KPIツリー作成のスキルアップ⑬KPIツリー作成プロセスで発生しうる4つの落とし穴

DX・IT

前回の「KPIツリー作成のスキルアップ⑫」では、
私自身が企業を診断し、KPIツリーに落とすまでの思考プロセスを、次の4段階で整理しました。

  • ① 事業構造を把握する
  • ② 構造上の課題を特定する
  • ③ 基本戦略を考える
  • ④ 戦略を測れる形に翻訳する(KPIツリー)

今回は、この4つの段階それぞれで、
実務で非常によく起きる「落とし穴」を整理します。

KPIツリーが「それっぽいが使われない」状態になるとき、
ほぼ例外なく、どこかで因果が切れています。


① 事業構造を把握する段階の落とし穴― 儲けの「型」を掴まないまま進んでしまう ―

落とし穴
この段階をすっとばし、いきなり②や④に進んでしまうことです。
つまり、事業構造を理解しないままKPIを作り始めてしまう。

兆候

  • KPIが業界テンプレのように見える
  • どの会社でも使えそうな指標になる
  • 「なぜこのKPIなのか?」に即答できない

何が起きているか
儲けの「型」を掴んでいないため、
KPIが構造を表さず、単なる数値管理になっています。

この時点で、KPIツリーは「経営の設計図」ではなく、
管理項目の一覧表になっています。


② 構造上の課題を特定する段階の落とし穴― 課題ではなく「困りごとリスト」になる ―

落とし穴
構造課題ではなく、現象や不満の列挙になってしまうことです。

兆候

  • 売上が低い
  • 利益率が悪い
  • 人が足りない
  • 忙しい

何が起きているか
「このままだと詰まる点」ではなく、
今困っていることリストになっています。

この状態では、戦略に昇華できず、
次の段階でKPIがバラバラに増殖します。


③ 基本戦略を考える段階の落とし穴― 課題と戦略が因果でつながらない ―

落とし穴
課題と戦略がつながらず、「やりたいこと」や「流行」が混じることです。

兆候

  • DXしたい
  • データ活用したい
  • サブスクにしたい
  • 新規事業をやりたい

例えば、
課題:人手不足
戦略:DXを進める
と置かれているが、「なぜDXで解決するのか」が説明できない。

何が起きているか
本来あるべき
課題 → 強み → 戦略
という変換が抜けています。

その結果、KPIは追えるが現場が動かない、
机上の設計図になります。


④ 戦略をKPIツリーに翻訳する段階の落とし穴

落とし穴①:測れるものから作り始める

兆候

  • 今あるデータで取れる指標だけを並べる
  • 取りにくいが重要な指標が外される

戦略ではなく、システム都合でKPIが決まります。
正しく回しても、事業構造は変わりません。

落とし穴②:KPIの構造を決めない

兆候

  • 売上、案件数、訪問数、会議回数が同列
  • 上下関係が説明できない

KPIが因果ではなく、寄せ集めになります。

落とし穴③:KPIツリーを評価表にした瞬間

兆候

  • 未達を責める
  • 数字が下がると空気が悪くなる
  • 改善の議論が出ない

この瞬間、KPIは意思決定の道具から、
統制・評価の道具に変質します。


まとめ

KPIツリーが壊れるのは、指標選定の問題ではありません。

構造 → 課題 → 強み → 戦略 → 計器
この因果のどこかが切れた瞬間に壊れます。

KPIツリーは数字の体系ではなく、
経営の思考プロセスを可視化する設計図です。

コメント