KPIツリーを何本も書いていると、
「それっぽく見えるけれど、なぜか使われない」
そんなツリーに出会います。
最初は、
「指標の知識が足りないのでは?」
「業界理解が浅いのでは?」
と思っていました。
でも最近、はっきり分かってきました。
KPIツリーが壊れる原因は、指標知識の不足ではない。
主要KPI・先行KPI・行動KPIの“役割”が混ざった瞬間に壊れる。
今日は、その壊れ方の典型パターンを整理します。
まず、3つのKPIの役割を再確認する
私の中での定義は、かなりシンプルです。
- 主要KPI
・経営が目指す「到着状態」
・方向性そのもの
・定性でもOK、売上構成比などの定量でもOK - 先行KPI
・主要KPIに至る「途中の状態」
・戦略が正しく進んでいるかを観測する指標
・例:リピート率、用途定着率、歩留まり率 - 行動KPI
・人が実際にやること
・誰が、何を、どれだけやるかが想像できる
・例:企画数、改善件数、提案件数
この役割が混ざった瞬間、KPIツリーは壊れます。
パターン①:そもそも「数字の羅列」から始まる
一番多い壊れ方です。
いきなり、
- 売上構成比
- 原価率
- リピート率
と、書きやすい数字から並べてしまう。
でも、ここで決定的に欠けている問いがあります。
この会社は、今どんな「方向」を目指しているのか?
この問いに答えないまま数字を置くと、
- それは主要KPIなのか
- 先行KPIなのか
- 行動KPIなのか
自分でも分からなくなります。
結果、できあがるのは
KPIツリーではなく、単なる管理表です。
パターン②:主要KPIと先行KPIが同じ意味になる
これも非常によく見ます。
例としては、
- 主要KPI:ブランド売上構成比
- 先行KPI:ブランド売上構成比
あるいは、
- 主要KPI:売上構造の転換
- 先行KPI:売上構成比
一見違うようで、実質同じことを言っています。
これは、
- 「状態そのもの」
- 「状態を測るもの」
が分離できていない状態です。
この瞬間、ツリーは上下につながらなくなります。
この場合は、売上構成比を主要KPIに置くのが正解です。
同じ意味の指標を主要KPIと先行KPIの両方に置いた瞬間、
先行KPIの存在意義は消えます。
パターン③:先行KPIを、行動KPIとして扱ってしまう
これも非常に多い。
例として、
- 行動KPI:リピート率を上げる
- 行動KPI:認知を高める
でも、
- リピート率
- 認知
は、行動ではありません。
これは、
- 先行KPI(観測する状態)
- 行動KPI(操作)
を取り違えている状態です。
行動KPIは必ず、
- 誰が
- 何を
- どれだけ
がイメージできなければいけません。
ここを間違えると、現場は「で、何をすればいいの?」となります。
パターン④:フェーズが変わっても、主要KPIを更新しない
KPIツリーは、一度作ったら永久に使うものではありません。
にもかかわらず、
- 立ち上げ期
- 成長期
で、主要KPIを切り替えないまま使い続けると壊れます。
例えば、
- 立ち上げ期:主要KPI=ブランド価値
- 成長期に入っても:主要KPI=ブランド価値のまま
この状態では、
- 売上構成比
- リピート率
の位置づけが曖昧になります。
フェーズが変われば、到着状態も変わる。
到着状態が変われば、主要KPIも変わる。
これを更新しないと、ツリーは機能しなくなります。
パターン⑤:「測れるから置く」になった瞬間
最後に、これです。
・データがある
・システムで取れる
という理由だけでKPIに置いてしまう。
その結果、
- 重要だが測れない状態 → 消える
- 測れるが本質でない指標 → 残る
本来、KPIツリーは経営の思考を可視化する設計図です。
測定可能性を優先した瞬間、
設計図ではなく管理表に変わります。
気付きポイント:怪しいと思ったら、この順で見直す
KPIツリーが怪しいと感じたら、私は次の順で見直します。
- 今、経営が目指す到達状態は何か(主要KPI)
- その途中状態を何で観測するか(先行KPI)
- その観測値を動かす操作は何か(行動KPI)
この順番が崩れた瞬間、KPIツリーは壊れます。
まとめ
KPIツリーが壊れる原因は、指標選択のミスではありません。
- 到着状態を決めずに数値を書く
- フェーズが変わっても状態を変えない
- 観測(先行)と操作(行動)を混ぜる
- 測れる数字から置いてしまう
このどれかが起きた瞬間、ツリーは意味を失います。
KPIツリーとは、数字の体系ではない。
経営の「状態遷移」を描く設計図である。
修行はまだ続きますが、
「壊れる瞬間」が見えるようになっただけでも、
一段、前に進んだ気がしています。

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