スポーツ器具メーカー、ウエサカテイーイー。1996年に設立され、わずか15人の精鋭で世界水準の技術を誇る企業である。
前身は、遊具事業を手がける会社だった。しかし、公園事故をきっかけに訴訟に発展し、事業の継続が難しくなる。さらに、少子高齢化による遊具市場の縮小が重なり、経営は苦境に陥った。
経営者は決断する。
「営業力で勝負する新しい会社をつくろう」──。
そして誕生したのが、現在のウエサカテイーイーである。
経営者の決意:本場で学び、世界へ挑む
ある日、バーベルがスポーツトレーニングの中心であることを知った経営者は、「この分野なら、技術で勝てる」と直感した。彼は単身アメリカに渡り、トレーニング文化や指導法を徹底的に学ぶ。帰国後、それを日本のものづくりに融合させた。
社長の口癖は “Keep Going(挑戦を止めるな)”。この言葉通り、ウエサカテイーイーは立ち止まらず、前へと進み続けてきた。
強み:0.1ミリの精度がつくる信頼
同社の象徴は、0.1ミリ以下の精度でバーベルの曲がりを調整できる技術。熟練職人が一本一本、感覚と数値の両面から仕上げるその技は、もはや芸術の域にある。
この精度が評価され、ウエサカのバーベルはオリンピックでも採用。国際ウエイトリフティング連盟(IWF)から正式認可を受け、世界中のトップアスリートから絶大な信頼を得ている。
一流選手の限界を支えるのは、0.1ミリの誤差を許さない職人技。
この哲学が、同社の存在価値を象徴している。
広げる力:アスリートからフィットネスへ
創業当初のターゲットは、競技アスリート。しかし現在では、スポーツジム・大学・自治体・フィットネス施設へと販路を拡大し、市場を「アスリート → スポーツ → フィットネス」へと広げることに成功した。
大会やイベントでは、社長自らが会場に足を運び、製品紹介とユーザー交流を行う。「現場に立って、汗をかくことが開発の原点」──そんな姿勢が、製品への信頼をより一層強めている。
診断士としての視点:技術と情熱を“仕組み化”せよ
- 伝える:技術×ストーリーでブランドを強化 SNSや動画を活用し、職人技の精度や耐久テストの映像を公開。「なぜ0.1ミリにこだわるのか」というストーリーを発信することで、技術の価値を“感情で伝える”ブランディングが可能になる。 また、工場見学や体験イベントを開催し、技術を“見る・触れる・感じる”機会をつくることも有効だ。
- IT化:データで顧客関係を深化させる 顧客情報をデータベース化し、優良顧客へのリマインドや限定イベント招待を自動化。さらに、アプリでトレーニング記録・筋力データ・消費カロリーを管理できる仕組みを構築すれば、製品を「使って終わり」ではなく「継続利用する関係」へと発展できる。
- コラボ:アスリートとの共同ブランド展開 有名選手との共同開発で「選手モデル」を展開。その実績を動画や記事で発信すれば、技術力の証明(エビデンス)としても強力な訴求になる。
- 絞る:高齢者・子供向け市場の開拓 高齢者にはリハビリ・介護向けの軽負荷器具、子供には安全性を重視した入門用トレーニング器具を展開。「誰もが使えるウエサカ製品」という新しい価値軸をつくることができる。
- 広げる:OEMと販売網の拡大 海外・国内のトレーニングブランドへOEM供給を行い、自社だけでなく「技術提供型メーカー」としての存在感を確立。営業は無理に人員を増やすのではなく、販売代理店や商社との連携強化でスケールを図る。
まとめ:小さな工場が世界を支える
ウエサカテイーイーの歩みは、まさに日本のものづくりの原点だ。リストラや訴訟という苦境を乗り越え、“技術と情熱”を武器に世界へ挑み続けている。
Keep Going──その言葉どおり、彼らは止まらない。0.1ミリの誇りが、今日も世界のアスリートを支えている。


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