KPIツリー作成のためのスキルアップ⑳|自由記述しかない会社で、どう“決定因子”を作るか

DX・IT

前回(⑲)では、「非数値データがある世界」と「ない世界」の違いを整理しました。
今回はその続編として、非数値データが“自由記述しかないとき”に、どうやって意思決定に使える形へ変換するかをまとめます。

現実問題として――

  • 営業日報はある
  • 活動ログもある
  • でも全部“自由記述”

このブログで言っているような「決定因子を意識した構造ログ」は、ほとんどの会社に存在しません。
では、この状況で決定因子は作れるのか?


結論

こちらが“決定因子の枠”を持っていれば、自由記述データからAIで頻出パターン分析は可能です。
ただし、それを恒久運用にするのは不可。段階設計が前提になります。

  • 自由入力のみ → AI分類で代替可能
  • ただしそれは暫定運用(第1段階)
  • 最終的には「人が選ぶ最小構造」に戻すのが最適解

なぜ「決定因子」が必要なのか

典型的な詰まりを、KPIの上下で見ます。

  • 主要KPI:粗利率
  • 先行KPI:受注率
  • 行動KPI:提案件数

提案件数は増えている。
しかし受注率が動かない。

このとき必要なのは、「なぜ効かなかったのか」を語れる材料です。
それが決定因子ログ(判断要因のログ)です。

たとえばAI分類の結果がこうだったとします。

  • 決裁プロセス:42%
  • 価格:18%
  • 提案内容:15%

この瞬間、行動は変わります。
提案件数を増やすのではなく、決裁同席率を行動KPIに設定するという判断が可能になります。


なぜAIの“後付け分類”で代替できるのか

重要なのは入力時の構造化ではなく、判断時の構造化です。

  • 後から比較できる
  • 頻出パターンが見える
  • 次の行動KPIに接続できる

この3つができれば実務上は十分。AIはここを代替できます。


実際のやり方(具体)

前提:
現場は自由入力のみ。課題分類は一切選ばせません。
止めないことが最優先です。

ステップ① 仮の課題分類をこちらが用意する

  • 価格
  • 提案内容
  • 決裁プロセス
  • 信頼関係
  • タイミング
  • 競合
  • その他

ステップ② AIへの指示(重要)

以下は営業ログの自由記述です。次の観点で整理してください。
1. 最も当てはまる課題分類(1つだけ)
2. その理由(要約1〜2行)
3. 可変性(高・中・低)
4. 再現性(高・中・低)

注意:
・必ず1つだけ選ぶこと
・推測はせず、記述された事実に基づいて分類すること

ポイントは必ず1つだけ選ばせること。
複数選択を許すと、判断が鈍ります。

ステップ③ AI出力を判断材料に使う

  • 課題分類:決裁プロセス
  • 理由:決裁者に情報が届かず担当者止まりが多発
  • 可変性:低
  • 再現性:高

これで、

  • 構造説明
  • 撤退判断
  • 次の仮説設計

が可能になります。

ただし線引きが必要です。

  • 傾向把握には十分使える
  • 個別案件の最終判断には使わない
  • 経営判断は人が行う

このやり方のメリット

① 現場の入力負荷がゼロ

分類を選ばせない。止めない。これが最重要。

② 分類が育つ

現場の言葉から分類が育ちます。

③ 分類を途中で変えられる

過去ログも再分類可能。これはAIならではの強みです。


弱点(だから段階設計)

弱点① 即時集計に弱い

日次の細かい即断には向きません。

弱点② 判断の一貫性は100%ではない

AIの揺れはゼロにはなりません。正式確定は人が行うのが理想です。


最適解は段階型

第1段階(導入期)

  • 自由入力のみ
  • AIが後付け分類
  • あなたが判断に使う

第2段階(安定期)

  • 頻出3〜5分類だけ人が選択
  • 自由入力は継続

まとめ

KPIツリー思想は、精緻な正解を求める設計ではありません。
意思決定に使える傾向をつくる設計です。

決定因子ログは、傾向の解像度を一段上げるための層。
100%の正解は不要。
60〜70%の傾向が分かれば、行動は十分変えられます。

入力時の正しさより、判断時の再利用性を優先する。
これが、自由記述しかない会社での現実解です。

コメント