地方の建設会社は、紙文化・FAX文化が根強く、デジタル化が進みにくい業界です。その常識を破ろうと立ち上がったのが、1954年創業・47名の地場ゼネコン「隂山建設」。
同社が挑んだのは、建設業特有の多重構造や属人化にメスを入れるための現場DX。その背景には、明確な危機感と、大胆な経営判断がありました。
◆ 「地方の建設会社が作るアプリなんて無理」──それでも挑んだ理由
隂山建設が独自アプリ開発を始めた当初、同業からの反応は冷ややかなものでした。
「どうせ誰も使わない」
「地方ゼネコンがアプリなんて…」
それでも社長は決断します。
「現場の痛みを知っているのは自分たち。だからこそ、自分たちで作らないと意味がない」
こうして設計チームを中心にDX推進チームが立ち上がり、元請け・協力会社・現場と三者それぞれが使いやすい構造のアプリを開発していきました。
◆ 独自アプリが生んだ“現場の革命”
アプリの目的はシンプルです。
- 現場の進捗状況を見える化
- 人・重機・設備の稼働状況を可視化
- 工程の遅れやボトルネックの把握
- 紙の指示書・電話連絡の代替
属人化していた情報がデジタルで一元化され、現場が「軽く」なる。 さらに、設計力と現場理解がある同社の強みは、建設賞の受賞という形でも評価されています。
◆ 診断士としてのアドバイス(今後の伸びしろ)
① IT化の次は「KPIツリー化」──データを利益に変える
可視化に成功した次のステップは、データを経営判断に転用すること。
- 稼働率(人・重機)
- 段取り時間
- リードタイム短縮効果
- 手戻り率
- 現場別の粗利率
- 安全指標(ヒヤリハット)
これらを予実管理と結びつけることで、どの現場がどの要因で儲かっていないか、瞬時に判断できる体制が整います。可視化→データドリブン経営への展開です!(わたしが目指している姿)
② 伝える:アプリを“現場ソリューション”として発信
アプリは単なるツールではなく、
「現場の困りごとをなくす仕組み」
として見せることで、ブランド力が一段上がる。
- DX認定企業の取得で信用力UP
- 現場改善のBefore→After動画発信
- 協力会社向けDX勉強会
- 現場データのレポート発信
③ 広げる:地方ゼネコン向けサブスク型サービス
隂山建設のアプリとDXノウハウは、他社にも十分展開可能です。
- 現場導入3ヶ月パック
- 日報・勤怠アプリとのAPI連携
- クラウドカメラ+自動進捗管理パック
- 現場KPIダッシュボード
- 建設DXコンサルティング
地方ゼネコンのDX需要は高まっており、確実に収益の柱になります。
④ 絞る:現場単位の「スモールスタート」で成功率UP
DX導入の最大の壁は「最初の一歩」。 その負担を減らすためのアプローチが有効です。
- 1現場だけ導入
- 設備工事だけ、内装だけ、など職種ごとに導入
- 3ヶ月限定トライアル
- 協力会社1社だけ参画
導入ハードルが下がることで、DXの成功確率が一気に上がります。
◆ おわりに
隂山建設の挑戦は「IT導入」ではなく、 現場の文化を変えるDX改革です。
建設業界が抱える多重構造やアナログ管理という“永年課題”に対し、 地方ゼネコンが真正面から挑む姿勢は、これからの業界の指針にもなります。
DXとは、技術ではなく文化づくり── その本質を体現しているのが、隂山建設なのです。

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