東日本大震災で多くの事業を失った東洋。
残されたクレーンゲーム事業を軸に再起を図り、「笑顔」を企業理念に掲げて再出発した。
その挑戦は、“遊び”を超えて地域と人をつなぐ新しいサービス産業の形を示している。
1. 経営者の決意:積少為大という信念
マンガ喫茶や家電販売、ビリヤードなど多角経営を行っていた東洋。
震災で全てを失ったとき、社長は「何か行動しなければ未来はない」と決意。
残ったクレーンゲームを武器に再始動した。
経営の軸は「積少為大(小さな積み重ねが大きな成果を生む)」。
小さな笑顔を積み上げ、世界一の“笑社”を目指すと宣言した。
2. 強み:規模と人材が生む“楽しませ力”
東洋はかつてギネス認定を受けるほどの設置台数を誇るクレーンゲーム専門店。
しかし真の強みは、スタッフが自ら顧客を楽しませようとする姿勢だ。
- イベント企画や接客にスタッフが主体的に関与
- 教育制度を整え、楽しさを提供できる人材を育成
- 「お客様の笑顔」を定量的に可視化し、社内表彰
3. サービスと事業構造
- 主力事業:クレーンゲーム・リユース事業
- イベント:子どもの日や地域行事と連動した集客企画
景品を取るだけでなく、来店者が「笑顔を共有する」体験を重視する方針が特徴的だ。
4. 川下戦略:地域モール化と世代を超える空間
社長の構想は、古いクレーン機も再活用した「地域交流型モール」。
親子三世代が楽しめる空間を目指し、地域活性化と雇用創出の両立を狙う。
5. 診断士としての視点:データと発想で伸ばす次の一手
① IT化・データ活用
- 会員アプリでリピート率を分析
- SNSを使ったリアルタイム情報やイベント発信
- AIで日別来店数を予測し、従業員配置を最適化
- ゲームごとの売上データを活用し、機種構成を最適化
② サブスク・顧客体験
- 月額制で特別レーン利用・無料プレイ枠を提供
- 優良顧客向け限定イベントや景品企画
③ コラボ・地域連携
- 地域企業・観光地と連携した共同イベント
- 地元ポイント制度や地域SNSでの発信強化
④ 逆転の発想:シニア×教育への展開
- 介護施設向けリハビリ型クレーンゲーム
- 「孫と遊べる世代交流イベント」の開催
- 物理・確率を学べる教育プログラム化
6. まとめ:笑顔こそ最強の経営資源
東洋の再建は、遊びを「笑顔の仕組み」に変えた実践だった。
ITによるデータ分析と、人の温かさを融合させた経営。
その姿勢は、どんな業界でも再現できる“人起点DX”のモデルといえる。


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