「鎖国した町工場が、世界を驚かせる」──精工パッキングの“0.3ミリ革命”

勝手に企業診断

たった3人で世界レベルの技術を持つ町工場がある。社名は精工パッキング。型抜き加工を専門にする小さな会社だ。

この会社の技術は、誰も真似できない。なぜなら、彼らは0.3ミリの極細輪ゴムを作れるからだ。
髪の毛より少し太いその世界では、人間の“手の感覚”と“長年の勘”が命。これこそ、町工場の底力だ。

経営者の決意:「マンションを建てて廃業しよう」からの逆襲

創業から数十年。精工パッキングは、ゴムやスポンジの型抜き加工で地道に成長してきた。しかし、二代目が入社して20年後、業績は急転。ついに赤字に転落する。

父(先代)は言った。
「もうやめよう。土地を売って、マンションを建てたほうがいい」

それを聞いた息子(現社長)は激怒した。
「俺はこの会社を潰さない!」
親子喧嘩の末、社長交代。3人の町工場に再挑戦の火がともった。

孤立の時代──「何をしている会社ですか?」

就任直後の現実は厳しかった。長年付き合ってきた取引先からも、
「あれ? 精工さんって何を作ってる会社でしたっけ?」
と言われる始末。

さらに追い打ちをかけたのは、競合他社による技術流出事件
工場見学をきっかけにノウハウが漏れ、主要取引が減少。
その日から工場には「立入禁止」の札がかかる。
外部を完全に遮断し、鎖国工場として技術を守る道を選んだ。

「外に出ない代わりに、内を磨く。」

強み:0.3ミリの輪ゴムが語る“人の手の極限”

精工パッキングの強みは、誰もやりたがらない難易度の高い型抜き技術
0.3ミリの輪ゴムや極細スポンジパッキンなど、通常の機械では対応できない仕事を請け負う。

しかも、使っているのは数十年前の機械。それを独自のメンテナンスで生かし続ける。
「古い機械で最新の精度を出す」──この逆転の発想が技術の根幹だ。

型抜き用の金型は1000枚以上を保有。用途に応じて何度も型を重ねて打ち抜く技術は、まさに職人芸。
その成果は「東京ビジネスアワード」でも認められた。

自社開発:古紙から生まれた“あたまふき”

極細ゴムの技術を応用し、古紙で作るクシ「あたまふき」を商品化。
柔らかくて肌に優しい素材は、防災グッズとしても注目された。
さらに、書類入れやオリジナル文具など日用品にも展開を広げている。

発信の転換:「営業しない。発信で売る」

「営業でなく、発信で勝負すればいい」という社長の考え。

展示会で“極細輪ゴム”を披露すると来場者が驚きの声を上げた。
SNSで職人の手元動画を投稿すると拡散され、クラウドファンディングにも成功
小さな工場が、自ら情報を発信し、ファンを生み始めた。

中小企業診断士としての提案:精工パッキングを“少量高難度ブランド”へ

ここからは、診断士の視点で見た今後の成長戦略だ。
この会社の価値は、量ではなく「難しさを極める力」にある。

  1. 伝える:ミリ単位の世界を“見せる発信” 職人の手作業を動画で公開し、「人にしかできない精度」を伝える
    技術データを数値で示し、信頼性と差別化を明確化。
    学生や若手クリエイターとの共同開発で“共創ブランド”を打ち出す。
  2. 人材育成:技を残す仕組みを作る 作業工程を動画アーカイブ化し、属人化を解消
    標準化マニュアルを整備し、助成金や補助金を活用して技術継承と効率化を両立
  3. IT化見えない作業を“見える化” 型抜き工具や材料の在庫管理をデータ化し、受発注をIT化
    工場の作業進行をリアルタイムで把握できる体制を整える。
  4. 広げる医療・介護・日用品へ 医療や介護用品メーカーと連携し、肌に触れるやわらかい製品を開発
    防災グッズや美容雑貨など、生活者向けラインを展開。
    デザイナーと協働し、“見た目も美しい工業製品”を生み出す。
  5. コラボ研究機関・スタートアップとの連携 大学やスタートアップと共同開発し、極細チューブや皮膚貼付デバイス市場へ。
    技術をオープンに見せる展示を行い、「鎖国工場」から「共創工場」へ進化する。

まとめ:「たった3人。でも世界一の精度」

精工パッキングの挑戦は、規模ではなく精度と情熱の物語。
0.3ミリの輪ゴムには、「自分たちの誇りを失わない」という覚悟が詰まっている。

「鎖国をやめたら、世界が見えた。」

この小さな工場が見せてくれるのは、“閉じる勇気”と“開く覚悟”の両立。
日本のものづくりの原点が、ここにある。

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