コミー|「ミラーを売る会社」ではなく、「安全確認を支える会社」へ

勝手に企業診断

「そんなもの、必要ないよ。売るのをやめた方がいい。」

これは、コミー創業者が最初に開発した商品──回転看板について、友人から投げかけられた言葉です。今でこそコミーは、独自開発した“写る角度が広い特殊ミラー”を武器に、世界100以上のエアラインに導入される存在になりました。客室の手荷物入れ等の安全確認用途で使われ、累計55万枚以上の実績を持ち、防犯対策にも活用されています。

しかし、その原点は「全く売れなかった」時代にあります。ここから先が、コミーという会社の“勝ち方”を最もよく表しています。


売れなかった理由は、技術ではなかった

創業当初、社長は「良いものを作れば売れる」と考えていました。回転看板も、技術的には決して悪いものではありません。それでも売れなかった。

そこで社長は、発想を切り替えます。

  • なぜ買われないのか?
  • そもそも誰の、どんな困りごとを解決しているのか?

そして、数少ない“買ってくれたユーザ”に徹底して話を聞きます。すると意外な使われ方が見えてきました。

  • 万引き防止に使われている
  • 死角をなくすために使われている

つまり、商品そのものではなく「安全を確保する用途」として価値が生まれていたのです。ここでコミーの軸が決まります。

技術を売るのではなく、「何を守れるのか」を売る会社になろう。


独自技術 × ユーザの声 = 世界標準へ

コミーの特殊ミラーの最大の特徴は「写る角度の広さ」です。一般的なミラーでは見えない死角を、自然な形で映し出す独自技術。ですが、コミーを“模倣困難”にしているのは、それ以上にユーザの声を吸い上げ、商品開発に反映する仕組みです。

どんな場所で使われているのか。何を確認したくて設置したのか。どんな不安を減らしたいのか。これらを徹底的に聞き、用途提案として磨き上げていく。その結果が、航空業界での導入実績となり、さらに他分野へ横展開できる“信用”になりました。

コミーは、技術 × 用途定義 × 実績という3点セットで参入障壁を作った、非常に強いBtoBメーカーです。


中小企業診断士としての評価|コミーは「売れる構造」を作った会社

診断士の視点で見ると、コミーの本質的な強みはここにあります。

  • 特殊ミラーというニッチ技術(差別化の核)
  • ユーザの声を構造的に商品開発へ反映する仕組み(学習する組織)
  • 航空業界という“安全が最優先される市場”での実績(信用の源泉)

この組み合わせにより、価格だけで比較されにくいポジションを確立しています。一方で、今後の課題も明確です。

  • 固定費を安定的に回収できる売上構造(ストック化)の強化
  • 大口法人からの価格圧力への備え(値引きされにくい設計)
  • 「ミラーメーカー」という誤解を超えたブランド再定義

目指すべき姿はシンプルです。

単なるミラーメーカーではなく、「安全確認をサポートする製品を提供する会社」

この定義に立つと、製品ラインナップの増減に一喜一憂せず、営業戦略も投資判断も一貫します。


短期|BtoBで“収益の柱”を太くする(ストック化の土台づくり)

短期でやるべきは、得意なBtoB領域で売上の再現性を高めることです。航空業界の実績を「移動・現場・公共」の安全領域へ翻訳して横展開します。

狙うべきターゲット(優先順)

  • 運送会社:倉庫内・荷捌き・車両周辺の死角対策
  • フェリー・船舶:通路・設備周辺の安全確認
  • 建設会社:重機・資材置場・危険箇所の視認性向上
  • 自治体:防災拠点・避難所・公共施設の安全運用

短期で効く“稼ぎ方の設計”

  • 売り切り→サブスクへ:レンタル、保守、定期交換をパッケージ化
  • 用途別パッケージ:「万引き防止」「現場安全」「交通安全」など用途起点で提案書をテンプレ化
  • 利益管理の徹底:顧客別・用途別・製品別の粗利を可視化し、“忙しいのに儲からない”を回避

さらに、社長の「売れなかった→ユーザの声を聞いた→用途提案にたどり着いた」というストーリーは、BtoB営業で極めて強い武器になります。“安全を守る会社”としてのブランド価値を、事例とともに発信していきます。


中期|BtoCで“利益率”を取りにいく(価値の再定義を生活へ)

中期は、BtoCの高付加価値用途で利益率を取りにいくフェーズです。ここで重要なのは「ミラー」ではなく「安心」を売ること。

用途提案(刺さるテーマ)

  • 一人暮らしの女性向け防犯(死角をなくす)
  • 高齢者の見守り・防犯(不安を減らす)
  • 車内の安全確認(小さな事故を減らす)
  • アウトドア・人混みでの防犯対策(自衛の安心)

また、自治体との連携で“売る”より先に“教える”設計が効果的です。

  • 高齢者向け防犯教室(体験+啓発)
  • 防災・安全イベントでの展示(用途を理解してもらう)
  • 導入後の使い方ガイド・チェックリスト配布(継続利用につなげる)

理解されれば価格競争になりにくい。コミーの強みは、まさにここで効きます。


長期|海外展開は“確実に、損せずに”(直販ではなく間接から)

海外展開は大きなチャンスですが、やり方を間違えると物流・返品・サポート負担で利益が溶けます。診断士としては、いきなり直販を推奨しません。

  • 商社経由、OEM経由で展開
  • 「安全性が課題となる地域」を優先ターゲットにする
  • 航空業界実績を“用途翻訳”して提案する

コミーはすでに“世界で信頼される実績”を持っています。次はそれを、航空以外の安全領域へ広げるだけです。


KPI設計|売上だけでなく「安全ブランド」を測る

最後に、KPIです。コミーは「売上」だけを追うと、価格圧力に巻き込まれます。利益とブランドを同時に追う設計が必要です。

KGI:営業利益率

  • 売上:用途別構成、海外売上比率
  • 利益:チャネル別利益、サブスク契約数、保守・定期交換比率
  • ブランド価値:法人サブスク継続率、自治体連携案件数、イベント数、SNS発信数・フォロワー数

「安全を支える会社として選ばれているか」を数値で追えるようにしておくと、社内の意思決定がブレません。


おわりに|コミーは「見えない不安」を映し出す会社

コミーが映しているのは、単なる景色ではありません。人が不安に感じる“死角”そのものです。

ユーザの声に耳を傾け、用途を定義し、技術を磨き続けたからこそ、世界のエアラインに選ばれました。これからは「安全確認を支えるブランド」として、さらに強く、広く社会に必要とされる会社になっていく。その伸びしろが、はっきり見える企業です。

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