KPIツリー作成のスキルアップ⑰|先行KPIと行動KPIと“非数値構造データ”の本当の関係

DX・IT

KPIツリーを運用していると、必ずぶつかる壁があります。

行動KPIは動いているのに、先行KPIが動かない。
この状態が続くと、現場は疲れ、会議は「件数報告」になり、KPIツリーは静かに死にます。

でも、ここでやるべきことは「行動を増やす」ではありません。
私の結論はシンプルです。

足りないのは非数値データそのものではない。
非数値データをKPIツリーに接続する“判断要因層”である。


結論:KPIツリーは5層で考える

これまで「主要KPI → 先行KPI → 行動KPI」で語ることが多かったと思います。
ただ、実務で詰まるのは必ず先行と行動の間です。

私はKPIツリーを、次の5層で捉えると腹落ちしました。

主要KPI(経営レバー)
 ↓
先行KPI(因果状態)
 ↓
決定因子(判断要因)
 ↓
操作レバー(量・質・仕組み)
 ↓
行動KPI(具体回数・担当・頻度)

ポイントはここです。

  • 決定因子(判断要因):先行KPIが「なぜその数値になるか」を説明する要素群(非数値を含む)
  • 操作レバー(量・質・仕組み):行動を設計するための分解フレーム
  • 行動KPI:実際に測る指標(実験として回す)

小売(営業)の例:受注率が動かない理由

先行KPI:受注率

定義:受注件数 ÷ 提案件数

では、この受注率は何で決まるのか?
ここが決定因子(判断要因)です。

  • 価格競争力
  • 納期対応力
  • 顧客本気度

これは「受注する/しない」の判断要因です。
ここまでが因果の分解

次に「どう動かすか」を分解する

例えば「価格競争力」を上げたい。
ここで初めて、操作レバー(量・質・仕組み)に落とします。

  • :見積提示回数
  • :競合対比資料精度、原価把握精度
  • 仕組み:見積標準フォーマット化、値引きルール明確化

そして、これを数値で測る形にしたものが行動KPIです。

価格は決定因子。量・質・仕組みは行動設計フレーム。行動KPIは測定指標。
ここを混ぜるとKPIは壊れます。


食品卸の例:粗利率を動かすための因果を揃える

主要KPI:粗利率
先行KPI:リピート率

リピート率 定義:当月再注文顧客数 ÷ 前月購入顧客数

第1段階:決定因子(なぜリピートするか)

  • 価格競争力
  • 品揃え適合度(SKU適合)
  • 納品安定性(欠品率)
  • 担当営業の接触頻度

ここまでが「因果の分解」。

第2段階:操作レバー(どう動かすか)

例えば「欠品率」を改善したい。

  • :発注見直し回数、安全在庫設定SKU数
  • :需要予測精度、在庫差異率
  • 仕組み:自動発注設定比率、在庫アラート活用率

この操作レバーを「実際に測る」指標が行動KPIです。


非数値データの位置づけ:そのままでは使えない

ここが今回の核です。

前提:

  • 行動KPI:提案件数 ↑
  • 先行KPI:受注率 → 横ばい

つまり「量は増えているのに、率が上がらない」。

このとき多くの現場は「もっと提案しよう」と言います。
違います。

問題は、決定因子(判断要因)が変わっていないこと。

商談メモ、失注理由、会話ログ。
これら非数値データは、そのままだとKPIツリーに接続できません。

必ず「決定因子カテゴリ」にマッピングして初めて、構造データになります。

  • 価格
  • 納期
  • 信頼
  • 顧客本気度
  • 競合状況

いま何が起きているか(構造で説明する)

主要KPI:粗利(または売上)
 ↓
先行KPI:受注率
 ↓
決定因子:価格・納期・信頼・競合状況
 ↓
行動KPI:提案件数、事前ヒアリング回数 など

行動KPI(量)は回している。
しかし判断要因が改善していない。
だから受注率が動かない。

つまり、疑うべきは「行動量」ではなく、
判断要因(決定因子)を変えられているかです。


生成AIの役割:決定因子層の再特定

ここでの生成AIの使いどころは「施策の答え出し」ではありません。
役割は一つ。

先行KPIの下にある“決定因子(判断要因)”を再発見・再定義すること。

実務の流れはこうなります。

  1. 行動KPIが増えた
  2. 先行KPIが動かない
  3. 非数値ログを分類し、決定因子を再整理する
  4. 真の因果(効く要因)を特定する
  5. 行動KPIを「継続・条件変更・撤退」の三択で更新する

具体例:失注理由が「価格」ではなかった

もしAIの整理で、失注理由の60%が「価格」ではなく「予算未確定」だったなら。

価格交渉回数を増やすのは無意味になります。
必要なのは例えばこういうKPIです。

  • 決裁者同席率
  • 予算確定前案件除外率
  • 案件ランクA比率

決定因子が変われば、行動KPIも変わる。
これが、行動KPIを「評価」ではなく「判断」に戻すコツです。


まとめ

今回の結論をもう一度まとめます。

主要KPI(経営が変えたい結果)
 ↓
先行KPI(因果として効く状態)
 ↓
決定因子(判断要因:なぜそうなるか/非数値含む)
 ↓
操作レバー(量・質・仕組み)
 ↓
行動KPI(実験として回す指標)

KPIツリーが止まるのは、
行動を疑っているのに、判断要因を疑っていないときです。

非数値データは、単なるメモではありません。
決定因子にマッピングした瞬間、KPIツリーの一部になります。

ここまで揃えると、KPIツリーは一段深くなります。
そして「データドリブン」は、ようやく現場の言葉で回り始めます。

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