前回(⑲)では、「非数値データがある世界」と「ない世界」の違いを整理しました。
今回はその続編として、非数値データが“自由記述しかないとき”に、どうやって意思決定に使える形へ変換するかをまとめます。
現実問題として――
- 営業日報はある
- 活動ログもある
- でも全部“自由記述”
このブログで言っているような「決定因子を意識した構造ログ」は、ほとんどの会社に存在しません。
では、この状況で決定因子は作れるのか?
結論
こちらが“決定因子の枠”を持っていれば、自由記述データからAIで頻出パターン分析は可能です。
ただし、それを恒久運用にするのは不可。段階設計が前提になります。
- 自由入力のみ → AI分類で代替可能
- ただしそれは暫定運用(第1段階)
- 最終的には「人が選ぶ最小構造」に戻すのが最適解
なぜ「決定因子」が必要なのか
典型的な詰まりを、KPIの上下で見ます。
- 主要KPI:粗利率
- 先行KPI:受注率
- 行動KPI:提案件数
提案件数は増えている。
しかし受注率が動かない。
このとき必要なのは、「なぜ効かなかったのか」を語れる材料です。
それが決定因子ログ(判断要因のログ)です。
たとえばAI分類の結果がこうだったとします。
- 決裁プロセス:42%
- 価格:18%
- 提案内容:15%
この瞬間、行動は変わります。
提案件数を増やすのではなく、決裁同席率を行動KPIに設定するという判断が可能になります。
なぜAIの“後付け分類”で代替できるのか
重要なのは入力時の構造化ではなく、判断時の構造化です。
- 後から比較できる
- 頻出パターンが見える
- 次の行動KPIに接続できる
この3つができれば実務上は十分。AIはここを代替できます。
実際のやり方(具体)
前提:
現場は自由入力のみ。課題分類は一切選ばせません。
止めないことが最優先です。
ステップ① 仮の課題分類をこちらが用意する
- 価格
- 提案内容
- 決裁プロセス
- 信頼関係
- タイミング
- 競合
- その他
ステップ② AIへの指示(重要)
以下は営業ログの自由記述です。次の観点で整理してください。
1. 最も当てはまる課題分類(1つだけ)
2. その理由(要約1〜2行)
3. 可変性(高・中・低)
4. 再現性(高・中・低)
注意:
・必ず1つだけ選ぶこと
・推測はせず、記述された事実に基づいて分類すること
ポイントは必ず1つだけ選ばせること。
複数選択を許すと、判断が鈍ります。
ステップ③ AI出力を判断材料に使う
- 課題分類:決裁プロセス
- 理由:決裁者に情報が届かず担当者止まりが多発
- 可変性:低
- 再現性:高
これで、
- 構造説明
- 撤退判断
- 次の仮説設計
が可能になります。
ただし線引きが必要です。
- 傾向把握には十分使える
- 個別案件の最終判断には使わない
- 経営判断は人が行う
このやり方のメリット
① 現場の入力負荷がゼロ
分類を選ばせない。止めない。これが最重要。
② 分類が育つ
現場の言葉から分類が育ちます。
③ 分類を途中で変えられる
過去ログも再分類可能。これはAIならではの強みです。
弱点(だから段階設計)
弱点① 即時集計に弱い
日次の細かい即断には向きません。
弱点② 判断の一貫性は100%ではない
AIの揺れはゼロにはなりません。正式確定は人が行うのが理想です。
最適解は段階型
第1段階(導入期)
- 自由入力のみ
- AIが後付け分類
- あなたが判断に使う
第2段階(安定期)
- 頻出3〜5分類だけ人が選択
- 自由入力は継続
まとめ
KPIツリー思想は、精緻な正解を求める設計ではありません。
意思決定に使える傾向をつくる設計です。
決定因子ログは、傾向の解像度を一段上げるための層。
100%の正解は不要。
60〜70%の傾向が分かれば、行動は十分変えられます。
入力時の正しさより、判断時の再利用性を優先する。
これが、自由記述しかない会社での現実解です。


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