家具メーカー・すえ木工(1945年創業、90人)。
老舗でありながら、海外家具やウォークインクローゼットの台頭により売上が減少し、大きな転換期を迎えました。
経営者が決断したのは、「家具ではなく住空間全体を提案するメーカーになる」という大胆な方向転換。
和家具メーカーから“空間提案メーカー”へ。この決断がすえ木工を次のステージへ導きます。
■ すえ木工の武器:壁面収納への圧倒的なこだわり
現在の主力は、部屋に合わせてカスタマイズする壁面収納。特徴は以下の通りです。
- 17万件の受注実績
- 受注生産と短納期を両立
- 壁面補強まで一貫対応
- カイゼンDNAによる工程改善の積み重ね
現場から毎年100件以上の改善提案が生まれるほど、改善文化が根づいています。
工程間の移動距離削減、多能工化、省人化装置の自作など、現場の創意工夫が強みです。
■ 自社商品もユニーク。「持ち運べるお風呂」まで作る家具メーカー
すえ木工は積み木や、持ち運べるお風呂のような遊び心ある製品開発も行います。
地元メーカーとのコラボによる地域ブランド家具も展開中です。
■ 経営者の腹決め:「やりたくないことを、やるしかない」
家具業界の変化に流されず、「住空間のプロ」としての道を選択。
覚悟の決断が、いまのすえ木工の強さにつながっています。
■ 中小企業診断士として見える「すえ木工の伸びしろ」
① IT化・スマート家具化で“空間DXメーカー”へ
- 工程データの可視化と継続的なPDCA(強みであるカイゼン活動をデータで支援)
- 照明・温湿度センサー付きスマート家具
- 部品のさらなる標準化
② 川下へ:ウェブ受注 × AI採寸の導入
- スマホ撮影によるAI採寸と3Dシミュレーション(安価な既存サービスを活用)
- ユーザー入力型のサイズ提案(Webでの注文促進)
③ 自社商品 × 収納コンサルサービス
狭小住宅向け・高齢者向けの収納サービスなど、空間コンサル型の事業展開も可能。
④ SNS発信で“ブランドの物語”を伝える
- カイゼン活動の裏側
- 職人の手仕事
- 工場見学ツアーやワークショップ
⑤ BtoB展開で高単価市場へ
- オフィス
- ホテル
- 介護施設(安全で省スペース、生活に不自由している人向けの効率的収納スペースの提案)
⑥ コラボで施工力を巻き込みブランド力強化
施工認定制度による地元工務店との連携。
⑦ アフターサービスのサブスク化
- 扉の調整
- 金物のチェック
- 歪みの点検
■ まとめ:すえ木工は「家具メーカー」から「住空間メーカー」へ
和家具の衰退をきっかけに、“空間提案メーカー”へ進化したすえ木工。
技術、カイゼン、顧客視点を掛け合わせ、
「暮らしに合わせて進化する家具」を作る企業へと成長しています。
家具業界の未来を考えるうえで、すえ木工は注目すべき企業のひとつです。


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