今回は「KPIツリー作成のスキルアップ⑫」。
KPIツリーを何本も作ってきて、今あらためて強く感じているのは、
KPIツリーの出来は「指標を書く前」にほぼ決まっているということです。
今回は、わたし自身が企業を診断し、KPIツリーに落とすまでに、
頭の中でどのような順番で考えているのか。
事業構造 → 課題 → 戦略 → KPIツリー
という全体フローを整理します。
テクニック論ではなく、
「どういう順番で考えると、KPIツリーが壊れにくくなるか」
に焦点を当てます。
① 事業構造を把握する(儲けの「型」を掴む)
最初にやるのは、KPIづくりではありません。
会社の儲け方を分解することです。
ここを飛ばして指標を置くと、KPIツリーは高確率で
「それっぽいが使われない管理表」になります。
私が見るのは、次のポイントです。
- 誰に売っているのか(顧客の切り口)
- 何を単位に売上が立っているのか(売上の単位)
- どうやって提供しているのか(業務の流れ)
- どこで粗利が決まっているのか(利益の決まり方)
- どこにコストが乗りやすいのか(詰まりやすいコスト)
例えば、こんな観点で分解します。
- 法人/個人、業界別、規模別
- 商品単位、案件単位、回数単位、契約単位
- 属人対応か、標準化されているか
- 稼働率が利益を決めるのか、差益が決めるのか
この時点でのゴールは一つです。
「この会社は、売上はこう立ち、粗利はここで決まり、コストはここで膨らみやすい」
ここまで言語化できて、ようやくスタート地点に立てます。
② 構造上の課題を特定する(このままだとどこで詰まるか)
次にやるのは、目の前の不満や要望を並べることではありません。
「この構造のまま伸ばしたら、どこで詰まるか」
を考えます。
私は、課題をだいたい次の5つの観点で整理しています。
- 人・稼働の限界
- 利益が増えない構造
- 顧客・商品構造の歪み
- オペレーションの歪み
- 意思決定の歪み(データの問題)
例えば、こんな状態です。
- 売上が増えるほど現場が回らない(人月依存・属人)
- 忙しい案件ほど儲からない(例外対応・手戻り)
- SKUが増えすぎて在庫が重い(過剰多品種)
- 数字はあるが、誰も同じ数字を見ていない(定義バラバラ)
最終的には、次のような一文にまとめます。
「この会社は◯◯で収益を上げてきたが、この構造のままでは今後△△と□□がボトルネックになる」
ここまで整理できると、次の一手が自然に見えてきます。
③ 基本戦略を考える(課題を解く鍵は「強み」)
課題が見えたら、次は戦略です。
ただし、ここでやってはいけないのは、
一般論や理想論で解決策を考えること。
使う問いは一つだけです。
「この課題を解くなら、この会社の強みを使って、どう解くのが現実的か」
例えば、こんな整理になります。
- 課題:人を増やさないと伸びない
強み:業務が整理されている/標準化できる
→ パッケージ化・標準化で生産性を上げる - 課題:価格競争で利益が出ない
強み:調整力・現場対応力が高い
→ 高付加価値領域に寄せる - 課題:顧客別採算が歪んでいる
強み:長期関係・提案力
→ 深耕顧客に寄せる/不採算取引を是正
ここで初めて、「どうするか」が決まります。
KPIツリーは、この戦略が決まっていないと、
絶対にうまく作れません。
④ 戦略を測れる形に翻訳する(KPIツリー)
最後に、戦略を数字に落とします。
KPIツリーの役割は、実は3つだけです。
- 課題が本当に解消しているかを見る
- 強みが数字として効いているかを見る
- 現場の行動がズレていないかを見る
つまり、KPIツリーは「戦略の計器」。
売上や利益を並べるための図ではありません。
まとめ
私がKPIツリーを作るときの思考順は、こうです。
- 会社の儲け方(事業構造)を分解する
- この構造のまま伸ばすと詰まる点を言語化する
- 課題を解く戦略を、強みに寄せて決める
- その戦略が進んでいるかをKPIツリーに翻訳する
この順番を守ると、KPIツリーは壊れにくくなります。
逆に言うと、KPIツリーがうまく作れないときは、
多くの場合①〜③のどこかが曖昧です。
KPIツリーは指標の集合体ではなく、
経営の思考プロセスを写した構造図。
ここを忘れないようにしたい、そんな整理でした。

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