前回の「KPIツリー作成のスキルアップ⑫」では、
私自身が企業を診断し、KPIツリーに落とすまでの思考プロセスを、次の4段階で整理しました。
- ① 事業構造を把握する
- ② 構造上の課題を特定する
- ③ 基本戦略を考える
- ④ 戦略を測れる形に翻訳する(KPIツリー)
今回は、この4つの段階それぞれで、
実務で非常によく起きる「落とし穴」を整理します。
KPIツリーが「それっぽいが使われない」状態になるとき、
ほぼ例外なく、どこかで因果が切れています。
① 事業構造を把握する段階の落とし穴― 儲けの「型」を掴まないまま進んでしまう ―
落とし穴
この段階をすっとばし、いきなり②や④に進んでしまうことです。
つまり、事業構造を理解しないままKPIを作り始めてしまう。
兆候
- KPIが業界テンプレのように見える
- どの会社でも使えそうな指標になる
- 「なぜこのKPIなのか?」に即答できない
何が起きているか
儲けの「型」を掴んでいないため、
KPIが構造を表さず、単なる数値管理になっています。
この時点で、KPIツリーは「経営の設計図」ではなく、
管理項目の一覧表になっています。
② 構造上の課題を特定する段階の落とし穴― 課題ではなく「困りごとリスト」になる ―
落とし穴
構造課題ではなく、現象や不満の列挙になってしまうことです。
兆候
- 売上が低い
- 利益率が悪い
- 人が足りない
- 忙しい
何が起きているか
「このままだと詰まる点」ではなく、
今困っていることリストになっています。
この状態では、戦略に昇華できず、
次の段階でKPIがバラバラに増殖します。
③ 基本戦略を考える段階の落とし穴― 課題と戦略が因果でつながらない ―
落とし穴
課題と戦略がつながらず、「やりたいこと」や「流行」が混じることです。
兆候
- DXしたい
- データ活用したい
- サブスクにしたい
- 新規事業をやりたい
例えば、
課題:人手不足
戦略:DXを進める
と置かれているが、「なぜDXで解決するのか」が説明できない。
何が起きているか
本来あるべき
課題 → 強み → 戦略
という変換が抜けています。
その結果、KPIは追えるが現場が動かない、
机上の設計図になります。
④ 戦略をKPIツリーに翻訳する段階の落とし穴
落とし穴①:測れるものから作り始める
兆候
- 今あるデータで取れる指標だけを並べる
- 取りにくいが重要な指標が外される
戦略ではなく、システム都合でKPIが決まります。
正しく回しても、事業構造は変わりません。
落とし穴②:KPIの構造を決めない
兆候
- 売上、案件数、訪問数、会議回数が同列
- 上下関係が説明できない
KPIが因果ではなく、寄せ集めになります。
落とし穴③:KPIツリーを評価表にした瞬間
兆候
- 未達を責める
- 数字が下がると空気が悪くなる
- 改善の議論が出ない
この瞬間、KPIは意思決定の道具から、
統制・評価の道具に変質します。
まとめ
KPIツリーが壊れるのは、指標選定の問題ではありません。
構造 → 課題 → 強み → 戦略 → 計器
この因果のどこかが切れた瞬間に壊れます。
KPIツリーは数字の体系ではなく、
経営の思考プロセスを可視化する設計図です。

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