古民家再生600件の山翠舎が「木材」ではなく「空間」を売って伸びた理由|空き家活用×古材ビジネス

勝手に企業診断

古民家再生600件の山翠舎が「木材」ではなく「空間」を売って伸びた理由|空き家活用×古材ビジネス古民家が壊される現場を見るたびに、胸の奥がざわつく。

「こんなに良い木なのに、捨てられてしまうのか」

山翠舎の原点は、そんな“もったいない”の感情だった。

でも、現実は甘くない。

古木ビジネスを始めた当初、売主から返ってきたのは冷たい言葉だった。

「余計なことをするな」
「そんな古い木、誰が買うんだ」

売れない時代が長く続く。
それでも諦めなかった。

そしてある日、会社は大きく舵を切る。
古い木材を「パーツとして売る」のをやめた。
代わりに、古い木材で生まれる“空間そのもの”を売ることにした。

木を売るのではない。
ぬくもり、時間、記憶、ストーリーを含んだ「場」を売る。
この発想の転換が、山翠舎を伸ばした。


強み|古民家再生600件が生む「経験資産」は真似できない

山翠舎の強みは、きれいごとではなく数字が証明している。

  • 古民家再生の施工実績:600件
  • 引き取った古材:5000本規模
  • ぬくもりのある空間づくりが支持され、空き家問題の解決にもつながる

古民家再生は、単なるリフォームではない。
構造の読み替え、古材のクセ、歪み、強度の見立て。
デザインはもちろん、施工も独特で、教科書よりも「現場経験」がものを言う。

だから600件という実績は、そのまま参入障壁になる。
誰かが「古民家やります」と言っても、同じ品質で同じ提案はできない。
この“追随されにくさ”こそ、山翠舎の最大の差別化だ。


IT化の芽|古材の3Dスキャンで「見えない価値」を見える化する

古民家再生は、魅力が伝わりにくい。
写真だけでは、空気感や材の存在感は伝わり切らない。

そこで効くのが、古材の3Dスキャン。

  • 古材の形状(反り、曲がり、欠け)を正確にデータ化
  • 設計段階で「使える/使えない」「どう見せるか」を検討できる
  • 施主に対してビフォーアフターを立体的に提示できる
  • 設計・施工の手戻りを減らし、説明コストも下がる

古材は“見せ方”で価値が決まる。
3Dスキャンは、山翠舎が売っている「空間価値」を、さらに強くする武器になる。


中小企業診断士としてのアドバイス(今後の伸びしろ)

全体評価|社会課題×高付加価値の好ポジション。ただしボトルネックは必ず来る

山翠舎は、空き家問題という社会課題に対し、古材再活用という明確な解決策を持ち、さらに「木材ではなく空間を売る」という価値訴求で市場に受け入れられてきた。これは非常に強い。

ただし、現状の体制で案件が増えると必ず壁にぶつかる。

  • 設計者が足りない
  • 職人が足りない
  • 現場の判断が属人化し、品質が“人依存”になりやすい
  • 案件が増えるほど、利益より“忙しさ”が増える可能性がある

古民家再生は典型的な「人と経験に依存する高付加価値事業」。
次の成長のテーマは明確で、個別対応で勝つ会社から、再現性ある収益モデルで勝つ会社への進化が必要である。

結論はシンプルで、
高付加価値を落とさずに、再現性を上げる。
これが最大テーマ。

件数だけ追うと、設計・職人がボトルネックになり、品質事故や納期遅延、評判低下で崩れる
そのため「件数」ではなく「1案件あたり付加価値」と「標準化率」を軸に経営を設計し直すべきである。


1) 伝える|山翠舎は“木の会社”ではなく「物語と空間の会社」だと再定義する

山翠舎の価値は、古材の希少性だけではない。
誰の家の、どんな木が、どんな歴史を経て、いま新しい空間として生まれ変わるのか
ここに顧客が惹かれる。

だから発信の軸は、施工写真だけでは弱い。必ずストーリーとセットにする。

発信すべき要素(省略せず列挙)

  • 社長の原点(もったいない、から始まったこと)
  • 600件という施工実績の重み(経験が品質を作ること)
  • 古材の来歴の見える化(地域、築年、家の用途、木の種類、梁なのか柱なのか)
  • 施工例のビフォーアフター(空間としての価値の変化)
  • 職人の技術(なぜ古民家は“難しい”のかを解説)
  • 施主の声(完成後の体験価値、空気感、居心地)

さらに、古材の“個体差”を魅力として伝える工夫が必要。
「反りや傷があるのに、なぜ価値が上がるのか」
これを語れる会社は強い。

3Dスキャンの導入は、この“伝える力”を一段上げる。
施主にとっての不安(使えるの?仕上がりは?)を「立体の提案」で解消できるためだ。


2) 広げる|一気通貫モデルと「外部工務店向け設計・提案コンサル」で収益柱を増やす

山翠舎が持っているのは施工力だけではない。再生ノウハウそのものが価値であり、将来の収益基盤になる。

広げ方は2本立てが現実的。

A. 古民家の解体→設計→施工の一気通貫(自治体連携含む)

空き家問題は、入口が「解体」「片付け」「利活用」の行政課題になりやすい。自治体と組めれば、案件の入口を取りやすくなる。

ここで重要なのは「一気通貫=何でもやる」ではないこと。
古材の価値を最大化するためのプロジェクト設計(解体時の古材保全、保管、品質判定、設計反映)まで含めて“管理”できることが価値になる。

B. 外部工務店向けの設計・提案コンサル(相談サービス)

古民家や古材は、普通の工務店にとって難しい。曲がりがある、強度が読みにくい、設計が難しい、古いテイストを残すデザインが要る

ここを山翠舎が支援すると、以下のメリットがある。

  • 山翠舎の設計ノウハウが収益化される
  • 施工キャパがなくても売上を作れる(設計・提案で稼げる)
  • 将来、提携工務店ネットワークが“生産能力”の代替になる

つまり、職人・設計者がボトルネックになる前に、外部パートナーで受け皿を作る意味が大きい


3) 絞る|用途特化で“再現性”を作り、設計と提案を標準化する

高付加価値事業が崩れる典型は「何でも受ける」こと。
古民家再生は個別対応が多いからこそ、用途で絞るほど強くなる。

カフェ、宿泊施設、ホテル、企業研修施設などニーズが濃い用途に絞って実績を積むのは合理的である。
ここでの狙いは単なる集客ではない。事例を集めることで、設計・提案のパターンを標準化し、社内共有できるようにすることが本質である。

具体的にやること

  • 用途別に「空間の勝ちパターン」を3つ作る(まずは3用途×各3パターンなど)
  • 提案資料(導線、照明、素材、音、香り、居心地)をテンプレ化
  • 工事の見積構成も用途別に部材・工数を標準化(差分設計にする)
  • 職人の判断ポイントをチェックリスト化(品質の再現性を上げる)

4) コラボ|インテリアメーカーとの自社商品開発は“世界観の固定化”に効く

テーブル、カウンター、ベンチなどの自社商品開発は、売上のためだけではない。山翠舎の世界観を「手触りある商品」として固定化できる。

  • 施工の都度ゼロから作らず、型を持てる
  • 利益率が読みやすくなる
  • 用途特化モデル(カフェ、宿泊)と相性が良い

施工キャパが限られる会社ほど、自社商品の比率を持つ価値が高い。


5) 取り組み優先順位|認知→絞り込み→再現性→拡張の順で進める

  • ① 伝える:価値の見える化(古材ストーリー、施工事例、職人技、3Dスキャン提案)で指名相談を増やす
  • ② 絞る:用途を絞って標準化の土台を作る(用途特化モデルをまず3つ)
  • ③ 広げる:一気通貫モデルと外部工務店向け設計・提案コンサルでスケール
  • ④ コラボ:自社商品開発で世界観を固定化し、利益率と再現性をさらに強化

将来的に海外展開も検討するなら、直販より国内企業連携から。ただし、今すぐの優先ではなく、まず国内で型を完成させるべきである。


6) KPI|「用途別引き合い数」と「標準化率」を最重要に置く理由

最重要KPIを「用途別引き合い数」と「標準化率」に置くのは合理的である。
理由は、山翠舎のボトルネックが人(設計者・職人)であり、件数増だけ追うと崩れるから。
引き合いの質(用途)と、再現性(標準化)を先に作らないと、拡大が難しい。

KPI体系(原文ベースで整理)

  • 最重要:用途別引き合い数・用途別受注率(カフェ、宿泊施設、企業研修施設など)
  • 認知度:SNSフォロワー数、古民家問い合わせ数、資料請求数、見学会参加数
  • 売上:用途別売上、コンサルサービス売上(一気通貫/外部工務店支援)
  • 属人化解消:設計標準化率(用途別パターン数)、提案標準化率(テンプレ整備率)
  • 利益:用途別利益率、コンサルサービス利益率、1案件あたり利益率

まとめ|“古材を売る会社”から「再生の型を持つ会社」へ

山翠舎が勝った理由は、古材を売るのをやめて、古材で生まれる空間を売ったこと。これは価値の再定義に成功した会社の典型である。

次の成長はさらに一段上の再定義が必要だ。

  • 個別対応で勝つ会社 → 型で勝つ会社
  • 施工で稼ぐ会社 → ノウハウでも稼ぐ会社
  • 実績が強みの会社 → 標準化が強みの会社

空き家問題はこれからも確実に広がる。その中で、山翠舎の600件という経験資産は、ますます価値を持つ。
だからこそ、今のうちに“再現性”へ変換する。ここが勝負どころだ。

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