産業廃棄物処理業。多くの人にとっては、正直あまり目立たず、語られることも少ない業界かもしれません。
しかし、その「見えない仕事」が、企業の信用やブランドを陰で支えている会社があります。1933年創業、従業員26名。産業廃棄物処理業の竹下産業です。
この会社を一言で表すなら、「ゴミを扱っているが、仕事の本質は“サービス業”」。そう言い切れる会社だと感じました。
経営者の決意:うぬぼれぬための“毎日のトイレ清掃”
竹下産業の経営者には、長年続けている日課があります。それが毎日のトイレ清掃。理由はシンプルです。「うぬぼれないため」。
自分は特別な存在ではない。お客様がいて、初めて仕事ができている。その原点を忘れないために、誰もが嫌がりがちな場所を、あえて自分で掃除する。この姿勢は、会社の思想そのものだと感じました。
経営者が大切にしているのは「モノを“処理する”こと」ではありません。「お客様の不安を、安心に変えること」。
特にデジタル機器の廃棄には、情報漏洩の不安、本当に処理されたのか分からない不透明さ、自社ブランドが傷つくリスクといった、目に見えない不安がつきまといます。竹下産業は、そこに真正面から向き合ってきました。
「ゴミだから価値がない」からの決別
かつて、経営者自身も「お客様が捨てたものに、価値はない」と考えていたそうです。しかしある時、価値がないのではなく、価値を見ようとしていなかったのではないか、と気づきます。
今、竹下産業は自らを「デジタル機器のおくりびと」と呼びます。役目を終えた機器を、ただ壊すのではない。敬意をもって見送り、次の資源へとつなぐ。ここに、この会社の誇りがあります。
強み①:デジタル機器廃棄に特化した圧倒的な安心設計
一般的な産業廃棄物処理会社では、専用の破砕機にかけて廃棄し、処理完了の証明は簡易的、というケースが少なくありません。
一方、竹下産業は違います。
- デジタル機器をさらに溶解し、資源として再利用
- ビフォーアフターを証明資料として提示
- 情報漏洩リスクを限りなくゼロに近づける工程設計
これにより「本当に処理されたのか?」という不安を、見える形で安心に変えている。売上の約7割が企業のデータ処理関連という事実が、信頼の厚さを物語っています。
強み②:「重量」ではなく「個数」で見積もる、お客様目線
産業廃棄物処理業界では、重量や面積で見積もるのが一般的です。しかし竹下産業は、廃棄物別の「個数」で見積もりを行います。
これは一見、手間がかかります。ですがお客様にとっては、見積もりが分かりやすい、社内説明がしやすい、予算管理がしやすい、という大きなメリットがあります。
業界の常識ではなく、お客様の立場から逆算した設計。これもまた、サービス業としての姿勢です。
積み重ねた信用という“見えない資産”
竹下産業は、これまで約3000社と取引を行ってきました。長年の実績と信用が、他の関連企業との深い関係や大口案件の継続受注につながっています。
この「信用の蓄積」こそが、簡単には真似できない最大の資産です。
診断士としてのアドバイス(ここが最重要)
ここからは、中小企業診断士の視点での整理と提言です。
総評:黒子の業界だからこそ「伝える」が成長の起点になる
竹下産業は、ものに対する敬意、デジタル機器廃棄という専門特化、お客様の不安を安心に変える設計によって、信頼を勝ち取り、業績を伸ばしてきた会社です。
一方で、産業廃棄物処理業は固定費型・稼働率依存型のビジネス。設備や人を止めないことが、収益改善のカギになります。
そのため今後は、「良い仕事をしている」だけでは不十分です。自社の価値を社内外に「理解される形」で伝え、稼働率を安定させる仕組みづくりが重要になります。
① 伝える:思想・技術・人をストーリーで可視化する
まず最優先で取り組むべきは「伝える」です。
社外向け
- 社長の思い、トイレ清掃の日課の意味
- 「デジタル機器のおくりびと」という思想
- デジタル機器廃棄工程の動画化
- ビフォーアフターによる安心の可視化
社内向け
- デジタル廃棄技術の勉強会
- なぜこの工程が必要なのかの言語化
- お客様にどう説明するかの共有
社内理解が深まるほど、営業力は上がる。これはサービス業に共通する原則です。
② 広げる:設計段階・アフターまで踏み込む
既存の大口顧客に対しては、イベント起点での定期接触を行うべきです。
- 引っ越し
- 社屋改修
- PC・サーバー更新
- OS入れ替え
これらを把握し、設計段階から参加できれば、廃棄量・コスト・スケジュールを主導的に設計できます。
さらに、廃棄物管理台帳の作成代行、年次レポートの作成、排出事業者責任を支援する書類整備といったアフターサービスを提供することで、単価と継続性を高められます。
③ 絞る:デジタル廃棄専門に特化する
戦略として重要なのは「やらないことを決める」ことです。
- デジタル機器廃棄に特化
- 個人向け一般廃棄は原則やらない
- 法人向け、一定ボリューム以上に絞る
- 地域も限定する
これにより、オペレーションが安定し、技術がさらに尖り、ブランドが明確になるという好循環が生まれます。
④ IT化:見積もりを入口に稼働率を上げる
IT化は派手なDXである必要はありません。
具体案としては、以下の流れです。
- お客様が廃棄物の写真を撮影
- 画像をクラウドAPIに送信
- 種類・個数を判定
- 過去データから見積もり算出
これにより、見積もり工数削減、受注までのスピード向上、稼働率の平準化が期待できます。
⑤ コラボ・海外:いきなり行かない、段階的に
コラボ
- 自治体と連携し、環境教育や回収スキーム構築
- 社会課題解決としての位置づけ
海外
- 直接海外事業者とは組まない
- 海外工場を持つ日系メーカー支援
- 廃棄ノウハウの現地展開支援
そのために、廃棄物別の処理標準、処理時間、想定利益を数字で示せる状態にしておく必要があります。
KPI設計
- 生産効率:稼働率
- 品質:異物混入率
- 収益性:デジタル機器営業利益率/一般廃棄利益率
- 売上構造:客数 → リピーター数/新規数
- 単価向上:アフターサービス利用率/見積支援利用率
稼働率 × 信頼 × 継続。これを回すためのKPIです。
取り組み優先順位
- 伝える+社内理解深化+専門特化
- IT化+アフターサービスで利益率向上
- コラボ・海外は慎重に、準備から
一般消費者向けの一般廃棄には手を出さない。これが、竹下産業の勝ち続ける道だと考えます。


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