今回取り上げるのは、日本メディックという会社。
健康機器メーカーで、従業員はわずか5人。主力商品は業務用マッサージチェア「あんま王」だ。
現在は累計20,000台以上を販売し、売上は10億円規模にまで成長している。
しかし、この会社の歴史は順風満帆ではない。むしろ、かなり厳しいスタートだった。
倒産寸前からのスタート
もともとこの会社はメーカーではなかった。
大手マッサージチェアメーカーの代理店として、家庭用マッサージチェアを販売する会社だった。
販売方法はシンプルだ。温浴施設などで、一般客向けに対面販売する。
しかし、時代が変わる。
量販店が台頭し、家庭用マッサージチェア市場は急激に競争が激しくなる。
さらに追い打ちがかかる。
仕入れ先の大手メーカーがファンドに買収されたのだ。
すると、突然こう言われる。
「今まで24回分割だった支払いを、一括で返済してほしい」
結果、会社は8億円の負債を抱えることになる。そして、民事再生。ここから再スタートすることになる。
方向転換のヒント
会社を立て直す中で、社長はあることに気づく。
それは温浴施設での販売経験だった。
実は温浴施設には、家庭用とは違うニーズがある。
- 長時間稼働する
- 壊れにくい
- メンテナンスがしやすい
家庭用マッサージチェアは「気持ちよさ」を重視する。しかし、業務用は違う。
重要なのは、耐久性、メンテナンス性、稼働率なのである。
そこで決断する。
家庭用市場ではなく、業務用に特化する。
パートナー探しの苦労
しかし問題があった。会社は民事再生中。当然、パートナー企業は慎重になる。
多くの企業はこう言った。
「何台発注してくれるのか」
つまり、リスクは取りたくない。一緒に挑戦するという姿勢ではない。
そんな中、偶然出会ったのが医療機器OEMメーカーだった。
その会社は協力的で、「一緒にやろう」と言ってくれた。
こうしてタッグが組まれる。
ただし、マッサージチェアの製造経験はない。
そこで、
中国でベースを製造
↓
日本で最終組立
という体制を作る。
そして完成したのが「あんま王」である。
この会社の事業構造
この会社の面白いところは、事業構造の変化だ。
以前は、
メーカー
↓
代理店(日本メディック)
↓
一般消費者
という中間流通モデルだった。
このモデルの問題はシンプルだ。
利益が薄い。
さらに家庭用マッサージチェアは競争が激しい。差別化も難しい。
そこで、構造を変えた。
メーカー(自社)
↓
法人顧客(温浴・介護)
つまり、業務用特化 × 法人直販というモデルだ。
この構造変更が、会社を救った。
この会社の強み
強みは非常に明確だ。
日本で唯一の業務用に特化したマッサージチェアベンダーというポジションである。
さらに、製品設計にも特徴がある。
- パーツ分解が可能
- 部品交換が容易
- メンテナンスしやすい
つまり、
「壊れにくい」ではなく、「壊れても直しやすい」
設計になっている。
さらに耐久テストを強化し、長時間稼働に耐える設計になっている。これは温浴施設などでは非常に重要なポイントだ。
戦略を考える
この会社の課題はシンプルだ。ブランド力である。
業務用マッサージチェア市場はまだ小さい。だからこそ、「日本で一番の業務用ブランド」を作る必要がある。
短期
まず必要なのは採算の可視化。
顧客別、商品別の採算を管理する。
そして、
- 温浴施設
- 介護施設
この2市場に集中する。
さらに、
- 耐久性の数値化
- 機器設計の特許
などで、差別化を強化する。
中期
次はLTV(顧客生涯価値)の最大化。
ここで重要になるのがデータだ。
利用者データを蓄積する。例えば、
- 筋肉の硬さ
- 疲労度
- 姿勢
こうしたデータを分析し、健康アドバイスを提供する。
さらに施設側には、IoTによる
- 故障予測
- メンテナンス通知
などのサービスを提供する。
長期
最終的には、健康サービス企業へ進化する。
具体的にはサブスク型サービス。
月額モデルで、
- チェア利用分析
- 利用者健康レポート
- 施設運営データ
などを提供する。
つまり、マッサージチェアメーカーではなく、健康データサービス企業になるという構想だ。
最後に
この会社の事例で一番面白いのは、市場選択である。
家庭用市場で戦うと、巨大メーカーとの競争になる。
しかし、業務用市場に特化すると、競争が一気に減る。
これは中小企業の典型的な戦略だ。
大きい市場で戦うのではなく、小さい市場で1位になる。
日本メディックは、その戦略を非常に分かりやすく体現している会社だと思う。

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