KPIツリー作成のスキルアップ㉓ まとめ②

DX・IT

―「管理表」で終わるか、「経営を動かす設計図」になるか―

20日以上、修行してきました。
まだ実践は十分とは言えませんが、少なくとも「何が壊れるのか」「どこで混ざるのか」は見えてきました。

今回は、⑥〜⑩で扱ったテーマを踏まえ、
実戦で使えるKPIツリーにするための要点を5つに整理します。

KPIツリーは、数字を並べる技術ではありません。
経営の状態を動かす設計図です。


1. 3つのKPIの「役割」を絶対に混ぜない

KPIツリーが壊れる最大原因はこれです。

  • 主要KPI(到着状態)
  • 先行KPI(途中状態)
  • 行動KPI(操作)

この3つが混ざった瞬間、ツリーは上下関係を失い、ただの数値一覧になります。

主要KPI(到着状態)
経営が目指す方向。
例:売上構成比、ブランド価値、粗利率改善など。

先行KPI(観測)
主要KPIに至る途中の状態。
例:リピート率、受注率、歩留まり率。

行動KPI(操作)
人が実際にやること。
例:提案回数、決裁者同席率、改善実施回数。

よくある誤りはこれです。

「リピート率を上げる」

これは行動ではありません。状態です。
この瞬間、現場は「何をすればいいか」分からなくなります。

役割を混ぜない。
これが実戦の第一条件です。


2. 「測れるから置く」という罠を避ける

データがあるから置く。
BIで出せるから置く。

これをやると、KPIツリーは管理表になります。

測りやすいが本質でない指標が残り、
測りにくいが重要な状態が消える。

本来の順番はこうです。

  1. 今、経営は何を決めたいか(主要)
  2. その途中状態は何か(先行)
  3. それを動かす操作は何か(行動)

数値から書き始めると、目的が消えます。

KPIは「取れる数字」ではなく、
「経営の迷いどころを翻訳したもの」であるべきです。


3. 事業フェーズに合わせて“進化”させる

KPIツリーは固定資産ではありません。

立ち上げ期
主要KPI:ブランド価値
→ 投資を続けるか撤退かを決める段階。

成長期
主要KPI:ブランド売上構成比
→ どこにリソースを張るかを決める段階。

加速期
主要KPI:用途別指名購買率
→ 強さの質を問う段階。

同じ会社でも、フェーズで主要KPIは変わります。

KPIは数字の問題ではありません。
「今、経営が何を決めたいか」の問題です。

フェーズが変わったのに主要KPIを変えない。
これが機能不全の典型です。


4. 行動KPIは「評価」ではなく「仮説実験」

行動KPIが形骸化する瞬間があります。

  • 件数は達成
  • 先行KPIは横ばい
  • でも議論がない

これは「行動が目的化」した状態です。

行動KPIは、
「これをやれば先行KPIが動くはず」という仮説にすぎません。

2〜3サイクル試して動かなければ、それは失敗ではなく
仮説棄却です。

正しい問い

  • 未達 → なぜできなかった?
  • 達成 → よくやった

ではなく

  • 未達 → 何が起きた?
  • 達成 → 何が起きた?

行動KPIは守るものではありません。
疑い続けるものです。


5. ツリーを回すには「意思決定リテラシー」が必要

KPIツリーは構造だけでは回りません。

経営層

  • 完璧な精度を求めない(70%で方向判断)
  • データをITではなく判断補助と捉える

管理層

  • 数字で人を責めない
  • A/B/Cの選択肢を整理する

現場

  • 仮説を試す
  • 実行ログを残す

重要なのは、

その場で決める
次回、その結果だけを見る

このサイクルです。

KPIツリーは「議論の地図」。
迷ったらツリーに戻る。


まとめ

これからKPIツリーを作る方へ。

迷ったら、必ずこの問いに戻ってください。

  • 今、経営は何を決めたいのか?
  • この数字が動かなかったら、どこを見ればいいのか?
  • それは状態か?観測か?操作か?

KPIツリーは、
数字を管理するための道具ではありません。

判断を速く、軽くするための装置です。

まだ修行は続きますが、
少なくとも「壊れる構造」は見えました。

ここからは、実戦です。

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