「冷凍パン」で“上質な時間”を届ける──スタイルブレッドの再挑戦

勝手に企業診断

群馬県桐生市に本社を置くパンメーカー、スタイルブレッド。同社は「パンを通じて上質な時間を提供する」という理念のもと、冷凍パンという新しい市場を切り拓いてきた。

しかし、その道のりは決して平坦ではない。冷凍パン事業の構想を打ち出した当初、社内では強い反発が起きたという。
「パンは焼きたてでこそおいしい」──多くの職人たちがそう信じ、退職を選んだ。それでも経営者は「冷凍だからこそ、品質を届けられる」と信じ、新会社を設立。そこから、世界を見据えたパンづくりの挑戦が始まった。

強み:科学と職人技が融合した“冷凍でもおいしい”パン

スタイルブレッドの最大の特徴は、桐生酵母と呼ばれる独自の発酵技術、そして低温長時間熟成という製法にある。この2つの技術により、パンの香りと食感を極限まで引き出すことができる。

さらに、独自の冷凍技術によって添加物を使わずに品質を保てる点も大きな強みだ。「冷凍パン」という概念を、“焼きたてに限りなく近いおいしさ”へと変えた功績は大きい。

事業展開:川下へ、そして世界へ

同社は業務用パンの製造からスタートしたが、近年では一般消費者向けEC販売にも力を入れている。自社ブランド「バンド」を立ち上げ、公式サイトを通じて“冷凍パンのある豊かな朝食”を提案。

また、スープ専門会社と連携し、ロスパンを再利用したスープ開発にも着手するなど、サステナビリティにも積極的だ。今後は海外市場への販路拡大も視野に入れており、「冷凍パン × 日本の職人技」が世界でどう評価されるか注目されている。

診断士としての視点:成長の鍵は「データ × 体験」

  1. 伝えるおいしさを科学で証明する 製造品質をデータで可視化し、「温度・発酵・焼成条件」などの裏付けを発信することで、説得力あるブランディングが可能。さらに美味しい焼き方や料理との相性などの情報をSNSや動画で発信し、ファンとの共創を促す。消費者と一緒に新商品を企画する“共感型ブランド”への進化も期待できる。
  2. IT化:製造と販売の両面で効率化を進める 製造工程の作業時間・人員データを可視化し、ボトルネックを分析。IoT化により温度や湿度を自動管理すれば、歩留まりの改善にもつながる。さらに、ECサイトの閲覧・購入ログを分析し、レコメンド配信購買傾向別メールマーケティングを行えば、顧客単価の向上が見込める。
  3. 川下への展開リアル×デジタルの融合 工場併設型のベーカリーを開設し、「製造の裏側を見せる体験型販売」を展開。さらに、月1回の冷凍パン定期便(サブスク)を提供すれば、安定収益とファン育成を両立できる。
  4. コラボ地域資源との共創 北海道産小麦や発酵バターを活用し、農家や職人と連携することで、“パンを通じた食文化の発信地”という立ち位置を確立できる。
  5. 絞る用途特化でブランドを磨く 「朝食に合うパン」「ワインに合うパン」「スープ専用パン」など、シーン別・用途別の提案を行うことで、差別化と購買意欲を高められる。

まとめ:理念を貫いた先に生まれた“新しい日常”

スタイルブレッドの歩みは、「信念を貫いた経営が新しい市場をつくる」好例だ。パンという普遍的な商品に、データと技術、そして想いを掛け合わせることで、“冷凍でも焼きたての感動を届ける”という新しい価値を実現した。

地域に根ざした職人技と、デジタルが融合する時代。その最前線に、スタイルブレッドの挑戦がある。

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