KPIツリー作成のためのスキルアップ⑱|ダッシュボードの利用イメージと伴走会議の接合

DX・IT

今日は、KPIツリーの「運用の具体」をまとめます。

提供するツールとしてダッシュボードがあり、それを活かして伴走会議でツリーと結果の構造の整合を取りながら回していく。今回は、ダッシュボードの利用イメージと伴走会議の接合を、実務で迷わない粒度に落として整理します。


結論:ダッシュボードと伴走会議の役割を明確に分ける

KPIツリー運用が止まる原因は、だいたいこの2つです。

  • ダッシュボードが「見える化」で止まる
  • 会議が「報告会」で止まる

この状態を避けるために、役割を切り分けます。

  • ダッシュボード:日々の「操作」
  • 伴走会議:行動KPIを「捨てて入れ替える」判断の場
  • KPIツリー:議論の地図(逸れたら戻す装置)

この3つを混ぜない。ここがスタートラインです。


1. 現場(日次10分):自分が操作できる指標だけを見る

現場用のダッシュボードは豪華にする必要がありません。むしろ、指標を減らしたほうが回ります。

現場が見るのは行動KPI+先行KPIのみです。主要KPI(売上・粗利など)は日次で現場が直接操作できないため、現場の日次画面からは外します。

見るもの(例)

  • 提案件数(今月累計/日次)
  • 決裁者同席率(直近2週)
  • 受注率(直近20件ローリング)

運用(3ステップで固定)

  1. 朝:未達ギャップ確認(例:同席率40%→目標60%)
  2. 今日の打ち手を1つ決める(例:本日3件は必ず決裁者打診)
  3. 夕方:実行ログ入力(構造化)

この「ログ入力」がないと、次の会議で「なぜ動かないか」が語れず、結局「件数はやってます」で終わります。


2. 管理(週次+日次スキャン20分):詰まりの特定と実験設計

管理者のダッシュボードは、個人の詳細よりもばらつきを見せます。詰まりは個人差として現れるからです。

見るもの

  • 行動KPI実行率(やった/やってない)
  • 先行KPIの個人差(ばらつき)

週次定例の見る順番(固定)

  1. 行動は回っているか?
  2. 回っているのに先行が動かない人は誰か?
  3. 行動KPIの入替案を提示する

管理の役割は「詰める」ではありません。詰めた瞬間、現場は安全な行動しかしなくなり、学習が止まります。

管理の役割は、詰まりを見つけ、次の実験(行動KPI)を設計することです。


3. 経営(月次60分):経営は“決めるだけ”。日次は見ない

経営が見るダッシュボードは、主要KPIのトレンドと先行KPIの因果サマリだけで十分です。

見るもの

  • 主要KPIのトレンド(営業利益率、粗利率など)
  • 主要KPIに効いていそうな先行KPIの要約

経営の問いは1つだけ。

主要KPIは改善しているか?

改善していないなら、どこに資源配分を変えるか。経営が日次まで見始めた瞬間、現場は萎縮します。経営は「決める」。これだけでいい。


4. 伴走会議との接続:ここで初めて「ツリー×ダッシュボード×ログ」がつながる

伴走会議は会議そのものより、事前作業で勝負が決まります。会議を「判断の場」にするために、材料を揃えます。

会議前:こちら(伴走側)の事前作業(30〜60分)

  1. 先行KPIの異常抽出(例)
    • 前年差が±◯%超
    • 目標乖離が◯ヶ月連続
    • 個人間ばらつきが◯倍以上
  2. 主要KPIとの因果確認(「どの先行KPIが効いていそうか」を仮説化)
  3. 行動KPIの実行状況確認(やった/やってない、量×頻度×担当)
  4. 1枚に整理(今月の構造変化/効いた仮説/効かなかった仮説)

伴走側の役割は、報告を綺麗にまとめることではなく、“構造の変化の翻訳者”になることです。

会議中:こちら(伴走側)の役割(60分)

  1. 事実の確認(10分):感想は言わない。事実だけ。
  2. 構造の提示(20分):KPIツリーで「主要→先行→行動」の因果を説明する。
  3. 行動KPIの再設計(20分):3択で整理する
    • 継続
    • 条件変更
    • 撤退
  4. 経営判断(10分):決めるのは経営。伴走側は決めない。

運用の成否を分けるのは文化です。

  • 撤退は失敗ではなく、仮説検証の完了
  • 撤退判断が早いほど、学習速度が上がる

5. お客様側の具体作業(役割分担を固定する)

経営層

  • KGI/主要KPIの優先順位確認
  • 行動KPIの採否決定

管理層

  • 先行KPIの原因仮説提示
  • 現場実行可否判断
  • 実験設計(行動KPI入替案の準備)

現場

  • 行動KPIの実行
  • 実行ログ入力(構造化)

役割が曖昧なまま回すと、必ず現場が疲弊します。だから、役割は固定します。


6. KPIツリーの使い方:議論の地図として使う

KPIツリーは「数字を管理する道具」ではありません。議論の地図です。

  • 議論が逸れたらツリーに戻す
  • 感覚論が出たらツリーに戻す
  • 責任の所在を明確にする

ツリーがあるから、「どの階層で止まっているか(構造)」が分かります。


7. 伴走支援の本質:可視化屋で終わらず、意思決定屋になる

ITベンダーのままだと“可視化屋”で終わります。ダッシュボードは作れても、意思決定が変わらない。

診断士として伴走するなら、踏み込むべきはここです。

  • 因果の整理
  • 優先順位の設計
  • 撤退判断の設計

ここまで入って初めて「伴走」になります。

伴走会議におけるこちらの価値は、意思決定の質を上げること

KPIツリーは「数字を管理する道具」ではなく、判断を速く、軽くするための装置です。

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