成長企業は何を見直しているのか。経営者が確認すべき10のポイント

勝手に企業診断

企業分析を続けていると、成長している会社には共通点があることに気づく。

もちろん、業種も規模も違う。

製造業もあれば、小売業もある。

老舗企業もあれば、ベンチャーもある。

それでも、

「なぜこの会社は伸びたのか」

を整理していくと、似たような構造が何度も現れる。

逆に、停滞している企業にも共通点がある。

誰にでも売ろうとする。

商品そのものを売る。

依頼が来るまで待つ。

売上ばかり追う。

一度売ったら終わり。

仕事はベテラン頼み。

技術があれば何とかなると思う。

販促は展示会頼み。

経営判断は勘と経験。

人材育成も現場任せ。

一つひとつは珍しい話ではない。

しかし、これらが積み重なると、なかなか利益が残らない会社になる。

そこで、これまで分析してきた成長企業の共通点をもとに、

経営者が一度は確認しておきたい10の見直しポイント

として整理してみた。

① 誰に売るか――「誰でも顧客」になっていないか

最初に見るべきなのは顧客である。

停滞企業では、

「売れるなら誰にでも売る」

となりがちだ。

しかし、すべての顧客が同じ利益をもたらしているわけではない。

大量に購入してくれる顧客。

リピートしてくれる顧客。

対応工数が少ない顧客。

高付加価値商品を選んでくれる顧客。

反対に、売上は大きくても、

値引き要求が多い。

問い合わせが多い。

小口配送が多い。

営業工数がかかる。

という顧客もいる。

成長企業は、「売上の大きい顧客」ではなく、自社にとって価値の高い顧客を見極めている。

見るべき指標の一つが、

高収益顧客売上比率

である。

売上を増やす前に、

「誰の売上を増やすのか」

を考える必要がある。

② 何を売るか――商品ではなく「用途・価値」を売れているか

次は商品である。

タオルを売る。

海苔を売る。

バケツを売る。

梅干しを売る。

これだけでは、競合と比較される。

しかし、

「癒しを感じるタオル」

「ラーメンに最適な海苔」

「米をおしゃれに保存するバケツ」

「おやつとして楽しむ梅」

となれば、顧客が感じる価値は変わる。

成長企業は商品そのものではなく、

誰の、どんな場面で、どのような価値を提供するのか

を考えている。

見るべき指標は、

高付加価値商品売上比率

や、

用途別商品売上比率

である。

「何を作るか」より、

「何のために使われるか」

を考える。

これだけで商品戦略は大きく変わる。

③ どこから入るか――依頼されてから動いていないか

製造業では特に重要なポイントである。

顧客から図面をもらう。

そのとおりに作る。

納品する。

この仕事では、どうしても価格と納期で比較される。

一方、成長企業は、その一段前から入る。

企画。

設計。

試作。

商品開発。

「何を作るか」が決まる前から関与する。

そうすると、自社の技術を活かした提案ができる。

仕様にも影響を与えられる。

当然、価格決定力も高くなる。

見るべき指標は、

企画段階からの参画案件比率

である。

下請けから抜け出したいなら、

「もっと営業する」

だけでは弱い。

仕事を受ける位置そのものを前へ動かす

必要がある。

④ どう利益を残すか――売上だけを追っていないか

「売上10億円を目指す」

経営計画ではよく見る言葉である。

しかし、売上が増えても利益が減る企業は存在する。

低粗利案件が増える。

値引きする。

人手が増える。

配送回数が増える。

特注対応が増える。

結果として、

「忙しくなったのに儲からない」

という状態になる。

成長企業が見ているのは、売上だけではない。

どの商品が儲かるか。

どの顧客が儲かるか。

どの案件が儲かるか。

を見ている。

基本となる指標は、

粗利率

である。

場合によっては、

顧客別貢献利益。

商品別粗利率。

案件別粗利率。

まで見る。

売上は結果である。

大切なのは、

利益が残る売上を増やすこと

だと思う。

⑤ どう継続させるか――売ったら終わりになっていないか

新規顧客を獲得するのは大変である。

営業する。

広告を出す。

展示会へ行く。

提案する。

ようやく買ってもらう。

ところが、一度販売したら終わり。

そして翌月、また新しい顧客を探す。

これでは営業コストが下がらない。

成長企業は、一度つながった顧客との関係を長くする。

リピート。

定期契約。

保守。

会員制度。

関連商品。

法人契約。

つまり、

LTVを伸ばす。

見るべき代表的な指標は、

リピート率

である。

さらに、

継続契約率。

平均購入回数。

顧客単価。

関連商品購入率。

などを見る。

「どう売るか」だけではなく、

どうすれば、もう一度選んでもらえるか

を考えることが重要である。

⑥ どう作るか――その仕事は、その人しかできないのか

成長企業を見ていると、売上拡大の前に壁になるものがある。

供給力である。

職人にしか作れない。

ベテランしか判断できない。

営業のエースしか提案できない。

社長しか商品開発できない。

これでは、需要が増えても会社は成長できない。

だから、成長企業は仕事を分解する。

熟練者でなければできない仕事。

若手でもできる仕事。

機械化できる仕事。

外部へ任せられる仕事。

それぞれを分ける。

見るべき指標は、

工程標準化率

である。

ただし、何でも標準化すればよいわけではない。

ブランド価値を生む最後の職人技は残す。

それ以外を仕組みに変える。

このバランスが重要になる。

⑦ 何で差別化するか――「技術力があります」で終わっていないか

中小企業の会社案内を見ると、

「高い技術力」

という言葉をよく見る。

しかし、競合企業も同じことを書いている。

技術だけでは、顧客には違いが伝わらない。

成長企業は、技術を顧客に分かる価値へ変えている。

高い加工技術を、

「飾りたくなるトロフィー」

へ変える。

高品質な綿を、

「幸せを感じるタオル」

へ変える。

木工技術を、

「和の高級空間」

へ変える。

技術に、

用途。

デザイン。

ブランド。

ストーリー。

を組み合わせる。

見るべき指標の一つが、

自社ブランド売上比率

である。

技術は重要である。

しかし、技術は「素材」にすぎない。

顧客から選ばれる形に翻訳できているか

が問われる。

⑧ どう販促するか――展示会に出て終わっていないか

中小企業の販促では、

展示会。

ホームページ。

チラシ。

SNS。

などが使われる。

しかし、手段だけを導入しても成果は出ない。

成長企業が大切にしているのは、

顧客との直接接点

である。

直営店。

工場見学。

体験イベント。

ワークショップ。

コミュニティ。

購入後アンケート。

顧客と直接話すことで、

なぜ買ったのか。

どこで使ったのか。

何が良かったのか。

どんな商品が欲しいのか。

が分かる。

その情報が、次の商品開発や販促につながる。

見るべき指標は単純な広告回数ではなく、

顧客との有効接点数

や、

顧客の声を取得できた件数

の方がよいかもしれない。

販促とは、商品を知らせるだけではない。

顧客を知る活動でもある。

⑨ どう判断するか――経営会議が報告会になっていないか

データを集めている企業は多い。

売上。

原価。

顧客数。

在庫。

しかし、その数字を見ているだけでは経営は変わらない。

重要なのは、

「数字を見て、何を変えたか」

である。

高収益顧客が分かった。

では、営業先を変えたのか。

不採算商品が分かった。

では、価格を上げたのか、やめたのか。

リピート率が低い。

では、顧客へのフォロー方法を変えたのか。

成長企業では、データが意思決定につながっている。

見るべき指標は、

単純な「KPI活用率」より、

KPIを起点に実施した改善件数

や、

KPI会議で決定した施策の実行率

まで踏み込んでもよい。

データドリブン経営とは、

数字を見る経営ではない。

数字によって行動を変える経営

である。

⑩ どう育てるか――「背中を見て覚えろ」になっていないか

最後は人材育成である。

人材不足の会社ほど、育成を現場任せにしていることがある。

ベテランが忙しい。

新人に教える時間がない。

結局、簡単な仕事しか任せられない。

ベテランはさらに忙しくなる。

悪循環である。

成長企業では、

工程を分ける。

マニュアルを作る。

動画を残す。

相談役を決める。

段階的に仕事を任せる。

など、育成そのものを仕組みにしている。

見るべき指標は、

若手単独完了工程比率

である。

入社人数よりも、

「入社した人が、どこまで一人で仕事ができるようになったか」

を見る。

人材育成とは研修回数を増やすことではない。

組織として任せられる仕事を増やすこと

である。

10項目を一枚にすると、会社の現在地が見える

ここまでの内容を整理すると、次のようになる。

見直しポイント成長企業停滞企業指標例
①誰に売るか顧客を絞る誰でも顧客高収益顧客比率
②何を売るか用途・価値を売るモノだけ売る高付加価値商品比率
③どこから入るか上流から参画依頼待ち企画参画率
④どう利益を残すか利益重視売上重視粗利率
⑤どう継続させるかLTVを伸ばす単発売切りリピート率
⑥どう作るか標準化・仕組み化属人化工程標準化率
⑦何で差別化するか技術+ブランド技術だけブランド売上比率
⑧どう販促するか顧客接点を持つ展示会頼み有効顧客接点数
⑨どう判断するかデータで改善勘と経験KPI起点改善実行率
⑩どう育てるか育成を仕組み化ベテラン任せ若手単独完了率

もちろん、すべての企業が10項目すべてを改善する必要はない。

重要なのは、

今、自社の成長を止めているものはどれか

を見極めることである。

全部やろうとしない

このフレームを使う際に、一つ注意したいことがある。

10項目全部を改善しようとしないことである。

経営資源には限界がある。

特に中小企業では、

人。

お金。

時間。

すべてが限られている。

だから、最初にやるべきなのは、

10項目を1〜5点で自己評価してみることだと思う。

例えば、

①顧客 4点
②商品 5点
③上流参画 2点
④利益管理 1点
⑤LTV 2点
⑥標準化 1点
⑦ブランド 4点
⑧顧客接点 3点
⑨データ活用 1点
⑩育成 2点

となったとする。

そこで、

「全部改善しましょう」

ではない。

利益へのインパクトが大きく、かつ改善可能なものを2〜3個に絞る。

例えば、

顧客別採算を可視化する。

熟練工程を標準化する。

リピーターを増やす。

この三つから始める。

経営戦略とは、やることを増やすことではない。

何を最優先で変えるかを決めること

である。

まとめ

100社以上の成長企業を見ていると、派手な成功法則があるわけではない。

むしろ、やっていることは基本的である。

儲かる顧客を知る。

価値の高い商品を作る。

上流から仕事に入る。

粗利を見る。

顧客との関係を続ける。

仕事を仕組みにする。

ブランドを作る。

顧客と直接話す。

数字を見て改善する。

人が育つ仕組みを作る。

ただし、停滞している企業では、この基本が意外とできていない。

だから経営者にとって重要なのは、

新しい経営手法を探し続けることよりも、

自社の経営構造のどこが古くなっているのかを、一度立ち止まって確認すること

なのかもしれない。

誰に売っているのか。

何を売っているのか。

どこから仕事に入っているのか。

どう利益を残しているのか。

どう継続購入につなげているのか。

どう作っているのか。

何で差別化しているのか。

どう顧客とつながっているのか。

どう意思決定しているのか。

どう人を育てているのか。

この10個の問いに答えるだけでも、会社の現在地はかなり見えてくる。

そして最後に、もう一つだけ問いたい。

「この10項目の中で、いま会社の成長を最も止めているものは何か。」

そこが、次に経営者が手をつけるべき場所なのだと思う。

コメント

にほんブログ村 経営ブログへ
にほんブログ村