世の中の“困った”を見逃さない。そして、誰も形にしてこなかった新しい道具を生み出す。
そんな「発明家気質」の経営者が率いる家電メーカー──シリウス。
大手家電メーカーから独立し、17名という小規模ながら、コロナ禍では空気清浄機が大ヒット。一時は急成長したものの、その後は4期連続赤字という試練が訪れました。
それでも社長は語ります。
「世の中になくてはならない存在になる。」
■ 大手企業の“常識”から飛び出した挑戦者
シリウスの最大の強みは、外注先との厚い信頼関係。
通常のファブレス企業は「仕様書通りに外注が作るだけ」。しかしシリウスは、介護、料理、清掃、空気関連、娯楽まで、幅広く“共創”できる体制を持っています。
特にユニークなのは、介護者向けの「寝たままシャワー」。動けない方の衛生をどう守るかという課題からスタートした商品で、まさにシリウスの精神が詰まっています。
■ 自社商品のラインナップ(一部)
- 焼き具合が見える調理用品
- 寝たままシャワー(介護用)
- 水洗いクリーナー・掃除ヘッド
- 空気洗浄機
- パーソナルシアタースピーカー
■ 診断士としての視点:ここからシリウスが伸びるポイント
① 絞る:用途別ブランドラインで“何の会社か”を明確に
製品ラインが幅広いため「強みが伝わりにくい」という課題があります。
そこで、用途別にブランドを区切る戦略が有効です。
- 介護向け:寝たままシャワー、衛生系アイテム
- 料理系:焼き具合が見える調理用品
- 清掃系:水洗いクリーナー、掃除ヘッド
- 空気系:空気洗浄機
“ブランド=期待値”なので、カテゴリ分けは顧客の理解を劇的に速くします。
② 伝える:動画・比較・シーン訴求を徹底する
シリウスの商品は「触って使えば良さがわかる」タイプが多いのが特徴です。
そのため、ただの説明では弱く、体験が伝わる発信が鍵となります。
具体例:
- 使用前・使用後の比較動画
- 他社製品との機能差を“エビデンス”で示す
- 利用者(介護者・料理好き)のストーリー動画
- 開発者の思いと背景を語るミニインタビュー
特に調理家電は、レシピ動画と相性が良く、SNSでの拡散力が高いです。
③ 川下へ:直販モデルで薄利体質を脱却
ファブレスは中間マージンで利益が削られやすいため、直販強化は必須です。
打ち手としては、
- 公式オンラインストアの立ち上げ
- LINE公式での再購入導線
- 購入者向けの“使い方動画”の自動送付
- レビュー投稿でクーポン付与
この導線設計は「利益率改善 × リピート率向上」の両方に効きます。
④ 広げる:介護領域での深い価値提供(ここが最大の伸びしろ)
介護領域は「課題=不満足」が多く、かつ市場はこれから確実に拡大します。
そのため、シリウスの“問題解決型プロダクト”と非常に相性が良い領域です。
具体的な入り方:
- 福祉用具専門相談員の資格を社内で取得
- ケアマネ・施設職員向けの商品説明会
- 体験機の無料レンタルサービス
- 介護保険対象可否を整理し、提案書に記載
- 介護施設の現場取材→製品企画に反映
“現場理解 × 試せる仕組み × 導入メリットの明確化”があれば、介護市場は広がります。
⑤ IT化:スマート家電化で「売って終わり」を脱却
次世代の事業モデルとして、家電のデータ化→サービス化が重要です。
例えば、
- 故障予知(使い方のクセをAIで検知)
- 消耗品の自動提案(フィルター・洗浄剤など)
- 使用履歴データを可視化したダッシュボード
“買ったら終わり”から“買った後が始まり”に変えると、サブスク化やサービス収入が発生します。
⑥ 組織改革:知識DB化で属人開発から脱却
小規模ファブレスでは、商品開発が属人化しがちです。
そこで、以下を体系化することで「スピードと品質の両立」が進みます。
- 外注先の技術一覧(できる加工、使える材料、得意分野)をDB化
- 過去商品の企画書・原価構造・失敗事例のテンプレ化
- 定期的な“技術レビュー会”でナレッジ共有
- 原価低減活動の履歴を蓄積し、改善プロセスを標準化
これにより「再現性ある企画・開発」が可能になります。
■ まとめ──「困りごと×行動力」で市場を切り拓くメーカー
シリウスは、ただの家電メーカーではありません。
- 困りごとに真正面から向き合う姿勢
- 常識に縛られない企画力
- 外注先との強い共創関係
- 行動しながら突破していく力
こうした“気質”こそ、中小メーカーの成長の核。
介護・調理・衛生・清掃・空気など、確実に市場が伸びる分野で、シリウスは今後さらに成長するポテンシャルを持っています。


コメント