日本茶の街で70年以上続く老舗、東京繁田園茶舗。かつては「置いておけば売れる」時代がありました。
昭和天皇にも献上した品質。歴史、格式、実績すべてが整っていた――しかし1990年代、ペットボトル茶の台頭は大きな転換点になります。
売上は4分の1に激減。
「5年後には店を閉めるだろう」と周囲から言われるほどの苦境。しかし三代目は腹をくくります。
どうせ続けるなら、自分のやり方で前向きにやり抜く。
ここから老舗復活の物語がスタートしました。
■ 強み:歴史と品質と“本物をつくる覚悟”
- 1番茶を「手摘み」で買い付ける徹底した品質主義
- 珍しい釜入り製法(職人が少なく希少)
- 50種類以上の多彩なラインナップ
- ジャパンフェスティバルにも出展できる品質
- クラウドファンディングも成功させるコアファンの存在
繁田園のお茶は、「ただの飲み物」ではなくつくり手の矜持そのものです。
■ 経営改革:スリム化と“伝わる工夫”で再浮上
- 商品・人・業務をスリム化し集中投資
- パッケージ裏に“おいしい淹れ方”を明記
- SNSで歴史・製法を発信
- お茶教室で顧客体験を提供
- POS導入で店舗のDXを推進
- 海外向けに販路拡大(売上の10%が海外)
老舗が「守る」だけでなく「変わる」姿勢を示したことが、次の成長へつながりました。
■ 診断士としての視点:東京繁田園がさらに伸びる戦略
① 伝える:お茶を“用途別ブランド”にする
お茶は「効能×シーン」で語ると刺さりやすくなります。
- 朝スッキリしたい人向け
- 夜ぐっすり眠りたい人向け
- 集中力を上げたい人向け
- リラックスしたい人向け
さらに:
- 釜入り製法のストーリー発信
- お茶成分(カフェイン・テアニンなど)の数値説明
- 茶畑見学ツアー
- 「自分だけのお茶作り」ワークショップ
② 広げる:BtoBの柱で安定収益を確保
- 介護施設へ「飲みやすい日本茶」提案
- 学校の食育・文化教育との連携
- 自治体と組んだ観光×日本茶プロジェクト
③ 海外向けサブスク(月1“お茶便”)
海外市場は「量より質」。日本茶は大きなチャンスがあります。既存のサービスを使うことで、決済時や法規制遵守のトラブルを避ける(主要な商品から少しずつ開始しましょう)
- 月1回の茶葉セット
- 産地・製法のストーリーブック
- オンライン茶講座
- ティーバッグの簡易セット
④ コラボ:香り・インテリア・化粧品へ広げる
- 緑茶アロマ・茶染め雑貨
- ホテル・旅館と連携したウェルカムドリンク
- カテキンを生かしたスキンケア
⑤ IT化:パーソナル茶診断
AIを活用し、好みや生活に合わせた茶葉を提案。
“お茶のパーソナルカラー診断”のような仕組みは、購買体験を一気にアップさせます。
⑥ 組織改革:釜入り茶マイスター育成
- 製法の体系化
- 動画マニュアル
- 若手育成制度の構築
- 名刺に「釜入り茶マイスター認定」を提示
技術継承はブランドの生命線。見える化することで採用力も上がります。
■ まとめ:老舗は“変わらない強み”と“変わり続ける姿勢”で生き残る
東京繁田園茶舗の挑戦は、老舗再生のひとつの答えです。
- 歴史と品質を言語化する
- 体験をブランド化する
- DXで効率化する
- 海外市場に挑戦する
- ファンとの関係を深める
老舗だからこそ、変わる価値がある。 繁田園茶舗の歩みは、そのことを示しています。


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