阪神・淡路大震災。
当時、現場で復旧に奔走していた一人の技術者がいました。 その人こそ、のちにクモノスコーポレーションを率いる社長です。
「今の測量では、被害の実態がつかみきれない」
「ひび割れは“線”で見えるけれど、“立体”としては捉えられていない」
そんな現場での違和感から、社長は従来の2次元測量に限界を感じます。 衛星測位技術や3Dの可能性を知り、「いつかこれが当たり前になる」と確信。 そこからクモノスの“3D測量物語”が動き出しました。
幹部14名の離脱、それでも3D測量を諦めなかった社長
3D測量への大きな舵切りは、順風満帆とは程遠いものでした。 社長の決断に反発した幹部が、14人の社員を連れて独立。
取引先もごっそり持っていかれ、「会社が空っぽになる」ような事態に。
普通ならここで折れてもおかしくありません。 しかし社長は、3D測量の可能性を信じて動き続けます。
- 資金繰りに奔走しながら、3Dレーザースキャナーの導入を決意
- 全国の主要都市に自ら営業に飛び込み、実績づくりに奔走
- 「とにかくやらせてください」と小さな仕事から信頼を積み上げる
その結果、いまクモノスコーポレーションは 「3D測量のパイオニア」として知られる存在になりました。
クモノスコーポレーションの強み
クモノスの強みは、単なる“3D測量の技術”に留まりません。
- 3Dレーザースキャナーによる高精度な測量技術 ─ 建物修復、インフラ工事、災害復旧など、幅広い分野で活用可能
- 社長の圧倒的な行動力と推進力 ─ 幹部離脱後も全国を飛び回り、ゼロから実績を構築
- 大手建設会社・旅行会社・自治体との取引実績 ─ ゼネコン、地方自治体、観光関連まで、すでに多様なチャネルを持つ
- 防災・減災への貢献度の高さ ─ ハザードマップ作成、復旧・復興支援、修復工事の事前シミュレーションなど
ただし、その多くは「案件ベース」のスポット収益。 “安定収益の仕組み化”が、今後の大きなテーマになってきます。
中小企業診断士としてのアドバイス
ここからは、中小企業診断士の視点で 「クモノスコーポレーションがさらに伸びるための打ち手」を、 できるだけ具体的に整理していきます。
1.案件依存からの脱却:3D×サブスク型モニタリングサービス
現在のビジネスは「測って納品して終わり」というスポット収益が中心です。 ここに“定期モニタリング”の概念を組み込むことで、 ストック収益(毎月継続して入る収入)に変換できます。
例えば、こんなサービスパッケージが考えられます。
- 河川・ダム・護岸の年次3D計測+変状レポート
- 道路・橋梁の沈下・亀裂モニタリングサービス
- 造成地や斜面の「地盤変位の見える化」サービス
- 観光地・歴史的建造物の経年変化モニタリング
自治体にとっては、 「災害対策予算」「維持管理予算」の枠で導入しやすいテーマです。
クモノス側は、 “毎年・毎期、必ず発生するモニタリング売上”を作ることができます。
ポイントは、
- 「単発測量」ではなく「〇年契約の定期計測プラン」にする
- 3Dデータ+レポート(リスク評価・提言)までセットで売る
- 「防災・減災・インフラ長寿命化」というキーワードで提案する
これにより、 社内リソース計画も立てやすくなり、採用・育成への投資もしやすくなります。
2.3Dデータを「設計で使える形」にして納品する(BIM/CIM連携)
ゼネコンから見ると、 “点群データそのもの”は「宝の山」ですが、 そのままでは使いにくいのも事実です。
そこで、クモノスがやるべきは 「測量会社」から「3Dデータ変換ソリューション企業」への進化です。
- 点群データ → BIM/CIM対応3Dモデルへの変換
- 点群データ → 2D図面(平面図・断面図)の作図代行
- 工事前後の差分を自動で可視化するレポート作成
- 「3D測量+BIM/CIM納品パック」としてメニュー化
これにより、 「測量費」ではなく「設計・施工効率化のための投資」として より高単価で受注しやすくなります。
また、将来的には
- BIM/CIM変換ノウハウを「テンプレート化」して教育コンテンツにする
- 特定ソフトベンダーと組んで「共同ソリューション」として展開する
といった“横展開”も狙えます。
3.「3Dスキャナーアカデミー」で人材不足をビジネスチャンスに変える
建設・測量の現場では、 3Dスキャナーを「持っている企業」は増えていますが、 「使いこなせる人材」は圧倒的に不足しています。
そこにクモノスが“教育事業”として入り込む余地があります。
- 3Dスキャナーの基本操作講座(1〜2日コース)
- 現場での測定ノウハウ講座(測り方・やってはいけない例)
- 点群処理・データクリーニングの実務講座
- BIM/CIM連携のための実践講座
対象は、
- ゼネコン・サブコンの若手技術者
- 設計事務所
- 自治体職員
- 3Dに興味のある学生(インターン)
これにより、
- 教育ビジネスとしての収益源を1本増やせる
- 「クモノスで学んだ人」が社外に増え、クモノスのファン&窓口になる
- 将来の採用候補(学生・若手技術者)との接点も作れる
という、営業・採用・ブランディングが一体になった仕組みが作れます。
4.空き家・観光・防災…3Dデータの“用途”をもっと広げる
3Dデータは「工事・インフラ」だけが用途ではありません。 診断士としては、次のような広がりも十分に現実的と見ています。
4-1.空き家問題 × 3D
- 自治体と連携し、空き家の3Dデータ化+劣化状況の見える化
- 売却・利活用したいオーナー向けに「3D内覧データ」を作成
- 不動産会社・リフォーム会社向けに3Dデータを2次元図面にして販売
「空き家の場所・状態がわからない」という自治体の悩みを クモノスの3D技術で見える化するイメージです。
4-2.観光・文化財分野
- 歴史的建造物・寺社仏閣・街並みを3Dアーカイブ
- 旅行会社と組み、「事前VRツアー」や「思い出の3Dデータ」を提供
- 学校教材向けに、3Dデータを2D教材として販売
ここでは、 必ずしも「3Dで見せること」だけが正解ではありません。 むしろ2Dのイラスト・図解に加工して販売する方が使いやすいケースも多く、 「3D→2D変換ビジネス」の可能性が見えます。
4-3.防災・減災・保険業界との連携
- 被災リスクの高いエリアの事前3D計測
- 災害発生前後の比較データを保険会社と共有
- 保険・補償の査定をスムーズにするためのデータ提供
これにより、 「災害発生時の頼れるデータプラットフォーム」としてのポジションも狙えます。
5.自社プロダクト・ライセンス・海外展開の可能性
クモノスの技術を「サービス」だけでなく「プロダクト化」する選択肢もあります。
- 3Dスキャンデータを簡易に閲覧できるビューアソフト
- BIM/CIM用の変換テンプレート(プラグイン)
- 特定業界向けの3Dテンプレパッケージ(道路・河川・橋梁など)
これらは、ライセンスモデルやサブスクでの提供も可能です。
「3D測量をやりたい海外測量会社」に対して、 ソフト+ノウハウをまとめてライセンス提供するイメージです。
また、将来的なチャレンジとして、
- 個人向け・小規模事業者向けに、簡易3Dカメラ+クラウドサービス
- リフォーム会社やデザイナー向けに特化した小型3D測量ソリューション
といった「スモールスタートの新規事業」も考えられます。 いきなりマス市場を狙うのではなく、 ニッチ領域(デザイナー・リフォーム会社など)に的を絞ってテストするのが現実的です。
6.組織・マネジメント:1on1とエンゲージメントで“第二の幹部流出”を防ぐ
クモノスは、過去に「幹部14名の離脱」という大きな痛みを経験しています。 今後、事業を広げていくうえで、 「人が辞めない・力を発揮できる組織づくり」は避けて通れません。
- 定期的な1on1ミーティングで、メンバーの不安・不満を早期検知
- 3D事業のビジョンや方向性を、社内に丁寧に共有する
- プロジェクトベースで若手を巻き込み、「自分ごと化」してもらう
- 成功事例を社内SNSや勉強会で共有し、ノウハウを“会社の財産”にする
技術・顧客・実績はすでに揃っています。 次のステージで問われるのは「人と仕組み」です。
おわりに:3D測量は“未来を記録する仕事”
クモノスコーポレーションの仕事は、 単に「空間を測る」だけではありません。
災害前の街並み、文化財の姿、インフラの状態──。
3Dデータは、未来の社会にとって貴重な“記憶”であり“判断材料”になります。
だからこそ、クモノスには 案件依存の測量会社から、 社会インフラとまちづくりを支えるデータプラットフォーム企業へと ぜひ進化していってほしいと思います。
そのための一歩は、 「3Dで測る」だけでなく、 どう活かすか・どう稼ぐか・どう残すかまでを設計すること。
クモノスコーポレーションの次の一手が、とても楽しみです。


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