花は、人の節目を彩る。
結婚式、葬儀、卒業式──。
でも、花を“自分のために買う人”は、どれほどいるだろうか。
この問いに真正面から挑んだのが、ヌボー生花店。
創業1974年。長年、葬儀や結婚式などの下請け業務を中心に行ってきた。
しかし、経営者はある日、こう思った。
「このままじゃ、いつまでも自分たちの価値を出せない」
そして始まったのが、「花を“誰かのため”ではなく、“自分のため”に買う文化をつくる」挑戦だった。
売上半減と孤立──下請けからの脱却は茨の道
社長に就任した当初、ヌボー生花店の主な収入源は大手葬儀会社やブライダル業者からの依頼だった。
価格は取引先に決められ、利益率は低く、ボリュームで勝負するしかない構造。
それを変えようとしたとき、社員の反発も大きかった。
「そんなことしても売れない」
「これまで通りが一番安定してる」
売上は一時的に半減。社長の発言力も弱まり、従業員との距離も広がった。
さらに社員の多くが女性で、出産や育児による離職率の高さも課題として重くのしかかった。
それでも社長は諦めなかった。
「私たちが“自分の力で売上を作る”花屋に変わらなければ、未来はない」
兆しをつかんだのは“データ”
ある日、社長は自社の顧客データを分析して気づいた。
「花を買う理由」が、少しずつ変化している。
昔は“贈り物”が主流だったが、最近では「自分の部屋を飾りたい」「自分へのご褒美」という理由が増えていた。
「誰かのための花から、自分のための花へ」
この消費者心理の変化を“兆し”と見て、方向性を確信した。
強みは「花と人をつなぐセンス」
ヌボー生花店の強みは、ただ花を売るだけではない。
生産者との関係性が深く、仕入れる花の質が高く、種類も豊富だと思う。
また、店頭にはスタッフの手書きポップが並び、
「この花は朝の光が似合います」「今日の気分を変えたい時に」など、
花を“人の感情”に結びつけて提案している。
リピーターも多く、SNSを通じてファンとの交流が広がっているのだろう。
働き方改革:花屋もリモートワーク?
社長は「花屋の仕事の棚卸し」から始めた。
その結果、意外にも「リモートでできる仕事」が多いことに気づく。
在宅スタッフができる業務(販促画像の制作、顧客データ分析、SNS運用など)は外出せずに行い、
現場は“花に触れる仕事”に集中。
「花を扱う時間を、もっと豊かにするためのリモート化」
この柔軟な働き方(リモートワーク)が、子育て世代の女性社員の離職防止にもつながった。
中小企業診断士としての視点:花屋のDXは「心のデータ」を扱う
私は中小企業診断士として、この会社の取り組みを見てこう思う。
花屋のDXは、単に顧客データを分析することではない。
それは人の気持ちのデータを読み解き、購買心理を育てることだ。
そのために、これからのヌボー生花店に求められるのは「伝える力」の磨き方だと感じる。
SNSで花のある暮らしを提案したり、親子フラワー教室やドライフラワーづくり体験などの
ワークショップを通じて、花と人との距離を近づける発信が有効だ。
「花を売る」から「花のある時間を共有する」へ。
発信力の強化は、単なる広報活動ではなく、ファンづくり=経営基盤の強化に直結する。
データ分析で得た知見を、リアルな交流やSNS投稿に落とし込むことで、
顧客の感情を動かす“心のマーケティング”が実現する。
さらに、
- 花を飾る心理的効果(リラックス・集中力UPなど)を可視化し、投稿に活かす。
- 生産者の紹介や、顧客の「花との思い出投稿」を促す。
も面白い。
1. 広げる(商品):「気分で選ぶ花」シリーズ
- 新しい船出に向けた花
- 落ち込んだ日に元気をくれる花
- 感謝を伝えるための花
こうした“気分別ライン”をシリーズ化することで、感情購買を刺激できる。
2. 広げる(サービス):花のサブスク
法人顧客や常連顧客に向けた、定期配送型の花サービス。
季節ごとにテーマを変えるなど、ストーリー性のあるサブスクを展開。
3. コラボ:空間を彩るプロデュースへ
カフェ、美容室、ホテルなどと組み、季節の花を使った空間演出を支援。
ウェディングや店舗装飾など、「花×空間デザイン」事業を確立する。
4. 組織改革:ノウハウの共有と勉強会
花の管理・接客・販促ノウハウをデータ化し、チームで共有。
データ分析を活かした「次の仕入れ」「次の提案」を議論する勉強会を開催。
「花を届ける会社」から、「花で心を動かす会社」へ
ヌボー生花店が教えてくれるのは、
“花を売る”ではなく、“花のある人生を提案する”ことの価値だ。
「花を誰かに贈る文化は続く。でも、自分に贈る花があってもいい。」
その発想が、花業界の新しい未来を切り拓こうとしている。

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