なぜ私は、経営診断で「正解」を出さないのか──KPIで“判断できる状態”をつくるという仕事

経営・リーダーシップ

中小企業の診断記事を書くとき、

わたしは「正解を提示すること」をゴールにしていません。

目指しているのは、

経営者が“次の一手を判断できる状態”をつくることです。

診断とは、答えを教える仕事ではありません。

判断材料を整理し、決断できる状態をつくる仕事だと考えています。

この記事では、

わたしが普段どんな考え方・プロセスで診断記事を書いているのかを整理します。

① 診断は、経営者の「決意」から始める

最初に見るのは、数字ではありません。

経営者が、なぜ変わろうとしたのかです。

市場縮小、災害、制度変更、売上急減、資金難、世代交代。

どんな企業にも「転換点」があります。

この決意が曖昧なままでは、

どんな戦略も、どんな施策も長続きしません。

だから診断ではまず、

「この会社は、どこで覚悟を決めたのか」

を言語化するところから始めます。

② 外部環境は「言い訳」ではなく「前提条件」

中小企業を取り巻く環境は厳しい。

それは事実です。

ただし、外部環境は

「嘆く材料」ではなく、戦略を考える前提条件です。

・市場は本当に縮んでいるのか

・縮んでいるのは量か、価格か

・顧客はどこへ移っているのか

ここを冷静に整理しないまま、

「頑張る」「工夫する」では再現性がありません。

③ 強みは“いい話”ではなく「事業資産」として見る

診断でよくある失敗は、

「技術が高い」「歴史がある」で終わってしまうことです。

わたしは必ず、次の問いで整理します。

・その強みは、誰に効くのか

・どの工程・プロセスに宿っているのか

・なぜ他社が真似しにくいのか

強みは美談ではなく、

再利用できる事業資産として捉えます。

④ 原価構造・固定費構造から“詰まりどころ”を見る

戦略を語る前に、

必ず見るポイントがあります。

それは、

この会社は、どこで利益が詰まる構造なのかです。

・固定費型か、変動費型か

・人に依存しているのか、設備に依存しているのか

・売上が伸びても利益が出ない構造ではないか

ここを見誤ると、

成長策がかえって会社を苦しめます。

⑤ KGI → KPIツリーで「因果」を見える化する

診断の中心が、ここです。

・KGIは何か(売上ではなく、利益か、将来価値か)

・そのKGIは、何によって分解できるのか

・それは結果指標か、先行指標か

KPIは多ければ良いわけではありません。

因果が通っているかがすべてです。

「やっていること」ではなく、

「効いていること」だけを残します。

⑥ 可能性を広げすぎず、経営判断の重みを残す

診断記事では、

あえて「やらない選択肢」も示します。

・できそうだが、今はやるべきでない

・将来はあり得るが、今は体力不足

・魅力はあるが、カニバリが大きい

診断士の役割は、

夢を語ることではなく(わたしにそんなことはできず)、

意思決定を軽くしすぎないことだと考えています。

⑦ 結論は断定しない。判断は経営者に委ねる

わたしの診断は、結論を断定しません。

代わりに、

・なぜこれが課題だと考えるのか

・なぜこのKPIが重要だと考えるのか

・どんなリスクがあるのか

その根拠を、すべて示します。

判断するのは、経営者です。

診断は、その判断を前に進めるための材料にすぎません。

⑧なぜ、ITベンダーでありながら経営診断をしているのか

わたしは、ITベンダーとして長く仕事をしてきました。

システム導入、データ活用、業務改善。

多くの企業の現場を見てきました。

その中で、ずっと感じていた違和感があります。

システムは入る。データも出る。

でも、経営判断が前に進まない。

経営課題と、システムがつながっていない

多くの現場で起きているのは、次のような状態です。

・KGIが曖昧なままKPIが並ぶ

・見たい数字と、取れるデータがズレている

・「見える化」しただけで満足してしまう

つまり、

経営の問いが定義されないまま、システムが作られている

ITは正しく動いている。

でも、意思決定には使えない。

診断士の視点で見えた「足りない工程」

中小企業診断士として経営を見るようになり、

欠けていたものがはっきりしました。

それは、

経営課題を“判断できる形”に翻訳する工程です。

・この会社のボトルネックは何か

・どのKPIが利益と因果でつながっているのか

・そのKPIは、実データで計算できるのか

ここを設計しない限り、

どんな高機能なシステムも使われません。

ITベンダー × 診断士である理由

だから、わたしは

「診断だけ」も

「システムだけ」もやりません。

・診断で終わらせず

・構想で終わらせず

・データが実際に取れるところまで落とす

KGI → KPI → データ → 行動

この一連を、現実的に回る形でつなぐ。

それが、

ITベンダーと診断士、両方の立場を経験してきた

わたしの役割だと思っています。

まだ道途上ですが、こういったハイブリッドな診断士を目指してます。

診断記事は、その縮図

わたしの診断記事は、

「正解」を示すためのものではありません。

・なぜこのKPIなのか

・なぜこの打ち手なのか

・なぜ今やるのか、やらないのか

その判断材料を、

ストーリーと構造で整理する。

言い換えれば、

経営判断のための設計図です。

おわりに|診断とは「地図を描く仕事」

診断とは、

答えを教えることではなく、

迷わず進める地図を描く仕事だと思っています。

進むか、戻るか、止まるか。

その選択ができる状態をつくる。

診断士として考え、

ITベンダーとして実装を知る。

だからこそ、「使われる診断」だけをやりたい。

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