大手チェーンが強いアパレル業界。海外大量生産の波に飲まれ、小規模ブランドは価格競争に巻き込まれがちです。
そんな中で、“他ができない勝ち方”を実現している小さな紳士服メーカーがあります。1958年創業、従業員16名のリードです。
■ 卸売からの転換。しかし、そこからが本当の苦難だった
創業時は卸売でしたが、薄利構造から脱却するため直営店を出店。しかしすぐに壁にぶつかりました。
- セールでしか売れない
- 街で同じ服を着た人と遭遇してしまう
- 大手の海外生産が進み、価格競争に巻き込まれる
そして経営者は気づきます。
「大手と同じルールでは絶対に勝てない」
■ リードの強み:デザイン性 × 品質 × 手の届く価格
リードには創業以来のファンが多く、「ここ以外で服を買わない」という方もいます。
特に自社ブランド「ドクターベリー」は、個性的なデザインと品質の高さで人気。一度ファンになると離れない。リピーター比率は驚異の5割です。
■ 逆転の発想:“少量生産 × セールなし” という新ルールを作る
リードが採用した戦略は、業界の常識からするとかなり大胆です。
- 1デザイン30着のワイシャツだけを作る
- ネクタイは1デザイン6〜8本
- セールは絶対にしない(価値を落とさない)
- 他店舗展開はしない(比較される市場に行かない)
大量生産を捨てた結果、ブランドの希少性が上がり希少価値がファンを育てる構造ができました。
■ 小規模アパレルにありがちな課題も
診断士として見ると、伸ばす余地も多くあります。
- SNS発信が弱い
- 顧客データの蓄積がない
- 来店依存でコミュニティが育っていない
- 売れ筋データの活用ができていない
しかし、これは“伸びしろ”として捉えられます。
■ 診断士としてのアドバイス:リードの次の一手
① 伝える:SNSで「デザインの世界観」を見せる
- 新作デザインをSNSに投稿し、いいね数で人気傾向を把握
- 常連コミュニティ(先行公開・限定色予約など)を運営
- 着こなし動画で投票企画 → 顧客の参加を促す
② IT化:顧客データからレコメンド
少人数のブランドこそ、顧客データが活きます。
- 身長、体格、過去の購入履歴から提案(お客様が満足するサービスの提供)
- 好みの傾向をAIで整理し、商品開発時のインプットに活用
③ 広げる:常連向けサブスク・セミオーダー
- セミオーダー(ネーム調整・ボタン変更)
- 毎月1回の限定アイテム先行配信
- 海外ファン向け越境EC
- 男性向けビジネスウエアの定額サブスクサービス(これ以外と需要ありそう)
④ コラボ:デザイナー・素材メーカーと組む
- 限定ラインの共同開発
- ギフト向けアイテムの制作
- 伝統工芸とのコラボ
- ビジネスバッグや靴、リュック、整体や美容などのトータルソリューションの展開
⑤ 絞る:効率と個性の両立
少量生産は強みですが、効率低下は避けられません。
- シャツ型(スリム・レギュラーなど)のパターン化
- 新柄を当てはめるだけで新作が作れる設計に
- 縫製仕様の標準化で生産効率を確保
- 「シニア向け」に絞ったブランド化(ウエスト調整可能なズボンなど)
■ まとめ:大手と戦わない、独自市場をつくるという勝ち方
リードは「価格競争をしない」と決めた瞬間から、独自の道を作りました。
少量生産・セールなし・世界観重視のブランド作りは、小規模アパレルの理想型とも言えます。
大手企業ができない“個性×希少性”の勝負こそ、リードの最大の武器です。


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