KPIツリー作成のスキルアップ⑲ ― 非数値データがある世界/ない世界の決定的な違い ―

DX・IT

前回は、伴走会議の運用を整理しました。

今回はもう一段、踏み込みます。

「非数値データを用意できた場合」と「非数値データを用意できていない場合」。
この違いは、KPIツリーの“質”を決定的に変えます。


前提状況(共通)

  • 提案件数は増えている
  • 受注率は横ばい
  • 粗利率は改善していない

ここから分岐します。
同じ事実でも、持っているデータが違うだけで意思決定の構造はここまで変わる、という話です。


ケース①:非数値データなし

日々のダッシュボード運用

現場

  • 提案件数は達成
  • 受注率は横ばい
  • 理由は分からない

結果どうなるか。

  • 「もっと質を上げよう」
  • 「商談時間を増やそう」
  • 「価格の問題かもしれない」

感覚対応になります。

管理

  • Aさん受注率が低い → 「営業力の問題?」と推測

できることは、だいたいこの3つです。

  • フォロー回数を増やす
  • 商談時間を延ばす
  • ターゲットを変えてみる

実験はできます。
しかし、根拠は弱い

どの仮説が有力なのか分からないため、複数同時に試すしかありません

伴走会議(非数値なし)

事前作業

  • 行動KPIと先行KPIの差分抽出
  • 個人別ばらつき確認
  • 提案件数と受注率の相関確認

会議中

  1. 事実提示:「量は増えているが率は変わらない」
  2. 仮説出し:「価格?競合?質?」
  3. 行動KPIの条件変更
    • 仮説A:価格要因 → 一部案件で値引き条件変更
    • 仮説B:本気度要因 → 決裁者同席率を上げる

ここで重要なのは、
施策は“当てにいく”のではなく“試す”ということ。

結論:意思決定は実験型。
試行回数を増やす必要があります

このときのこちらの役割は、「仮説生成支援者」です。


ケース②:非数値データあり(AI分類済)

ここで条件が変わります。

日次ログに以下があるとします。

  • 失注理由(選択式)
  • 決裁者同席有無
  • 予算確定有無

さらに、それがAIで分類・集計済みだとします。

日々のダッシュボード運用

現場

  • 提案件数達成
  • 受注率横ばい
  • 失注理由上位「予算未確定」

今日やることは明確です。
「決裁者同席を必須化」

管理

  • Aさんは価格理由が多い
  • Bさんは本気度不足が多い

→ 指導内容が個別に変わる。

あなた(伴走側)

  • 判断要因構成比の変化を見る
  • 先行KPIが動かない理由を定量化する

“勘”ではなく、“構造”になります。

伴走会議(非数値あり)

事前作業

  • 失注理由構成比の推移
  • 決裁者同席率 × 受注率のクロス分析
  • 行動KPI入替案の準備

会議中

  1. 事実提示:「失注の60%が“予算未確定”】【例】
  2. 構造提示:「量ではなく、本気度がボトルネック」
  3. 行動再設計
    • 決裁者同席率
    • 案件ランクA比率

経営は、“何をやめるか”を決められます。

結論:意思決定は構造型。
試行回数は減るが、成功確率は上がる


本質的な違い

非数値なし

  • 値引き条件を変える
  • 決裁者同席率を上げる
  • ターゲットを変える

どれが効いたかは、後から見るしかない。
だから同時並行で複数試す。
= 試行回数が増える。

ダッシュボードは「異常検知装置」
会議は「仮説実験設計会」

非数値あり

ボトルネックが「予算未確定」に集中している。
→ 施策を1点集中できる。
= 試行回数は減るが、成功確率は上がる。

ダッシュボードは「ボトルネック特定装置」
会議は「意思決定会」


こちらの役割の進化

  • 非数値なし → 仮説生成支援者
  • 非数値あり → 判断構造設計者

ここが決定的に違います。

KPIツリーは数字の体系ではありません。
“判断構造”の設計図です。

非数値データがあることで、
その構造の精度が上がる。

だから、

  • 営業ログを構造化する
  • 失注理由を分類する
  • 判断要因をデータ化する

ここに投資する意味があります。

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