今日は、KPIツリーの「運用の具体」をまとめます。
提供するツールとしてダッシュボードがあり、それを活かして伴走会議でツリーと結果の構造の整合を取りながら回していく。今回は、ダッシュボードの利用イメージと伴走会議の接合を、実務で迷わない粒度に落として整理します。
結論:ダッシュボードと伴走会議の役割を明確に分ける
KPIツリー運用が止まる原因は、だいたいこの2つです。
- ダッシュボードが「見える化」で止まる
- 会議が「報告会」で止まる
この状態を避けるために、役割を切り分けます。
- ダッシュボード:日々の「操作」
- 伴走会議:行動KPIを「捨てて入れ替える」判断の場
- KPIツリー:議論の地図(逸れたら戻す装置)
この3つを混ぜない。ここがスタートラインです。
1. 現場(日次10分):自分が操作できる指標だけを見る
現場用のダッシュボードは豪華にする必要がありません。むしろ、指標を減らしたほうが回ります。
現場が見るのは行動KPI+先行KPIのみです。主要KPI(売上・粗利など)は日次で現場が直接操作できないため、現場の日次画面からは外します。
見るもの(例)
- 提案件数(今月累計/日次)
- 決裁者同席率(直近2週)
- 受注率(直近20件ローリング)
運用(3ステップで固定)
- 朝:未達ギャップ確認(例:同席率40%→目標60%)
- 今日の打ち手を1つ決める(例:本日3件は必ず決裁者打診)
- 夕方:実行ログ入力(構造化)
この「ログ入力」がないと、次の会議で「なぜ動かないか」が語れず、結局「件数はやってます」で終わります。
2. 管理(週次+日次スキャン20分):詰まりの特定と実験設計
管理者のダッシュボードは、個人の詳細よりもばらつきを見せます。詰まりは個人差として現れるからです。
見るもの
- 行動KPI実行率(やった/やってない)
- 先行KPIの個人差(ばらつき)
週次定例の見る順番(固定)
- 行動は回っているか?
- 回っているのに先行が動かない人は誰か?
- 行動KPIの入替案を提示する
管理の役割は「詰める」ではありません。詰めた瞬間、現場は安全な行動しかしなくなり、学習が止まります。
管理の役割は、詰まりを見つけ、次の実験(行動KPI)を設計することです。
3. 経営(月次60分):経営は“決めるだけ”。日次は見ない
経営が見るダッシュボードは、主要KPIのトレンドと先行KPIの因果サマリだけで十分です。
見るもの
- 主要KPIのトレンド(営業利益率、粗利率など)
- 主要KPIに効いていそうな先行KPIの要約
経営の問いは1つだけ。
主要KPIは改善しているか?
改善していないなら、どこに資源配分を変えるか。経営が日次まで見始めた瞬間、現場は萎縮します。経営は「決める」。これだけでいい。
4. 伴走会議との接続:ここで初めて「ツリー×ダッシュボード×ログ」がつながる
伴走会議は会議そのものより、事前作業で勝負が決まります。会議を「判断の場」にするために、材料を揃えます。
会議前:こちら(伴走側)の事前作業(30〜60分)
- 先行KPIの異常抽出(例)
- 前年差が±◯%超
- 目標乖離が◯ヶ月連続
- 個人間ばらつきが◯倍以上
- 主要KPIとの因果確認(「どの先行KPIが効いていそうか」を仮説化)
- 行動KPIの実行状況確認(やった/やってない、量×頻度×担当)
- 1枚に整理(今月の構造変化/効いた仮説/効かなかった仮説)
伴走側の役割は、報告を綺麗にまとめることではなく、“構造の変化の翻訳者”になることです。
会議中:こちら(伴走側)の役割(60分)
- 事実の確認(10分):感想は言わない。事実だけ。
- 構造の提示(20分):KPIツリーで「主要→先行→行動」の因果を説明する。
- 行動KPIの再設計(20分):3択で整理する
- 継続
- 条件変更
- 撤退
- 経営判断(10分):決めるのは経営。伴走側は決めない。
運用の成否を分けるのは文化です。
- 撤退は失敗ではなく、仮説検証の完了
- 撤退判断が早いほど、学習速度が上がる
5. お客様側の具体作業(役割分担を固定する)
経営層
- KGI/主要KPIの優先順位確認
- 行動KPIの採否決定
管理層
- 先行KPIの原因仮説提示
- 現場実行可否判断
- 実験設計(行動KPI入替案の準備)
現場
- 行動KPIの実行
- 実行ログ入力(構造化)
役割が曖昧なまま回すと、必ず現場が疲弊します。だから、役割は固定します。
6. KPIツリーの使い方:議論の地図として使う
KPIツリーは「数字を管理する道具」ではありません。議論の地図です。
- 議論が逸れたらツリーに戻す
- 感覚論が出たらツリーに戻す
- 責任の所在を明確にする
ツリーがあるから、「どの階層で止まっているか(構造)」が分かります。
7. 伴走支援の本質:可視化屋で終わらず、意思決定屋になる
ITベンダーのままだと“可視化屋”で終わります。ダッシュボードは作れても、意思決定が変わらない。
診断士として伴走するなら、踏み込むべきはここです。
- 因果の整理
- 優先順位の設計
- 撤退判断の設計
ここまで入って初めて「伴走」になります。
伴走会議におけるこちらの価値は、意思決定の質を上げること。
KPIツリーは「数字を管理する道具」ではなく、判断を速く、軽くするための装置です。

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