大クレームから始まった逆転劇──メンテックが「工場を守る会社」へ進化するまで

勝手に企業診断

1967年創業、薬品・システム会社として134名が働くメンテック。
製紙メーカーの“品質と安定稼働”を支えるプロフェッショナルですが、その裏には「汚れを落とす技術が、汚れを作っていた」という衝撃のクレームから始まる改革の物語があります。


■ 大クレームで気づいた“盲点”

ある日、取引先から届いた一本の電話。

「御社の薬品が、逆に汚れを作っているのでは?」

徹底調査の結果、原因は薬品ではなく、販売後のケア不足でした。
薬品量・運転条件・設備との相性──それらの“使い方の部分”がフォローできていなかったのです。

そこでメンテックは決断します。

企業秘密の「水分表」をすべて開示する。

同業他社が絶対に真似しない行為。しかしこれを機に、顧客の態度は一変しました。

「これで一緒に原因を探れる」「相談がしやすくなった」

メンテックは“隠す”から“開く”への転換を行い、強固な信頼を獲得していきました。


■ 紙づくりを支える“影の主役”へ

紙づくりは温度・湿度・流量・薬品量など、微細な条件が複雑に絡む世界です。少しのズレで汚れやムラ、紙切れの原因になります。

メンテックは以下を一括で提供できる数少ない企業です。

  • 全工程の総合管理システム
  • AIによる汚れ分類
  • 品質管理・安定稼働のノウハウ
  • 海外を含む160社以上の導入実績

現在は、世界中の工場をリアルタイムで見守る遠隔監視システムの開発も進んでいます。


■ 中小企業診断士の視点:メンテックが伸ばすべき方向性

① 伝える:製紙DXアカデミーの開講

製紙メーカーには体系立った教育環境がほとんどありません。メンテックは以下を講座化できます。

  • 工程管理・薬品管理の基礎
  • AI監視データの読み方
  • 異常時の初動対応テンプレ
  • 若手向け「製紙入門」講座

SNSで小ネタを発信し、教育を入口にリード獲得する戦略です。

② 広げる:異業種への応用

メンテックの技術は製紙以外でも活用できます。

  • 化学(フィルム・塗工)
  • 食品(飲料プロセス)
  • 水処理
  • 繊維(不織布)

まずは既存顧客のグループ工場から攻め、小型パッケージを作って用途特化型で展開する方法が有効です。

③ ベンチマークサービスの提供

製紙メーカーは“他社のデータ”を求めています。匿名加工したベンチマークデータを提供すれば、業界のモノサシとなり、高い付加価値を提供できます。

④ 広げる:サブスク「データレポート便」

紙のトラブルには必ず前兆があります。ログ分析レポートを毎月届けることで、サブスクモデルが成立します。

  • 汚れの予兆
  • 薬品最適量の提案
  • 経年比較
  • 設備負荷のヒートマップ

⑤ コラボ:自治体 × SDGs × 製紙会社

古紙回収・再生紙品質向上など、自治体との共同研究は補助金とも相性が良く、社会課題解決型ブランドが構築できます。

⑥ 組織改革:ナレッジの蓄積とAI化

トラブル対応、AIモデルのチューニング履歴、顧客ニーズを蓄積する仕組みをつくることで、次の成長投資につながります。


■ まとめ:メンテックは“失敗を資産化できる企業”

メンテックの軌跡は、ただの技術企業の成長物語ではありません。

  • クレームを真正面から受け止めた覚悟
  • 秘密情報を開示した勇気
  • 顧客と共に改善する姿勢
  • データを信じる文化

“汚れを落とす会社”から、“工場を守る会社”へ。

次のステージは、「業界の常識をつくる会社」です。

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