KPIツリー作成のスキルアップ⑮|行動KPIが効かないときの「次の一手」の設計

DX・IT

KPIツリーを回していると、必ずぶつかる壁があります。

  • 先行KPIは追っている
  • 行動KPIも定義して、現場は動いている
  • それでも、先行KPIがなかなか良くならない

この状態です。

このとき現場でよく起きる反応はこうです。

  • 「じゃあ、行動をもっと増やそう」
  • 「対象を広げよう」
  • 「回数を倍にしよう」

しかし、ここで強く言いたい。

行動KPIが効かないときにやるべきことは、行動を増やすことではありません。

やるべきなのは、次の2つです。

  • その行動が効く「条件」を見直す
  • 効かなかったときの「撤退ライン」を決め直す

行動KPIが効かない典型ケース

例えば、こんなケースを考えます。

先行KPI
KM単価を上げたい

そのために定義した行動KPI
赤字車両5台に特定し、荷主交渉を実施

現場は動いた。交渉もした。
それでも、KM単価は改善しない。

さて、どうするか。

ここで「交渉対象を10台に増やそう」は、ほぼ失敗します。
理由は単純で、「この行動が、どんな条件のときに効くのか」を何も整理していないからです。


次の一手に使うスキルは「統計+生成AI」

この局面で使えるのが、統計と生成AIの組み合わせだと考えています。

わたしなら、次の手順を踏みます。


0.前提|数値と非数値を、ちゃんとデータとして持つ

まず前提です。以下の2種類のデータを、同じ土俵に載せます。

  • 運行実績、収益実績などの数値データ
  • 営業日報、交渉メモ、メール履歴、問い合わせ内容などの非数値データ

ここで重要なのは、非数値データも「事実として記録されていること」です。
記憶や印象は使いません。


① 生成AIで変数を“網羅的に”出す(探索)

最初にやるのは、仮説を絞ることではありません。
可能性を広げることです。

例えば、こんな問いを投げます。

過去の便単価交渉データにおいて、交渉後の便単価変化と一緒に変動した項目を重要度順に列挙せよ

すると、例えばこんな変数が出てきます。

  • 距離
  • 便数
  • 売上構成比
  • 荷主別売上順位
  • スポット比率
  • 再配車回数
  • 遅延回数
  • 問い合わせ件数
  • 契約年数

人の頭だけでは出にくい切り口も含めて、一旦すべて出します。
この段階の生成AIの役割は、探索です。


② 統計で「効きそうな条件」をふるいにかける(スクリーニング)

次にやるのが統計です。

①で出した変数のうち、数値化できるものだけを使い、目的変数を「KM単価」として重回帰分析を行います。

ここでやりたいのは、これだけ。

  • どの条件が、数字的に効いていそうか
  • どの条件は、ほぼ関係なさそうか

きれいなモデルを作る必要はありません。むしろ現実は、

  • サンプルが少ない
  • 交互作用が多い
  • ノイズが多い

のが当たり前です。
この段階は、スクリーニングに徹するのが実務解です。


③ 統計結果を、生成AIで“業務の言葉”に翻訳する(非数値と突き合わせる)

ここからが肝です。

統計結果だけでは現場は動きません。
交渉の成否には、

  • 荷主の意思
  • 関係性
  • 代替可能性

といった非数値要素が強く効くからです。

だから、重回帰の結果をそのまま信じません。
代わりに、その結果を生成AIに渡し、非数値データと突き合わせて解釈させます。

ここでのポイントは1つ。生成AIには必ず制約をかけます。

  • 入力したデータに含まれる情報のみを使う
  • 一般論や推測は用いない
  • 非数値データは、事実として記録されているもののみ考慮する

これをやらないと、
「関係性が弱かったのでは」「信頼不足だったのでは」
と推測が混ざります。


生成AIができること(正しい使い方)

例えば、こんな形で「業務の言葉」に翻訳できます。

  • 便数が多いほど、交渉後の単価が維持・改善しやすい
  • 売上構成比が高い荷主ほど、改善率が高い
  • スポット比率が高いと、単価は悪化しやすい

さらに、改善ケースと悪化ケースを比較させると、条件の組み合わせが見えてきます。

改善パターン

  • 便数:多い
  • 売上構成比:高い
  • 専属:あり

悪化パターン

  • 便数:少ない
  • スポット比率:高い
  • 混載

行動KPIは「条件付き」に進化させる

ここまで来ると、次の一手は明確です。

もともとの行動KPIが、

赤字車両5台に特定し、荷主交渉

だったなら、こう変えます。

  • 月15便未満 × 売上構成比下位30%の荷主:交渉対象から外す
  • 月15便以上 × 売上構成比上位の荷主:優先交渉対象とする

つまり、行動を増やすのではなく、効く条件を付け足す

同時に、撤退ラインも決めます。

  • ◯ヶ月やって先行KPIが動かなければ撤退
  • その場合は別の打ち手に切り替える

まとめ

行動KPIが効かないときにやることは、こう整理できます。

  • ① 生成AI:変数の網羅的抽出(探索)
  • ② 統計:数値変数の効き方の確認(スクリーニング)
  • ③ 生成AI:数値結果の意味解釈/非数値データとの突き合わせ/パターン・境界の言語化

この①〜③の目的は、「正解の行動KPI」を出すことではありません。
行動KPIに条件撤退ラインを与え、次の意思決定をしやすくすることです。

最後に判断するのは人です。
ただし、統計と生成AIを正しく使えば、その判断はかなり楽になります。

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