埼玉・深谷の食品メーカー。
創業100年近い老舗。
だが、かつての評価はこうだった。
「安売りの富岡」
OEM依存の末路
もともとの構造はシンプルだった。
- OEM主体(売上の7割)
- コンビニ向けおでん材料
- 価格は叩かれる
つまり、売上はあるが、利益は残らない典型的な下請け構造だった。
さらに追い打ちをかける。
- 社長交代による不安
- 風評被害
- 売上20%減
- 仕入先から取引停止
ここまでくると、普通は終わる。
変えたのは「商品」ではない
この会社がやったことは何か。
単なる商品開発ではない。
構造を変えた。
① OEM → 自社ブランド
まずここだ。
- 他社商品 → 自社商品
- 価格主導権なし → 価格主導権あり
特に大きかったのが、
- 深谷ネギ入りがんもどき
- 釜炊きいなり
この2つ。
ただし、重要なのは「商品」ではない。
“誰のための商品か”を変えたことだ。
② 売る相手を変えた
以前はこうだった。
- コンビニ
- 価格重視
- 大量供給
今はどうか。
- 直営店(いなり寿司専門店)
- 法人直販
- ファン顧客
つまり、顧客構造を変えたのである。
ここが本質だ。
③ 現場を変えた
さらに重要なのがここだ。
言われたことをやる組織
↓
自ら改善する組織
年間100件の改善提案。
これが何を意味するか。
原価は現場で下がる会社になったということだ。
なぜ勝てたのか
この会社の勝ち筋は明確だ。
- 面倒で複雑な工程
- 他社がやりたがらない領域
ここにあえて踏み込んだ。
例えば、釜炊き製法。
- 味は良い
- だが、皮が破ける
- 品質が安定しない
普通はやらない。
しかし、この会社はやった。
専用カゴを開発し、その難しさを乗り越えた。
結果、年間1億円の商品に化けた。
強みは「3つの掛け算」
この会社の強みはシンプルに言うとこれだ。
- ① 独自商品
- ② 自立型組織
- ③ ファンとの接点(直営店)
この3つが回っている。
特に重要なのは③だ。
直営店があることで、
- 顧客の声が直接入る
- 商品に反映できる
- ファンが育つ
これが、OEM企業との決定的な違いになる。
課題は“製造業の宿命”
ただし、課題も明確だ。
① 生産の複雑さ
- 工程が多い
- ロスが出やすい
- 歩留まり管理が難しい
② コモディティ化
- 価格競争
- 差別化の維持が難しい
つまり、構造は良くなったが、油断するとすぐ戻るということだ。
戦略の方向性は正しい
今回の戦略は筋がいい。
短期
- 採算の可視化
- 生産性改善
中期
- 高付加価値市場(ホテル・介護)
長期
- 定期化(サブスク)
流れとしては問題ない。
結論
この会社の変化を一言で言うとこうだ。
「安売りの会社」から「選ばれる会社」へ
その違いは何か。
商品ではない。価格でもない。
構造だ。
- 誰に売るか
- どう作るか
- どう改善するか
これが変わった。
下請けは悪ではない。だが、依存は危険だ。
この会社はそこから抜け出した。
だから強い。そして、おそらくこれからも伸びる会社だ。

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