で直接動かせる数字かと言われると、微妙なものも多い。
結果に近い数字をKPIに置くと、会議で眺めるだけになる。
本当に必要なのは、現場が具体的に動かせる数字まで落とすことだ。
たとえば、
- フォローメール実施率
- 会員登録誘導率
- 用途別SKU比率
- 比較表提示率
- 提案後3日以内接触率
- 段取り時間比率
- 機械停止時間
こういう数字なら、現場が動く。
つまりKPIは「観察指標」ではなく、「行動に変換できる指標」でないと意味がない。
特に製造やサービスでは、労働生産性や1人当たり付加価値の視点が重要になる。
売上を見るだけでは弱い。どれだけ効率よく付加価値を生めているか。ここまで見ないと、本当のレバーは見えてこない。
5.手段を戦略だと思った瞬間、ズレる
これも相当刺さる。
データドリブン経営をする。AIを活用する。ITで効率化する。
どれも重要だ。だが、それ自体は戦略ではない。
それは手段だ。
戦略とは、何を変えて、どこで利益を取りにいくのかだ。
データドリブン経営は理念。AIはツール。ITは裏側。
顧客が買うのは、そこではない。
顧客が買うのは、
- 短納期
- 品質保証
- 再現性
- 安心感
- 提案の精度
こうしたベネフィットだ。
だから順番は逆にしてはいけない。
まず、目的を決める。
- 時間当たり利益を最大化したいのか
- 高粗利顧客に集中したいのか
- 低収益案件を捨てたいのか
その後に、AIやITを置く。
ここを逆にすると、
- AIを使いたいから使う
- データを見たいから見る
という危ない状態になる。
総括
今回、19社分を通してはっきりしたのは、自分の戦略が弱くなる原因は、能力不足というより「思考の省略」にあるということだ。
たとえば、
- 言葉を丸める
- 一般論で止める
- 利益構造を詰めない
- 前提条件を飛ばす
- 結果指標をレバーだと思う
- 手段を目的化する
このクセがあると、戦略はそれっぽいが弱くなる。
だからこれからは、戦略を書くたびに、こう問い直したい。
- それは他社でも言えないか。
- その会社だけの模倣困難な構造は何か。
- 何を売るかではなく、どう儲けるのか。
- その順番で本当に成立するのか。
- 現場が動かせる数字まで落ちているか。
- それは手段ではなく、利益構造につながっているか。
戦略は、きれいな言葉を並べることではない。
勝つ理由を、儲かる構造と、動かせる数字に落とすことだ。
生成AIに突かれるのは痛い。だが、その痛みはかなりありがたい。
少なくとも私は、まだまだ戦略を深くできる余地があると、よく分かった。

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