ここまで⑪〜⑮(⑭-1・⑭-2含む)で書いてきた内容を、これからKPIツリーに携わる方向けに整理する。
結論はひとつ。
KPIツリーは、数字を並べるための管理表ではない。
経営の意思決定を速く、軽くするための装置である。
ここを外すと、どれだけ精緻に作っても意味がない。
1.構築プロセス|「測れる数字」から始めない
最も多い失敗はこれだ。
「システムで取れる数字」から並べてしまう。
正しい順番は逆である。
① 事業構造を分解する
誰に、何を、どうやって売り、どこで粗利が決まるのか。まずは儲けの型を描く。
② 構造上の限界を言語化する
「売上が足りない」ではない。人月依存なのか、採算が歪んでいるのか。営業力ではなく、構造のボトルネックを特定する。
③ 強みに寄せた戦略を決める
強みを使わない戦略は動かない。ここが腹落ちしないと、現場は回らない。
④ その戦略を「測る装置」として翻訳する
ここで初めてKPIツリーを作る。いきなり数字に飛びつくと、設計図ではなく「在庫一覧表」になる。
2.統計の使い方|正解を証明しない
統計は万能ではない。役割はひとつ。
枝を落とすこと。
先行KPI候補が多すぎると、会議は止まる。だから絞る。
- 相関分析:主要KPIとの相関が極端に低いものは一旦外す(目安 |r| < 0.2)。
- 重回帰分析:単独では効いて見えるが、他の変数を入れると消える指標は構造的に弱い。
- 部分相関:似た指標があるとき、どちらが因果の芯かを見極める。
統計は「正解の証明」ではない。意思決定を軽くするための刈り込み装置である。
3.行動KPIは「疑われ続ける仮説」
行動KPIはルールではない。実験である。
■ 疑うタイミング
件数は達成している。しかし先行KPIが動かない。この瞬間、その行動は疑われる。
■ 捨てる勇気
撤退は失敗ではない。仮説検証の完了である。効かない行動を止めるほど、組織の学習速度は上がる。
■ 再設計
生成AIやログ分析を用いて「成功と失敗の境界条件」を言語化する。抽象ではなく、条件付き行動に落とす。
4.成功条件|リテラシーの問題
どれだけ設計しても、使う側が変わらなければ意味はない。
- 経営層:100%の精度を求めない。70%の方向性で判断する覚悟。
- 管理層:数字で人を詰めない。具体行動に翻訳する役割。
- 現場:不完全でも試す。小さく変える勇気。
KPIツリーは制度設計ではなく、思考様式の問題である。
5.伴走会議の本質|報告ではない
伴走会議のゴールは分析報告ではない。意思決定を止めないこと。
会議では次の3択を提示する。
- 継続
- 条件変更
- 撤退
撤退が早い会社ほど学習速度は速い。数字の説明に時間を使う会議は、構造上うまくいかない。
まとめ
KPIツリーは「正解」を作る仕事ではない。
意思決定に使える傾向を作る設計である。
統計もAIも道具に過ぎない。目的は、経営判断を速く、軽くすること。
最初から完璧を目指さない。最小限に絞る。現場が動ける設計にする。小さな成功体験を先に作る。
その瞬間、KPIツリーは「管理表」から「意思決定装置」に変わる。

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