KPIツリー作成のスキルアップ⑥〜KPIツリーが壊れる「典型パターン」〜

DX・IT

KPIツリーを何本も書いていると、
「それっぽく見えるけれど、なぜか使われない」
そんなツリーに出会います。

最初は、
「指標の知識が足りないのでは?」
「業界理解が浅いのでは?」
と思っていました。

でも最近、はっきり分かってきました。

KPIツリーが壊れる原因は、指標知識の不足ではない。
主要KPI・先行KPI・行動KPIの“役割”が混ざった瞬間に壊れる。

今日は、その壊れ方の典型パターンを整理します。


まず、3つのKPIの役割を再確認する

私の中での定義は、かなりシンプルです。

  • 主要KPI
    ・経営が目指す「到着状態」
    ・方向性そのもの
    ・定性でもOK、売上構成比などの定量でもOK
  • 先行KPI
    ・主要KPIに至る「途中の状態」
    ・戦略が正しく進んでいるかを観測する指標
    ・例:リピート率、用途定着率、歩留まり率
  • 行動KPI
    ・人が実際にやること
    ・誰が、何を、どれだけやるかが想像できる
    ・例:企画数、改善件数、提案件数

この役割が混ざった瞬間、KPIツリーは壊れます。


パターン①:そもそも「数字の羅列」から始まる

一番多い壊れ方です。

いきなり、

  • 売上構成比
  • 原価率
  • リピート率

と、書きやすい数字から並べてしまう。

でも、ここで決定的に欠けている問いがあります。

この会社は、今どんな「方向」を目指しているのか?

この問いに答えないまま数字を置くと、

  • それは主要KPIなのか
  • 先行KPIなのか
  • 行動KPIなのか

自分でも分からなくなります。

結果、できあがるのは
KPIツリーではなく、単なる管理表です。


パターン②:主要KPIと先行KPIが同じ意味になる

これも非常によく見ます。

例としては、

  • 主要KPI:ブランド売上構成比
  • 先行KPI:ブランド売上構成比

あるいは、

  • 主要KPI:売上構造の転換
  • 先行KPI:売上構成比

一見違うようで、実質同じことを言っています。

これは、

  • 「状態そのもの」
  • 「状態を測るもの」

が分離できていない状態です。

この瞬間、ツリーは上下につながらなくなります。

この場合は、売上構成比を主要KPIに置くのが正解です。

同じ意味の指標を主要KPIと先行KPIの両方に置いた瞬間、
先行KPIの存在意義は消えます。


パターン③:先行KPIを、行動KPIとして扱ってしまう

これも非常に多い。

例として、

  • 行動KPI:リピート率を上げる
  • 行動KPI:認知を高める

でも、

  • リピート率
  • 認知

は、行動ではありません

これは、

  • 先行KPI(観測する状態)
  • 行動KPI(操作)

を取り違えている状態です。

行動KPIは必ず、

  • 誰が
  • 何を
  • どれだけ

がイメージできなければいけません。

ここを間違えると、現場は「で、何をすればいいの?」となります。


パターン④:フェーズが変わっても、主要KPIを更新しない

KPIツリーは、一度作ったら永久に使うものではありません。

にもかかわらず、

  • 立ち上げ期
  • 成長期

で、主要KPIを切り替えないまま使い続けると壊れます。

例えば、

  • 立ち上げ期:主要KPI=ブランド価値
  • 成長期に入っても:主要KPI=ブランド価値のまま

この状態では、

  • 売上構成比
  • リピート率

の位置づけが曖昧になります。

フェーズが変われば、到着状態も変わる。
到着状態が変われば、主要KPIも変わる。

これを更新しないと、ツリーは機能しなくなります。


パターン⑤:「測れるから置く」になった瞬間

最後に、これです。

・データがある
・システムで取れる

という理由だけでKPIに置いてしまう。

その結果、

  • 重要だが測れない状態 → 消える
  • 測れるが本質でない指標 → 残る

本来、KPIツリーは経営の思考を可視化する設計図です。

測定可能性を優先した瞬間、
設計図ではなく管理表に変わります。


気付きポイント:怪しいと思ったら、この順で見直す

KPIツリーが怪しいと感じたら、私は次の順で見直します。

  1. 今、経営が目指す到達状態は何か(主要KPI)
  2. その途中状態を何で観測するか(先行KPI)
  3. その観測値を動かす操作は何か(行動KPI)

この順番が崩れた瞬間、KPIツリーは壊れます。


まとめ

KPIツリーが壊れる原因は、指標選択のミスではありません。

  • 到着状態を決めずに数値を書く
  • フェーズが変わっても状態を変えない
  • 観測(先行)と操作(行動)を混ぜる
  • 測れる数字から置いてしまう

このどれかが起きた瞬間、ツリーは意味を失います。

KPIツリーとは、数字の体系ではない。
経営の「状態遷移」を描く設計図である。

修行はまだ続きますが、
「壊れる瞬間」が見えるようになっただけでも、
一段、前に進んだ気がしています。

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