金属板金加工と聞くと、どんなイメージを持ちますか?「汚い・きつい・危険」いわゆる3Kの世界。しかし、そのイメージを180度ひっくり返した町工場があります。それが1966年創業の「タシロ」。なんと従業員の平均年齢は28歳。さらに年間200人以上が応募してくる“超人気の町工場”なのです。
なぜここまで若者に選ばれるのか?そこには「覚悟ある経営改革」と「クリエイティブな挑戦」がありました。
「板金=ダサい」を変えるために、経営者が決意したこと
創業当初は自動車部品を製造。しかし価格競争に巻き込まれ、未来が描けなくなります。そこで社長は大きな決断をしました。
- 幅広い板金加工を受ける「総合型工場」に転換
- 下請けだけでなく「自社製品」にも挑戦
- 3Kイメージから脱却し「クリエイティブな工場」を目指す
さらに「働き方」も徹底的に見直します。
- 残業ゼロ
- 休日を増やす
- 若手でも意見が言える組織
- 技術を見える化し、評価や昇給に反映
結果、「働いてみたい!」と若者が集まる工場に生まれ変わりました。
強みは「柔軟性」と「スピード」そして「人」
- 年間200社と取引(少量でも柔軟に対応)
- 一貫生産体制で最短24時間納品
- 若いメンバーによる新発想
- 年間200人以上の応募が来る人気企業
スピード×柔軟性×若さ。この3つを兼ね備えた町工場は、ほとんど存在しません。
自社製品がバズる!“町工場×クリエイティブ”の可能性
タシロの面白さは、自社製品への挑戦です。
- 3WAYピザ窯
- 猫の寝床(社員発案)
これらの商品はコンテストで受賞するほど話題に。町工場が“作業者”ではなく、“クリエイター”になる瞬間です。
組織づくりも一流
- スキルを見える化(評価・昇給の基準に)
- 営業マナーも指導(技術+信頼)
- 展示会・イベント・SNSで積極的に発信
「技術力があっても、伝わらないと意味がない」。この視点を持ち、ブランディングにも本気で取り組んでいます。
中小企業診断士としての視点:ここからさらに伸びる!
タシロは“伸びる会社の条件”を多く持っています。だからこそ、さらに成長させるためには次の視点が有効です。
1. 川下を広げる(新たな市場)
- キャンプ用品だけでなく、病院カート・介護フレーム
- キッチン用品・食器
- 医療・介護・食品など衛生系ジャンルは相性◎
2. 下請け vs 自社製品の「利益の見える化」
どちらにリソースを割くと最も効果が高いのか?利益構造を可視化することで、戦略的な意思決定ができます。おそらく、自社商品の方が利益率は高いが、あまりに少量生産だと、ロット替えなどの生産コストが利益にとっては逆効果となる場合も懸念される。一定以上のボリュームがあれば、高利益率を確保できそう。
3. 営業体制を強化する
- 自社内に営業体制を作る(社長自らが営業しているとのことだったので)
- 下請け用・自社商品用で営業を分ける
- 一貫生産+表面処理・組立まで対応できる強みを武器に商談
4. デザイナーとコラボして「魅せる製品」へ
技術力+デザインでインテリアや家具を開発。ブランド化による高付加価値戦略も狙えます。
5. 伝える力をさらに磨く
- 工場見学
- ワークショップ
- YouTube・SNSで「若手×モノづくり」の魅力を発信
まとめ:タシロは「町工場の未来型モデル」
- 3Kを逆手に取り、憧れられる工場へ
- 若者が集まり、成長し続ける組織
- スピードと柔軟性で取引先200社
- 自社製品×ブランディングで新しい価値を創造
タシロは「町工場の常識を壊し続ける企業」です。そしてこの姿勢こそが、これからの中小製造業に必要な“生存戦略”だと強く感じます。
今後さらに伸びる可能性を大きく秘めた、非常に面白い会社です。


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