前回は、伴走会議の運用を整理しました。
今回はもう一段、踏み込みます。
「非数値データを用意できた場合」と「非数値データを用意できていない場合」。
この違いは、KPIツリーの“質”を決定的に変えます。
前提状況(共通)
- 提案件数は増えている
- 受注率は横ばい
- 粗利率は改善していない
ここから分岐します。
同じ事実でも、持っているデータが違うだけで意思決定の構造はここまで変わる、という話です。
ケース①:非数値データなし
日々のダッシュボード運用
現場
- 提案件数は達成
- 受注率は横ばい
- 理由は分からない
結果どうなるか。
- 「もっと質を上げよう」
- 「商談時間を増やそう」
- 「価格の問題かもしれない」
感覚対応になります。
管理
- Aさん受注率が低い → 「営業力の問題?」と推測
できることは、だいたいこの3つです。
- フォロー回数を増やす
- 商談時間を延ばす
- ターゲットを変えてみる
実験はできます。
しかし、根拠は弱い。
どの仮説が有力なのか分からないため、複数同時に試すしかありません。
伴走会議(非数値なし)
事前作業
- 行動KPIと先行KPIの差分抽出
- 個人別ばらつき確認
- 提案件数と受注率の相関確認
会議中
- 事実提示:「量は増えているが率は変わらない」
- 仮説出し:「価格?競合?質?」
- 行動KPIの条件変更
- 仮説A:価格要因 → 一部案件で値引き条件変更
- 仮説B:本気度要因 → 決裁者同席率を上げる
ここで重要なのは、
施策は“当てにいく”のではなく“試す”ということ。
結論:意思決定は実験型。
試行回数を増やす必要があります。
このときのこちらの役割は、「仮説生成支援者」です。
ケース②:非数値データあり(AI分類済)
ここで条件が変わります。
日次ログに以下があるとします。
- 失注理由(選択式)
- 決裁者同席有無
- 予算確定有無
さらに、それがAIで分類・集計済みだとします。
日々のダッシュボード運用
現場
- 提案件数達成
- 受注率横ばい
- 失注理由上位「予算未確定」
今日やることは明確です。
「決裁者同席を必須化」
管理
- Aさんは価格理由が多い
- Bさんは本気度不足が多い
→ 指導内容が個別に変わる。
あなた(伴走側)
- 判断要因構成比の変化を見る
- 先行KPIが動かない理由を定量化する
“勘”ではなく、“構造”になります。
伴走会議(非数値あり)
事前作業
- 失注理由構成比の推移
- 決裁者同席率 × 受注率のクロス分析
- 行動KPI入替案の準備
会議中
- 事実提示:「失注の60%が“予算未確定”】【例】
- 構造提示:「量ではなく、本気度がボトルネック」
- 行動再設計
- 決裁者同席率
- 案件ランクA比率
経営は、“何をやめるか”を決められます。
結論:意思決定は構造型。
試行回数は減るが、成功確率は上がる。
本質的な違い
非数値なし
- 値引き条件を変える
- 決裁者同席率を上げる
- ターゲットを変える
どれが効いたかは、後から見るしかない。
だから同時並行で複数試す。
= 試行回数が増える。
ダッシュボードは「異常検知装置」。
会議は「仮説実験設計会」。
非数値あり
ボトルネックが「予算未確定」に集中している。
→ 施策を1点集中できる。
= 試行回数は減るが、成功確率は上がる。
ダッシュボードは「ボトルネック特定装置」。
会議は「意思決定会」。
こちらの役割の進化
- 非数値なし → 仮説生成支援者
- 非数値あり → 判断構造設計者
ここが決定的に違います。
KPIツリーは数字の体系ではありません。
“判断構造”の設計図です。
非数値データがあることで、
その構造の精度が上がる。
だから、
- 営業ログを構造化する
- 失注理由を分類する
- 判断要因をデータ化する
ここに投資する意味があります。

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