Tシャツというと、「無地でシンプル」「大量生産」「低価格」──そんなイメージを抱く人も多いでしょう。
しかし、日本には “Tシャツをアートに変える企業” が存在します。茨城のプリント会社・丸昇です。
1985年創業、約100人規模。全国3,000社と取引するほどの実力派ですが、その歩みは決して順風満帆ではありませんでした。
■ 経営者の決意:ワンマンから“チーム経営”へ
かつての丸昇は、社長がすべてを決める“ワンマン経営”。現場の声は届かず、従業員の不満は蓄積。海外生産が台頭し、無地Tシャツの流行で価格競争に巻き込まれ、赤字へ転落します。
その空気を変えたのは、父からの一言。
「中小企業大学校に行ってみろ」
ここで経営者は初めて「経営理念」「SWOT分析」の重要性に触れ、会社の在り方を根本から見直すことに。
現在では、個人面談、成長シート、理念共有など対話型経営へ進化し、従業員との距離は圧倒的に縮まりました。
■ 丸昇の強み:ただのプリント屋じゃない
丸昇の技術は、もはやTシャツの枠を超えています。
- シルクスクリーン印刷:細かい模様・深い色・立体感の再現力
- 古着加工:ボケ感、サビ加工、ヴィンテージ表現
- 「新品から“味”を出す」高度な質感再現技術
この技術こそが、全国3,000社から依頼が集まる理由です。
■ 診断士としての提案① 無農薬コットン × 技術で“環境Tシャツ”という新市場を作る
丸昇はすでに無農薬コットンの栽培を始めています。この資産は大きい。
- 無農薬コットン
- 環境配慮の水性インク
- 国産加工
- ヴィンテージ加工
これらを組み合わせれば、SDGs対応の“高付加価値Tシャツ”が作れます。補助金も狙える領域です。
さらに、推しTシャツのヴィンテージ加工や、「あなただけの古着」を作る高級サービスも相性抜群です。
■ 診断士としての提案② 技術の横展開で“布プロダクトの総合メーカー”へ
丸昇の価値は「プリント × 質感 × 手仕事」。これは素材を選びません。
- ハンカチ
- タオル
- クッションカバー
- バッグ
- キャンバスアート
技術メニュー(ボケ感10種・古着加工5種など)を棚卸ししてメニュー化すれば、企画段階から参画できる(付加価値アップ)ようになります。
■ 診断士としての提案③ SNS × 職人技で“ファン化”を加速
丸昇の現場は、すべてがコンテンツです。
- インクを重ねる工程の動画
- ヴィンテージ加工の裏側
- 職人の手仕事
- スタッフのファッション提案
これらをSNSで発信することで、“知る人ぞ知るメーカー”から“バズるメーカー”へと変わる可能性があります。工場見学やプリント体験も相性良し。
■ 診断士としての提案④ CRMで3000社を“利益に変える”
3,000社という取引先は巨大な資産。CRMを導入してランク分けすれば、以下が可能になります。
- 優良顧客への企画提案
- サンプル配布
- トレンドレポート配信
- 季節ごとのデザイン提案
攻めの提案営業へ転換することで、単価アップが期待できます。
■ 診断士としての提案⑤ 越境ECで“世界の古着ファン”に届ける
丸昇の加工技術は、海外相性が抜群。特にEtsy・Shopify・TikTok Shopなどとの相性がよく、「世界で一つの質感」は武器になります。
■ まとめ
丸昇の物語は、単なるTシャツ工場の話ではありません。
「組織が変われば、技術の価値は最大化される」
Tシャツという身近なアイテムでも、技術 × デザイン × 世界観で“アート”に変わる。丸昇はその好例です。


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