運送会社が、食肉加工をやる。
一見すると、少し違和感がある。
しかし、この会社はそこから成長している。
南九州を拠点に、トラック80台、ドライバー100人、1日500件の配送。
さらに、食肉加工が売上の3割を占める。
なぜ、そんなことができたのか。
この会社は「運ぶ会社」ではない
まず、構造を整理する。
もともとはこうだった。
- 酪農家 → 牛を運ぶ(運送)
- 収益源 → 運賃(低単価・競争)
つまり、典型的な運送業だった。
しかし、ここに一手入れる。
- 酪農家 → 牛を運ぶ+加工する
これで何が起きるか。
- 単価が上がる
- 顧客のスイッチコストが上がる
- 競合が減る
つまり、「運ぶ会社」から「加工まで担うパートナー」へ変わった。
これは単なる多角化ではない。構造の変化だ。
DXの失敗が、この会社を変えた
この会社の転機は、成功ではない。むしろ失敗だ。
- 2,000万円かけた在庫管理システム
- 中身を理解しているのは1人
- その人が退職
- 結果、使えないシステムに
よくある話だ。
しかし、この会社はここで気づく。
「問題はシステムではない」
本当の問題は「属人化」
- 情報が個人に閉じている
- 業務が見えない
- 全体がつながっていない
だから、やったことはシンプルだった。
- DXチームを作る
- 半年は教育と意識統一に使う
- 次の半年で業務フローを見える化する
結果、
- 紙業務の削減
- 年間800時間削減
- 約180万円のコスト削減
につながった。
だが、本当に重要なのはここではない。
「全体を見る人」が増えた
この会社の最大の変化はこれだ。
会社全体を考える人が増えたこと
- 自分の部署だけでなく
- 前後工程を理解し
- 全体最適で考える
これができる組織は強い。
なぜなら、改善が自走するからだ。
強みは「仕組み」になっている
この会社の強みは3つある。
① 南九州の共同配送
コスト優位性と柔軟性がある。
② 運送+食肉加工
高付加価値化ができる。
③ 現場起点の改善体制
継続的な生産性向上ができる。
ここで重要なのは、どれも「人」ではなく、仕組みになっていることだ。
課題はシンプルに2つ
一方で、課題も明確だ。
① 固定費の回収
- 稼働率
- 実車率
ここがブレると一気に利益が崩れる。
② 価格決定権
- 運送は価格競争になりやすい
- 荷主に依存すると単価が下がる
つまり、「どの顧客を選ぶか」が重要になる。
戦略の方向性は間違っていない
今回の戦略は、方向としては良い。
短期
- 採算の可視化
- 高収益領域へのシフト
中期
- 酪農家向け一体サービス
長期
- エリア拡大
ただし、1点だけ修正した方がいい。
本当に見るべきは「稼働」ではなく「構造」
この会社の本質はここだ。
- 運送 → 稼働率
- 加工 → 歩留まり
これを別々に見ると弱い。
重要なのは、「運送と加工をどう組み合わせるか」だ。
- 加工することで運送が埋まる
- 運送することで加工が安定する
つまり、相互補完の構造である。
ここまで設計できると一気に強くなる。
結論
この会社の学びはシンプルだ。
DXで変わったのではない。構造が変わったのだ。
- 運ぶだけ → 加工まで
- 個人依存 → チーム
- 部分最適 → 全体最適
そして何より重要なのはこれだ。
仕組みで回る会社は、強い。
運送業は、基本的に苦しい。
- 固定費が重い
- 単価が上がらない
- 人に依存する
その中で勝つにはどうするか。
答えは一つ。「構造を変える」ことだ。
この会社は、それをやった。
だから、生き残る。そして、おそらく伸びる会社だ。


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